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千里眼223

时间: 2020-05-28    进入日语论坛
核心提示:勝利宣言 菊池は校舎一階の放送室で、校内放送のマイクのスイッチをいれた。記念すべき日ではあるが、それほどの気負いはなかっ
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勝利宣言

 菊池は校舎一階の放送室で、校内放送のマイクのスイッチをいれた。
記念すべき日ではあるが、それほどの気負いはなかった。むしろこれぐらいの結果、わが国の国民が果たしえないでどうする。
そう強がってはみたものの、やはり喜びはこみあげてくる。
室内にいる幡野雪絵と、北原沙織の目が気になる。国家元首たるもの、側近の前ではいかなるときにも冷静沈着でなければならない。
と、雪絵が穏やかにいった。「そんなに硬くならないで」
沙織も笑みを浮かべた。
面食らって菊池は口ごもった。「わ、わかってるさ。……チャイムを頼む」
雪絵がスイッチをいれると、校内放送を告げる鐘の音が短く鳴った。
「菊池より、全国民へ」菊池はマイクに告げた。「静粛に。作業中の者も手を休め、聴くように」
校内のざわめきがおさまり、静寂に包まれたのが壁ごしにわかる。
咳《せき》ばらいをして菊池はいった。「たったいま、習研ゼミ模擬試験の結果がファックスで送られてきた。三年生全員に関わる問題だが、下級生もぜひこの事実を知ってほしい。未履修だった世界史という教科、あえてわれわれは地理歴史に世界史Bを選択して臨んだ。そしてその結果は……学校別の生徒平均点順位で、堂々の一位だ」
一瞬は、沈黙だけが辺りを包んでいた。
しかし次の瞬間、校舎を揺るがす嵐のような轟音《ごうおん》が放送室の壁を揺さぶった。
それが全校生徒の歓声であると気づくまでに、数秒を要した。
沙織が廊下側の扉を開ける。
廊下から歓喜の声がそのまま流れこんできた。生徒たちは放送室の戸口に押し寄せてきて、満面の笑顔とともに沸いた。
男女の分け隔てなく、学年の違いもなく、誰もが喜びに満ち溢《あふ》れている。
「総合でも十七位だ!」菊池は声を張った。「諸君の努力に感謝する。わが国は日本国のあらゆる高校を追い抜いたのだ!」
生徒たちの興奮は絶頂に達し、ほとんど狂乱の域に達しようとしていた。
抱きあい、拍手し、小躍りして喜びを表す生徒らの姿がある。
雪絵が涙を指先でそっと拭《ぬぐ》っていた。沙織も、瞳《ひとみ》を潤ませていた。
きょうという日は永遠に記憶される。菊池は思った。この架空の国の歴史書ではない。日本史に永遠に刻みこまれる記念すべき日だ。
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