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千里眼203

时间: 2020-05-28    进入日语论坛
核心提示:教育の行方 午前零時をまわった。美由紀はコートを着て、待機所の外でクルマが近づいてくるのを待っていた。そのミニバンは、美
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教育の行方

 午前零時をまわった。
美由紀はコートを着て、待機所の外でクルマが近づいてくるのを待っていた。
そのミニバンは、美由紀の前で停まった。
運転席から降り立ったのは、三十代後半ぐらいの小太りの男だった。髪は七三分けで、口のまわりにひげをはやしている。不精ものにも見えるが、どこか上品な印象もある。
「こんばんは、舎利弗先生」と美由紀は声をかけた。
臨床心理士の舎利弗浩輔は寒さに身をちぢこませながら、いつものようにおどおどとした態度で辺りを見まわした。「専務理事に電話したけど、人手が足りないからおまえが行けって言われて……。とりあえず飛んできたよ。だいじょうぶかい? このところ大事件となると、必ずきみが関わってるね」
「もともと警察に依頼されたことだったんだけどね……。爆発に間に合わなかった。残念だけど……」
「きみのせいじゃないよ。怪我はない? 名古屋駅周辺もたいへんなことになってたみたいだけど」
「そうね。わたしって迷惑かけてばかり……」
「けど、犯人は捕まえたんだろ? それならよかったじゃないか。太閣通口のほうには被害はなかった?」
「テルミナ地下街とは逆側だから……。先生、名古屋にも行くの? 太閣通口に行きつけの店でも?」
「ま、まあね。アニメイトっていう店に涼宮ハルヒの限定もののフィギュアが……。まあいいや」
ふうん。美由紀は気のない返事をした。あいかわらず舎利弗の趣味は、自分とは接点がないようだった。
そのとき、赤いパトランプを光らせた警察車両が滑りこんできた。
私服警官らによって連れだされたのは、五十嵐哲治だった。手錠をはめられている。腰縄もつけられていた。
「ちょっと待ってて」美由紀は舎利弗にそう告げると、五十嵐のほうに駆けていった。
昼間見たときより、ずっと老けこんでみえる。地面に視線を落とすさまは、意気消沈した老人そのものだった。
その顔がこちらに向けられた。
だが、五十嵐は表情を変えなかった。ぼんやりとした顔でつぶやいただけだった。「ああ。きみか」
ひとりの中年の刑事が美由紀に歩み寄ってきた。「岐阜県警の中志津《なかしづ》警部補です。失礼ですが、どちらさまで?」
「岬美由紀です。臨床心理士の……」
「ああ、あなたが……。そのう、この男の逮捕に協力してくださったそうで、感謝申しあげます」
甚大な被害を及ぼした愛知県警の所轄区域とは違うからか、岐阜県警の警部補の態度はわりと温和なものだった。
美由紀はきいた。「どうして五十嵐さんをここへ……?」
「むろん、説得させるためですよ。息子さんらをね」中志津はいった。「それに、全校生徒を異常行為に走らせた張本人でもあります。保護者らに対する説明責任もあるでしょうしね」
それでは非難を一身に浴びることになってしまうだろう。美由紀は困惑を覚えながら、中志津にたずねた。「弁護士は?」
五十嵐哲治が口をきいた。「断ったんだよ。私みずからね。弁護など必要ない」
中志津は苛立《いらだ》ったようすで、五十嵐の背を押した。「じゃあ、さっさと始めよう。その小屋で保護者への説明会がおこなわれている。入るんだ。あ、岬先生も一緒にどうぞ」
美由紀は舎利弗を振りかえって手招きした。こんな状況だ、意見を述べられる専門家はひとりでも多いほうがいい。
中志津と五十嵐が戸口をくぐり、美由紀はそのあとにつづいた。
いきなり男性の怒声が耳に飛びこんできた。「どうして警察は踏みこんでくれないんだ!」
同調する保護者たちの声が沸き起こる。
演壇に立った私服警官が事情説明に追われている。保護者たちはパイプ椅子におさまり、血相を変えながら口々に申し立てをしていた。
「そのう」私服警官がおずおずといった。「突入の結果、生徒がひとりでも命を落とす結果になることは避けねばなりません。現在、岐阜県警と本庁とで綿密な協力体制をとり、慎重な協議を……」
いっせいにブーイングの声があがった。
「なにが協議だ!」男性が憤りをあらわにした。「うちの娘はまだ一年、十六歳だぞ! 教師のいない校舎にひと晩たりとも寝泊まりさせられるものか! 男女生徒を一緒くたにしておいたら、なにが起きるかわからん。警察はどう責任をとってくれるというんだ!」
ほかの男性も立ちあがった。「だいたい、その行政庁だかなんだか、元生徒会の役員の親たちはどうして姿を見せない。菊池君の親はどこにいるんだね。殺されたかもしれない北原沙織さんのご両親は?」
「その件ですが……」私服警官は手もとの紙片に目を落とした。「生徒会役員の両親らには、身の安全を保つためにも自宅待機し、いっさいの取材に応じないよう勧告してあります。菊池君のご両親も同様です。さらに、北原沙織さんの母親はショックで寝こんでいるようで、連絡がつかない状態にあります」
またしても不満の声がひろがる。
部屋の隅で固まって座っている教師らのなかから、初老の男が立ちあがった。
それが教頭の滝田軍造という人物であることを、美由紀はニュースを通じて知っていた。
