返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

千里眼222

时间: 2020-05-28    进入日语论坛
核心提示:青天の霹靂《へきれき》 須田佳久総務大臣は、国会議事堂の長い廊下に歩を進めていた。矢部信三総理大臣の背がみえた。官房長官
(单词翻译:双击或拖选)
青天の霹靂《へきれき》

 須田佳久総務大臣は、国会議事堂の長い廊下に歩を進めていた。
矢部信三総理大臣の背がみえた。官房長官らを従えて、これから閣僚会議に向かうところだ。
「総理」須田は歩を早めた。「総理。お待ちください」
呼びかけられた矢部は足をとめたが、振りかえったその顔には苛立《いらだ》ちが表れていた。「なにかね。いまは忙しい。意見があるなら会議で発言したまえ」
「その会議の前に、どうしても伺いたいことがあるんです。警察庁長官に、氏神高校への強行突入の準備を整えさせているとか……」
「ああ。それがなにか?」
「なにかと言われましても……。総理。高校生らを危険に晒《さら》すわけには……」
「もうそんなことは言っていられない。きみはニュースを観ないのか」
「いえ。……例のパチンコの件ですか」
「そうだ。氏神高校国のサイトに掲載されたパチンコ業界に関する数学的分析が大反響を呼んでる。マスコミ各社がこれに追随して各媒体で特集を組む動きもみせてる。事実、パチンコ店の売り上げが激減したこともあきらかになった」
「それはメーカー側にとって、一時的な風評被害ていどでしょう。政府が守ってやらねばならないほどのことでは……」
「パチンコ業界は三十兆円産業といわれるが、実際には店舗に入る収益はさほどでもなく、政府の貴重な財源として生かされている。そのパチンコ業界の受けた打撃は、政府予算案の見直しに直結せざるをえない」
「パチンコはギャンブルではなかったのでは?」
「そんなものは建前にすぎん。パチンコ機器メーカーや店舗は、かつての射倖心《しやこうしん》を煽《あお》るようなギャンブル性の高さは昨今では鳴りを潜めていると主張しているし、液晶画面に展開する版権物のキャラクターの映像や展開の面白さで客を集めていると強調してるが、それは事実と食い違っている。人々がパチンコに惹《ひ》きつけられるのはやはり、そのギャンブル性あってのことだ」
「たとえそうだとしても、パチンコはそもそも戦後復興のために黙認されてきた賭博のグレーゾーンに属するものでしょう。見直しを迫られる時期がきたのでは? 早急に別の財源を考えるべきでは……」
「悠長なことを。いいか、氏神高校はいまや平和や平等を乱す存在となりつつある。即刻、排除せねばならん」
踵《きびす》をかえし、立ち去る矢部総理の背を、須田はその場で見送った。
即刻排除。
だが、正しいのは生徒たちだ。十代の子供たちが、社会の大いなる矛盾に疑問を突きつけている。われわれは、真摯《しんし》に耳を傾けるべきではないか。
それに、氏神高校は本当に平和や平等を乱しているのだろうか。
平和、平等。われわれの社会に、そんなものはあるのだろうか。たしかにかつては存在していた。だが、いまはどうなのだろう。
それらが存在するのは、むしろ氏神高校国のなかではないのか。
 岐阜市のはずれにあるウィークリーマンションに泊まり、朝は雑務を済ませて、昼ごろ氏神高校前の�待機所�にクルマで立ち寄る。
それが舎利弗浩輔の、このところの日課だった。
あいかわらず膠着《こうちやく》状態はつづいているらしい。校庭と外を隔てる塀の周辺に変化はない。テレビ局の中継車に新聞社のワゴン、警察車両の数々。寒空の下、車外に出ている人間も少ない。すっかりお馴染《なじ》みになった光景がきょうもまた広がっている。
ところが、待機所に近づいてみると、そこにはささやかな異変があった。
いつも室内に籠《こ》もっているはずの保護者や教職員らが、外にでている。そして、壁に貼りだされた大きな紙を、そろって食い入るように見つめている。
舎利弗は近づいていってたずねた。「どうかしたんですか」
「あ、舎利弗先生」顔見知りの保護者がいった。「たいへんなことが起きたんですよ。こないだの習研ゼミ模擬試験の結果がでたんです」
「……それがなにか?」
「見てくださいよ、この世界史Bの欄。学校別の順位です」
細かな字でびっしりと全国の高校の名が縦に並んでいる。
そのいちばん上に記載された学校名を見たとき、舎利弗は思わず息を呑《の》んだ。
「岐阜県立氏神工業高校……」舎利弗はつぶやいた。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

[查看全部]  相关评论