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千里眼221

时间: 2020-05-28    进入日语论坛
核心提示:ベルヌーイの法則�待機所�で中志津警部補が読みあげる監視班からの報告を、舎利弗は聞き流していた。ほかの保護者らや教職員ら
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ベルヌーイの法則

�待機所�で中志津警部補が読みあげる監視班からの報告を、舎利弗は聞き流していた。
ほかの保護者らや教職員らは真剣な顔でうなずきながら耳を傾けているが、舎利弗にとっては重要なのはほんの一部だけだった。
美由紀の安全が保たれているかどうか。
その不安は、報告の最初のほうで払拭《ふつしよく》された。岬先生はいたって元気であられるようすで、校内を男子生徒らと巡回し、親睦《しんぼく》を深めているようすで……。
保護者の男性がさっそく不満をぶちまけた。「千里眼の岬先生が校内に入ったから、なにか変化があるかと期待したのに、なにも起きないじゃないか」
「まったくだ」と教師の木林もふくれっ面をした。「生徒たちを説き伏せてくれるかと思いきや、同調して友達面を振りまいている。これでは逆効果だ」
舎利弗は苦い気分でいった。「友達面をしているわけではありません。そのう、対話のために、まず信頼と友好の関係を築こうとしているのです」
教頭の滝田もやはり不服のようだった。「いいですか、舎利弗先生。生徒らと友達っぽく接する教師の受け持つクラスほど、いじめなどの問題が多発するという調査結果もあります。毅然《きぜん》とした態度をとるべきところはとらないと、生徒らになめられるということに……」
そのとき、五十嵐哲治が手錠をした両腕を振りあげ、伸びをした。
「いいじゃないか」と五十嵐はいった。「べつになめられても。生徒がそれだけ利口だってことだろ」
しらけた空気が辺りに漂う。
五十嵐哲治の横槍《よこやり》はいまに始まったことではない。天邪鬼《あまのじやく》な彼は、議論が起きはじめると決まって生徒の肩を持つ発言をする。
木林がいっそうむくれていった。「あなたは黙っててください、五十嵐さん」
「いいや。黙らんね。なあ皆さん、こうは思わんかね。子供たちは早くも私たちの手を離れ、自分たちの理想郷を築き、そのなかで成長しつつあると」
「馬鹿馬鹿しい。理想郷だなんて……。バットを持った連中が徘徊《はいかい》し、誰もが恐怖に震えながら眠る。どこが理想なんですか」
「まあ聞きなさい。いじめは社会問題だ。自殺者がでるくらいだから、見逃すことはできんだろう。ただし、いじめというものは私らの世代にもあった。いまほど陰湿じゃなかったが、それは上級生の下級生に対する�しごき�というものが公明正大におこなわれていたからだ。表面上、それが許されなくなって、いじめは地下に潜った。より陰湿になったわけだ」
保護者のひとりの女性が顔をしかめた。「そんなことはわかってます。だからいじめを追放しようと、PTAは最大限に努力を……」
「追放? 努力? はん! こう考えたらどうだ。いじめは犯罪だ。直接危害を加えるのは傷害罪。ひどい場合は傷害致死罪。いじめられっ子に服を脱ぐことを強制したり、さらし者にするのは強要罪。ゴミ人間とかバイキンマンとか罵《ののし》るのは侮辱罪。貧乏人とか泥棒呼ばわりするのは名誉|毀損《きそん》罪。暴行罪は最高で懲役二年、名誉毀損罪は三年、傷害罪は十五年、傷害致死罪にいたっては二十年だ。懲役二十年。わかるかな?」
いまやいじめっ子の親として認知されつつある岸辺が、憤ったようすでいった。「五十嵐さんは少年法をご存じないようだ」
「おや。そうかね? 未成年だから重大犯罪以外は適用をまぬがれるってか。思うんだが、それなら親が代わりに刑を食らいこむってのはどうかね。息子さんはまだ二日ほどビニールハウスで働いただけだろ? 父親のあんたが豚箱でくさい飯を食うか、タコ部屋で二十年働くってのはどうだい?」
岸辺の顔はみるみるうちに真っ赤になった。すさまじい怒号を張りあげたが、音量が大きすぎてよく聞き取れない。
たちまちほかの親も参戦し、教職員も割って入って、収拾のつかない騒ぎになった。
舎利弗はうんざりして顔をそむけた。初めのころは仲裁に入ったが、いまでは無駄だとわかっている。せいぜい保護者としての責任を棚にあげて、いがみ合っていればいい。
