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千里眼228

时间: 2020-05-28    进入日语论坛
核心提示:友里《ゆうり》佐知子 翌朝、午前五時半。氏神高校から北東に十七キロ、工業地帯のなかを伸びる未舗装の一本道は、まさしく昭和
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友里《ゆうり》佐知子

 翌朝、午前五時半。
氏神高校から北東に十七キロ、工業地帯のなかを伸びる未舗装の一本道は、まさしく昭和四十三年十二月の府中三億円事件の発生現場に酷似していた。
地図で警察車両が通るルートを検証した結果、ここしかないと美由紀は確信を持った。
三億円事件の襲撃犯は、一部でずさんな犯行を指摘されているが、そうではない。たしかに、報道されたような事件の表層からは、緻密《ちみつ》な計画とは信じがたい。
だが、美由紀は知っていた。粗雑に見える段取りは、それ自体が計算されたものだったのだ。単独犯の安易な犯行だと警察が高をくくれば、追跡の手を緩めることができる。
ほかならぬ真犯人の日記に、そのことが記されていた。あの日記を読んだからこそ、わずかな準備でこの計画を実行に移すことができる。
「来たぜ」と長島がささやいた。
美由紀は長島、石森とともに、道端に生い茂る雑草のなかに身を潜めていた。背後は塀で、その向こうの工場はまだ作業時間を迎えていない。
ひとけのない朝の路上を、一台のパトカーがゆっくりと近づいてくる。速度を上げないのは、未舗装ゆえに砂埃《すなぼこり》が舞うからだろう。
「あわてないで」美由紀は長島に告げた。「もっと引きつけてから。クルマの後輪が見える状態で実行しないと、運転手に気づかれるわ」
「わかってるって。まかせときなよ」
クルマが前方に滑りこんできた。後部座席には、ふたりの私服警官に挟まれて座る五十嵐哲治の姿が見える。
「いまだ!」石森が鋭くいって、発煙筒に点火した。
長島も発炎筒に火をつけて投げた。発煙筒は、クルマの下部に転がった。
もうもうと立ちこめる煙。クルマが減速した。
美由紀はすかさず路上に飛びだしていった。運転席に駆け寄り、ウィンドウをノックする。
ウィンドウが下がると、美由紀は怒鳴った。「爆弾よ。脱出して。早く、急いで!」
運転していた警官がドアを開け放って、外に飛びだした。
後部座席のドアが開く。私服警官は大慌てで、手錠をかけられた五十嵐を引っ張りだそうとしている。
そこへ石森が駆け寄った。「ここはわれわれが」
石森は学生服を着ていたが、その胸元を開いて内側に折りこみ、スーツに見えるようにしてあった。ワイシャツにはハンカチで作ったネクタイをしている。ふけ顔の石森は、統治官補佐のなかでは最も若手刑事の印象に近いというのが、行政庁の統一した見解だった。
「すまん」といって、ふたりの私服警官は五十嵐哲治を石森に預け、クルマから遠ざかっていった。
爆弾処理班が来たと思ったのだろう。こうした場合、連行中の容疑者の身柄を確保する専任の警官もいる。石森はまんまとその立場だと思わせることができたらしい。
美由紀はすかさず運転席に乗りこんだ。
助手席に長島が乗りこむ。後部座席には、五十嵐哲治と石森が並んでおさまった。
さすがに、私服警官たちも昭和四十三年よりは進化しているらしい。すぐさま異常事態に気づいたようだった。私服警官は血相を変えて駆け戻ってきた。
「なにしてる!」警官がわめいた。「どこへ行く気だ、すぐに降りろ!」
むろん聞く耳など持たない。美由紀はアクセルを踏みこんでクルマを急発進させた。
ルームミラーのなかで、あたふたと追いかけてくる警官たちの姿が、しだいに小さくなっていく。
「やりい」と長島が声をあげた。「ざっとこんなもんだ」
美由紀は後部座席を振りかえった。「おはようございます、五十嵐先生。またお会いしましたね」
「おやおや……」五十嵐は面食らったようすでつぶやいた。「またきみか。三億円事件とはまた、古い手を使ったもんだ。ぎりぎりの賭《か》けだったな。勝算はなかったんだろ?」
「そうでもないわ」美由紀はあっさりといった。「真犯人直伝の勘どころが備わってたから」
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