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イブのおくれ毛28

时间: 2020-06-10    进入日语论坛
核心提示:ぶおとこ愛好女には「醜男《ぶおとこ》ごのみ」というのがあるが、男に「醜女《しこめ》ごのみ」というのはなさそうである。これ
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ぶおとこ愛好

女には「醜男《ぶおとこ》ごのみ」というのがあるが、男に「醜女《しこめ》ごのみ」というのはなさそうである。これはなぜだろうか。
男たちの話を横で、あるいは背後で仄聞《そくぶん》すると、もう、はじめからしまいまで女の話。それも誰それは美人か不美人かという、タッタ二つの貧しい規準しかなくて、しかも大学教授や作家といわれる男が、「あの子は美人だね」と裁定する女と、大工さんや散髪屋の兄ちゃん、ラーメン屋台の親爺から区役所の窓口係りたち庶民クラスが、「美人やナー」と感じ入る女と、全く一緒。要するに、見てくれの顔立ち、姿かたちがよけりゃいいというものだ。万人のみとめる美人というのが、あるのだ。
男の審美眼には染め|むら《ヽヽ》がなく、知性も学識も関係ないらしい。じつに単純で粗放なもので、一律である。たまには、一人一人、推輓《すいばん》する美人のタイプがちがっていてもよかりそうなものを、何だか、幼稚ですね。
「いや、それは、ですな。何べんいわすねん」
カモカのおっちゃんは声はげましていう。
「美人、いうのは、それは誰が見ても美人やから、美人なんであって、大学の先生も、ラーメン屋台氏も、かわりないのは当然です。しかし、美人や、というのと、抱きたい、いうのとは別ですぞ。美人やけど抱きとうない女というのはあり、それはいちいち口に出さんでも男は心の中で考えてます」
「しかし、ブスであると、それだけで基準からはずれてしまって、つまり、書類|銓衡《せんこう》の段階でふるいおとされるということがあるでしょ」
「そらまあ、美人の条件からは、ふるいおとされますが、しかし、ブスでも抱きたい女というのがあります。中にはおせいさんのように、ブスで抱きとうない女、という特殊な範例もありますが」
失礼な。しかし、醜女には性的魅力はないでしょう。
「それは、嫌悪をもよおすというようなブスでは、抱く気おこりまへんな。やっぱりブスはブスでも、一点、よく思える気に入った個所があるとか、共感できるとか、いうところがないと困ります」
ところが、女には、それがあるのよ。
私は、美男に関心のある方であるが(女ならみんなそうだろうが)、醜男にもそれを上廻って関心がある。これも一般の女たちが無意識に考えているはずである(むろん、美男でも醜男でもない、普通の男にも関心がある)。
並はずれて醜い男というのには、セックスアピールがあるものである。そこが、男の嗜好と、女の嗜好のちがう所だ。
女の友人と話していて、醜男愛好者は意外に多いことを知った。
一人は、容貌|魁偉《かいい》というヤツが好きなのだそう。昔の相撲とりの男女《みな》ノ川みたいなので、あれでかしこくやさしければ、いうことない、といっていた。
私は、じっくりした醜男が好きである。醜男というのは、ニヤニヤしてたり、卑しかったり、してはいけない。堂々としてマジメな醜男がよい。男はふしぎなもので、醜男ほど年とると、いい顔になり、哲人的風貌に風化する。そうして、女なんか高下駄の雪で、蹴飛ばしてもついて来よるという顔をしてほしいものだ。醜男は尊大傲岸にかまえてほしい。
ゆめ、醜男はキョロキョロ、見廻したりしてはいけない。女の夢がさめてしまう。
べつの友人は、なるったけ、いやらしく下卑た醜男がよいといった。この女は、醜男愛好会員の長老クラスである。
もちろん、そういう含蓄のある言葉を吐くのは、四十代のうばざくらだからである。
「下卑た、というのはどんなの?」
「金歯はめてステテコに毛糸腹巻してる農協の殿方とか、飯場の紳士とか、ね。ことにノートルダムのせむし男なんか、考えただけでゾーッとしちゃう」
「あれは半分オバケでしょ?」
「だからうれしくてゾクゾクするのよ。ねえ、どッかに、ムッシュ・ノートルダムはいませんかねえ」
この話を聞いたカモカのおっちゃんは痛しかゆしという顔である。応募はしたいものの、ノートルダムに張り合うほどの醜男とも我ながら思えぬらしい。
くやしまぎれに、
「ノートルダムのせむし男が好きとは、マゾとちゃいまッか?」
と、酒をすすりつついう。
「どうしてマゾですか」
「そやないか。こんないやらしい、おそろしい醜男に、自分はいまナニされてると考えてゾクゾクとうれしがってるなどというのは、りっぱなマゾであるです。そういえば醜男好きは、みなそうとちがうのかいなあ」
「それはちがいますよ」
と私はいった。
「醜男は、もっこりして、何か物悲しそうで、いつも腹立ててるような、女なんか洟《はな》もひっかけぬという恰好のところがいいんです。そんなのに反撥してひかれるところが、女にはあります」
「するとサドやなあ。いや、マゾの気《け》も混じってるように思われる。これは、両方混じって|サゾ《ヽヽ》かいなあ。|マド《ヽヽ》いうのかもしれん」
おっちゃんはすこしまた考え、
「醜男愛好というのは、しかし男にはそれほどうれしゅうない気がします。若い未婚の娘がそういうてくれるのならええけど、愛好会員の顔ぶれみたら、みな、うば桜やないかいな。そのコワーイおばはんが、醜男だいすき、いうて追いかけてくる。これはもう、おぞ毛ふるって、ノートルダムのせむし男もハダシで逃げます」
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