ところが、憤懣《ふんまん》やるかたないようすの保護者のひとりが、ふいに矛先を舎利弗に向けてきた。「臨床心理士の舎利弗先生は、いったいどっちの味方なんですか。あなたの部下の岬先生は生徒に媚《こ》びてばかりなんですよ」
「部下ってわけじゃないですけど……」
「責任逃れですか。同じ職場で働いておられるのに、無責任じゃないですか」
やれやれだ。こんな親のもとで育ったのでは、籠城《ろうじよう》ぐらいしたくなるのもわからないではない。
「よろしいですか」舎利弗は周囲を見渡した。人前で喋《しやべ》るのは苦手だが、仕方がない。「そのう……。生徒たちが自主性を持って改革をおこなっているのはあきらかです。乱暴なところも目につきますが、それは改革に犠牲が必要だと彼らが考えているからでしょう。カゴのなかにリンゴが満杯になっているとします。それ以上新しく追加することはできない。それなら、いちどカゴをぶちまけて中身を捨て去らないといけない。すべてを捨てる覚悟がないと改革はおこなえないということです。生徒たちはそうせざるをえないところまで来てたんです」
予想されたことではあるが、保護者も教員もいっせいに反対の声をあげた。
甲高い声で木林教諭が怒鳴った。「それは生徒たちが自分の意志で行動している場合だ。生徒たちは心神喪失状態の公算が大きいんですぞ」
「だから、それは……」
言いかけて、舎利弗は口をつぐんだ。
若い私服警官がノートパソコンを携えて、室内に入ってきたからだった。
「中志津警部補」警官はパソコンを差しだしながらいった。「これを見てください。氏神高校国の公式サイトに、ついさきほどアップデートされたものです」
受けとった中志津は眉間《みけん》に皺《しわ》を寄せて画面を見つめた。「なんだ……? 『氏神高校国から日本国へ。パチンコなる事実上|賭博《とばく》遊戯が一般消費者にとって無意味であることの証明』だと?」
「そうです」と警官はうなずいた。「パチンコの当たり確率を数学的に詳細に分析し、いかに儲《もう》からないものであるかを具体的に数値化したものです」
保護者たちがざわめいた。
ふん、と滝田教頭が鼻を鳴らした。「そんなもの、珍しくもない。ギャンブルが儲からないようにできているなんてことは、大人なら百も承知だ」
警官はおずおずといった。「それが……そうでもないんです。マスコミもパチンコについて扱うときは慎重です。収益を妨げないよう、その表現には最大限に気を遣う。客離れが起きたのでは税収がダウンするからです。しかし、このサイトの掲載論文ではストレートに、しかも非の打ちどころのない検証がおこなわれています。パチンコ玉が一球四円から五円、一時間に発射される玉は平均五千二百十七発、大当たりでの換金額平均は六千六百七十八円。大当たりのでる割合は、平均三千四百五十六発に一回。その一方で収支がプラマイゼロになるためには一時間に三回以上の大当たりが必要です。ここに、統計数学ポアゾン分布を使った計算結果が載っています。一時間のパチンコで勝って帰れる確率、五・八パーセント。二時間は三・一パーセント。パチンコ客の平均遊戯時間は一回につき三時間から四時間、週二回なので、それを一か月間にわたり算出すると……〇・〇三パーセント以下。ようするにパチンコで儲かる可能性はゼロと、はっきり証明し公言しているんです」
五十嵐哲治の笑い声が響き渡った。「うちの息子だ。聡だよ。ヤコーブ・ベルヌーイの極限定理、大数の法則ってやつだ。私が聡に教えてやった。勝率をPとし、パチンコを可能な限り多くの回数試せば、実際の勝率はPに近づく。その研究結果は確率論の応用というわけだ」
保護者の男性のひとりが声を荒げた。「あんたは子供にろくなことを教えなかったんだな」
「いいや。きわめて意義のある教育だった。怒ってるあなたたちはパチンコが趣味かね? 子供のころ数学の成績はよくなかったんだろ? 息子の論文を読んで心を入れ替えるといい」
激しい怒声と罵声《ばせい》が五十嵐哲治に浴びせかけられる。五十嵐のほうは高らかに笑うばかりだった。
舎利弗は嫌気がさして黙りこみ、罵りあいの中心から遠ざかった。
事態はくるべきところまできた、と舎利弗は思った。とうとう日本の社会というシステムへの直接的批判が始まった。国が聞く耳を持ってくれるかどうか。生徒たちの築きあげた国の存亡は、その一点にかかっている。
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