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イブのおくれ毛07

时间: 2020-06-09    进入日语论坛
核心提示:女のいいわけ秋深まって、お酒のおいしい時がまた、来た。私はお酒なンか、ちっとも飲みたくない。お酒を飲めば浮かれる。浮かれ
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女のいいわけ

秋深まって、お酒のおいしい時がまた、来た。
私はお酒なンか、ちっとも飲みたくない。お酒を飲めば浮かれる。浮かれると歌を唄う。はては疲れて、食卓のあと片づけもせず、洗い桶につっこみ、ねむくなって、寝床へもぐる。
私にはしなければならぬ仕事があるのだ。そういうときに、お酒を飲むとどうなるか。私は、ちっとも飲みたくない。あんなものを飲んで仕事を抛棄するのはナマケモノのすることだ。
しかし、一面考えると、酒には功徳がないでもない。
酒は血のめぐりをよくし、心気爽快にし、鬱を散じ、苦を払い、長命をもたらす。さらには人と人を和合させ、男女歓会のキッカケを促す。
ともかく、そんな具合で、私は飲む。気がすすまないが、心気爽快になってモリモリ仕事せんがために飲む。伊達や酔狂で飲むんじゃないのだ。
「いや、そいつはかなわんなあ」
とカモカのおっちゃんは大声をあげ、
「そこが女のきたないところ。なんでだまって飲まれへんねん。なんで血のめぐりをよくする、とか、苦を払う、とか理屈をつけんならんのですか」
「いけませんか?」
「当り前やがな。なんで酒飲むのに、理由がいるか、いうねん。——うまいから飲む。欲しいから飲む。これで何がわるい。これでよろしいのだ。苦を払うの、血のめぐりがどうの、とこじつけるのは、すべて女の卑怯なところ、女いうものは理屈つけて動く、それがいやらしい、いうねん」
おっちゃんにいわせれば、女はミカンを食べるときさえ、
「ビタミンを摂取して栄養のバランスをはかろう」
とつぶやきつつ、食べるのだそうだ。
あるいはまた、
「時勢におくれないために社会見学しよう」
とひとりごちて、テレビ局へ出かけ、朝のワイドショーでうしろの席へ坐るのだそうだ。
「なんで、いちいち、理由つけんならんか、と僕はいいたい。ミカン食いたい、テレビ局いうもんへいってみたい、それでよろしやないか。——それをいちいち、勿体ぶって理由をさがす。女の癖の好かんとこですな」
「おっちゃん、このごろ、男の更年期で文句が多うなったんとちがいますか?」
と私はいった。
「そう理由づけた方が、心がナットクして気らくになれるでしょう? われとわが身に、自己弁解していた方が、女は、気らくなんですよ、うるさいねえ」
「そうかなあ。僕はそういう癖は好かんですな。ミカン食いたいから食う。酒を飲みたいから飲む。すべて人間、つくろうたり、構えたりしてはいけまへん。よろしいか、夫婦いがみ合いしてる、しかし別れへん、というのが必ずおりますな。当人にいわせると、子供がおるからとか、何とかいう。それはこじつけで、本人は別れとうないから別れへん、それだけです」
「そうかなあ」
「そう思うてみると、人生、スパッと物ごとの核心が見えます。ごじゃごじゃした理屈つけると、ややこしゅうなる」
おっちゃんのいうのを聞いてると、ツイ捲きこまれて「そうか」とも思う。
それに、どんどん酒をつがれ、せっかくつがれたら、礼儀として飲まねばならぬ。よって酔う。するとますます、あたまはこんぐらがる。
「ソコソコ、酒をつがれて飲むのは、自分が飲みたいから飲むんですぞ。せっかくつがれたから礼儀として飲むというのは、ツケタシ、こじつけにすぎん。その理由づけ、いいわけ癖をなおさにゃいかん」
おっちゃんはさらに私の盃をみたし、
「要は、素直にせい、いうこっちゃ。たとえば夜、亭主から促されるとする、すると女房《よめはん》はどうするか」
「知りません。ウチはもう、退役《たいえき》しましたからねえ」
「一般論として、や」
「それは、まァ、差支えないかぎり、座敷へ請《しよう》じ入れるのではないでしょうか、妻の義務でございますからね」
「それそれ、それがいけまへん。何でそこで、義務をもち出す」
「しかし、古往今来、そういいならわされておりますので」
「何が義務や、あほらしい」
とおっちゃんは目をむき、
「義務で、あない派手な声が出せますか、妻のつとめ、いうだけで、あないにぎやかな立ち廻りがでけますか。どうも義務でやってるとは思えまへん」
「しかし、それは、やはり、その……」
「なんで自分もやりたいからヤル、といえぬ。心すすまぬけれども夫のためなら目をつぶって、といわんばっかりの恰好するのが、女のいやらしいとこです。おい、どや、と促されて、キャッ、待ってました、うれしい! という女房《よめはん》、見たことない」
「けど、それは……」
「いつもグズグズ、イヤイヤ、心ならずもという面倒臭そうな態度、そのくせ、こっちが白けはてるような熱の入れ方をするのはきまって女房《よめはん》の方ですな。——そうやっといて、亭主のためといいわけする。この女のいいわけ癖が、最も顕著に出るのは強姦のときです」
「強姦がどうしました?」
「おせいさんは前に、一対一の強姦はあり得ぬ、といいましたが、これがあり得るのや」
「ほんと? どうやって!?」
と私は思わず、はしたなく釣られる。
「それは、女のいいわけ癖のせいです。もしここで抵抗して殺されたらえらいこっちゃ、とか、男の力にはとてもかなわん、とか、おのが心にいいわけする。よって女は城をあけ渡して、一対一のソレが成立するわけ。いや、女いうもんは卑怯ですなあ」
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