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千里眼227

时间: 2020-05-28    进入日语论坛
核心提示:脱出 菊池らが行政庁第三司令本部と呼ぶ大教室で、岬美由紀は爆弾の残骸《ざんがい》を机の上に置き、ひとしきりの説明を終えた
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脱出

 菊池らが行政庁第三司令本部と呼ぶ大教室で、岬美由紀は爆弾の残骸《ざんがい》を机の上に置き、ひとしきりの説明を終えた。
周りを囲む菊池、五十嵐、石森、長島のほか、雪絵や沙織もしばらくのあいだ深刻そうな顔のまま、黙りこくっていた。
やがて、静寂を破って雪絵がいった。「それが事実だとすると、わたしたちのやってきたことは……」
「いや」菊池がつぶやいた。「ある意味で、われわれの正しさが証明されたようなものだ。われわれが孤立し団結の道を選ばざるをえなかったのも、その状況ゆえのことだ」
「だけどさ」長島が声高にいう。「氏神高校国は、俺たち自身の将来を守るために建国したんだろ? これじゃ将来がどうとか、言ってられないじゃんか」
沙織は深刻そうにささやいた。「そうね。五十嵐君のお父さんの意図が、どこにあったのかはさだかじゃないけど……」
五十嵐聡は、呆然《ぼうぜん》とした面持ちで、ぶらりとその場を離れていった。部屋の隅の椅子に腰を下ろし、ひとり壁を見つめる。
「親父が……」五十嵐は小声でぼそぼそと告げた。「あの親父が……。そんなわけないよ。あんなに僕を憎んでたのに……」
石森が五十嵐にいった。「事実は事実だろ。受けいれざるをえないじゃないか」
「おまえになにがわかるんだよ!」五十嵐は怒鳴った。「あいつは、お母さんも僕も捨てて、勝手気ままに生きてきた。それがいまさら、なんだよ。それに……やってることだってフェアとはいえない。こんなやり方なんて……」
ふたたび沈黙が降りてきた。
美由紀は静かに告げた。「たしかにそうね。五十嵐君のお父さんが画策していることは、世のためになることとはいえない……。よく考えてみて、五十嵐君。あなたはこの氏神高校国では成功者のひとりになってる。そればかりか、あのパチンコの分析やソフトの開発で日本全体にも聡明《そうめい》なところを見せつけた。いまという時間が、永続することを望む気持ちはないの?」
五十嵐はしばし無言のままうつむいていた。
やがて、その顔があがった。美由紀をまっすぐに見つめて、五十嵐はいった。「自立も、自由も、成功も……夢でしかなかった。現実じゃなかったんだ」
「そうじゃないわ。いまあなたを取り巻く状況は、幻想じゃないのよ」
「でも作られたものだ。そうだろ? あんな親父の作りだした世界なんて……。僕はまともな世界に生きるよ。人々にとっても、そのほうがいいはずだし」
「それでいいの? 後悔はない?」
「わからないよ、先のことは……。けど、それしかないだろ」
「……岬先生」菊池が真顔で告げてきた。「現状を打開するためには、五十嵐のお父さんの意図をたしかめないと」
「そうよね。でも、向こうに対しても、あなたたちがいま何を考え、何を求めているのかを伝えなきゃならない。五十嵐哲治さんとわたしたちのあいだには、大きな意識のずれがある。それを埋めていかないと……」
雪絵がうなずいた。「この問題を解決しないままで放置したら、日本という国は衰退してしまうでしょうね。わたしたちが五十嵐君のお父さんに会って、状況を伝えなきゃ」
「どうやって?」長島が顔をしかめた。「こっちは周りをぐるっと警察に囲まれてる身だぜ?」
「手はあるわ」沙織がいった。「今晩、食糧の搬入をしてくるトラックの荷台にまぎれて脱出すればいい。ドライバーの何人かとは、もう親しくなってるからね。お金で買収すれば、なんとかなるわ」
「だけど、五十嵐んとこの親父さんは留置所のなかだろ?」
「いえ」美由紀はいった。「彼は毎朝、この学校の近くに身柄を移される。狙いどころがあるとしたら、そこね……」
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