滝田はいった。「みなさま、心よりご同情申しあげます。しかしここは冷静になって、保護者、教師、警察関係者、それから、そのう、スクールカウンセラーの臨床心理士と、全員が一丸となって協力しあい、解決策をみいださねば……」
教頭の演説も保護者らの神経を逆撫《さかな》でしたようだった。
ひとりの女性が怒鳴った。「先生方がしっかりしてないから、こんなことになるのよ!」
そうだ、まったくだ。同意をしめす声が飛び交うなかで、教頭はしきりにハンカチで額の汗をぬぐっていた。
「しかし」と滝田教頭はいった。「われわれとしては適正な指導をおこなってきたはずですし、生徒たちに今回のようなことの前兆などみられませんでした。なんの問題も起きてませんでしたし……」
ふいにひとりの男性の声が響きわたった。「はん!」
全員が口をつぐみ、その男性を見つめた。
人々の目を釘《くぎ》付けにしたのは、五十嵐哲治だった。
「なんの問題もない? ふん」五十嵐は鼻で笑った。「茶番とはこのことだ」
中志津警部補があわてたようすで制止にかかる。「おい、五十嵐……」
滝田が不快感をあらわにした。「失礼ですが、どちらさまでしょうか」
五十嵐は物怖《ものお》じしたようすもなくいった。「三Dの五十嵐聡という生徒の父、哲治だよ。うちの子は一年のとき、いじめにあった。蛍野《けいの》とか蒸原《むしはら》っていう傍若無人な生徒にね。ここにも親がいると思うが」
該当者なのか、男が立ちあがっていった。「言いがかりはよしてくれ。なにか証拠でもあるのか」
「証拠だって! 息子の背中にいまも残るやけどの跡がなによりの証拠だ。私は息子にうまく立ちまわるように言ってきかせ、いじめっ子どもの求めるものはなんでも差しだして、ご機嫌をとれと教えてやった。息子はテスト期間中、解答を紙片に書いていじめっ子どもにまわした。連中はその貢ぎ物を気にいって、以来息子に手をださなくなった」
「なんて親だ」
「口の利き方に気をつけろ。あんたの子供に対する教育が間違っているのがそもそも問題なんだぞ。とにかく、この学校は腐りきってる。いまだに世界史を履修してないじゃないか!」
喧騒《けんそう》はすさまじいものになった。保護者のほぼ全員が立ちあがり、なんらかの言葉を発していた。
女性の声が甲高く響く。「やっぱりそうだったの? うちの子に聞いたら、先生が心配ないって言ってたって……」
学校長の弘前があわてたように釈明に入った。「そんなことをいう教師は、うちにはいません。世界史の履修不足は、そのう、全国的な問題で……」
「それは去年のことだろう!」とひとりの男が叫んだ。「あれだけ履修不足が騒がれていたのに、まだ是正していないとはどういうことだ。発覚するまで隠蔽《いんぺい》しつづければそれでよしとでも考えていたのか」
滝田教頭が弁護する。「あのですね、うちは田舎の工業高校で、問題を解決するにも、すぐというわけには……。この件は、保護者のかたもご存じだったはずですし、いまさら私どもにのみ責任を押しつけられても……」
「なにが責任だ! とにかく、いい加減なことを口にした教師をここに連れてこい。綾葺涼子先生はなぜここにいない? どこにいる!?」
「綾葺先生は、体調を崩されまして、病院に運ばれまして……」
抗議の声がひときわ大きくなる。まるで騒音だった。
保護者のなかで男性がいった。「だいたい、校長から教師まで全員が外に閉めだされるなんて、こんな情けない話があるか。生徒たちがそのときどんな状態にあったか、把握している教職員はいないのか」
五十嵐が声高にいった。「体育館に集まってたんだよ。私が画策した。生徒たちに集会があると思わせるために、事前にプリントを配布しておいたんだ」
衝撃を受けたようすの保護者たちが、いっせいに動揺をしめした。
「なんだってんだ!?」男性がわめき散らした。「いったいおまえはなにをやらかしたんだ。うちの子はどうなった?」
「あなたたちは」五十嵐は演説のように声を張りあげた。「いじめをなくそうと本気で考えたことがない。人間のあらゆる問題は科学で解決すべきだ。いじめなどという、野蛮で、非常識な行為に及ぶ生徒は、まぎれもなく脳に異常部位を抱えている」
「うちの子が異常だっていうのか!?」
「自分の子がいじめっ子だと認めているようなものだぞ。いいか、いじめなんてものは、弱者相手に強者の力を見せつけようとする、低能な動物の習性みたいなもんだ。なぜそんなことが起きる? 前頭葉の働きが鈍っているからだ。人間の脳には百四十億の細胞があるが、実際に使われているのは十五億ていど、そしてそれらも毎日減少していく。私はその進行の度合いには遺伝的特性はさほどないと考えているが、どうやらそうばかりでもないようだ。愚かな子供にはやはり愚かな親がついているのだからな」
保護者たちは顔を真っ赤にして怒鳴り散らし、五十嵐のほうに詰め寄ってきた。
中志津が五十嵐を戸口の外に引っ張っていった。部下に声をかけているのが聞こえる。「いったんパトカーに乗せろ、すぐにだ」
つかみ合い寸前の混乱から外れて、美由紀は困惑とともにたたずんだ。舎利弗と目を合わせる。舎利弗も戸惑いのいろを浮かべていた。
解決にはほど遠いわね。美由紀はそうひとりごちた。
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