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千里眼230

时间: 2020-05-28    进入日语论坛
核心提示:地獄絵図 小沢知世は、ほかの女子生徒たちとともに、三階の教室に避難していた。恐怖に身体が震える。みんなで身を寄せ合ってい
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地獄絵図

 小沢知世は、ほかの女子生徒たちとともに、三階の教室に避難していた。
恐怖に身体が震える。みんなで身を寄せ合っていても、その震えがとまらない。
なにかが裂けるような音がした。次いで、突きあげるような衝撃が襲った。ドンという音が腹に響く。
窓辺にいた女子生徒のひとりが、甲高い声をあげた。「たいへんよ!」
室内の全員が窓に走り寄る。知世もそうしていた。
眼下には信じられない光景がひろがっていた。
校門が破られている。スライド式の扉は手前に押し倒されていた。
踏みこんでくる黒々とした男たちの群れがある。ヘルメットと同色の制服、プロテクターを身につけていた。
機動隊だ。
すでに校門近くで警備にあたっていた生徒たちが、次々と倒され、棒でめったうちにされている。早くも機動隊の先頭は、校舎玄関に達しようとしていた。
スピーカーから警報が鳴り響いた。
「緊急事態!」塩津の声が聞こえてくる。「隣国の警官隊が突入を開始。国民は総力を挙げて防御せよ。急げ!」
つづいて、別の声が響きわたった。「緊急事態、繰り返す、緊急事態。警官隊突入のもよう。男子生徒は引きつづき一階玄関付近に集結して死守せよ。女子生徒および統治官、統治官補佐は二階以上の所定の緊急位置について指示を待て。以上」
放送が終わらないうちに、階下から校舎全体を揺るがすような轟音《ごうおん》が響いてきた。それから叫び声、わめき声。
暴動だ。いや、戦争だ。戦争が始まったんだ。そう実感した。
「怖いよ」見ず知らずの女子生徒が、知世に抱きついてきた。
「だ、だいじょうぶよ」知世は、自分の声が震えていることに気づいた。
恐怖を鎮めるために、その女子生徒を強く抱きしめる。
窓の外には、地獄絵図が広がっていた。男子生徒は機動隊になぎ倒され、血まみれになりながら校庭に横たわっている。素手同然の虚《むな》しい防御に対し、圧倒的な攻撃力を誇る機動隊との戦いの行方は、もはやあきらかだった。
ガラスが割られ、機動隊が校舎内に侵入した。女子生徒さえもがつかみだされ、地面に放りだされる。悲鳴、絶叫、怒号が渦巻く。
「聡……」知世はつぶやいた。
膝《ひざ》が震えている。立っているのもままならない。
心底|怯《おび》えていた。氏神高校国が始まったときと同じだ。また恐怖にすくむしかない自分がいる。しかも、今度は絶望的な運命を伴っている。
ずっと共に暮らしてきた仲間たちが、暴力で打ちのめされていく。耐え難い光景が眼下にひろがる。
もうどうにもならない……。
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