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イブのおくれ毛35

时间: 2020-06-10    进入日语论坛
核心提示:フタバのマーク私は、以前、車のうしろに往々つけてあるフタバのマークがとても気に入り、「ウチの車にもあのワッペンつけたいな
(单词翻译:双击或拖选)
フタバのマーク

私は、以前、車のうしろに往々つけてあるフタバのマークがとても気に入り、
「ウチの車にもあのワッペンつけたいな」
とカモカのおっちゃんにいったら、
「あほ、あれは免許とり立ての車だけや」
と笑われた。私は、ひと頃はやった足のうらのマークみたいに、みんなが好きでつけてるもんだとばかり、思っていたのだ。
「でもマークをつけてない車が、技術老練かというと、そうでもないね。へたくそで乱暴なのも多いよ。おっちゃん車もってる?」
「うむ、二台ある」
「エッ。二台も!」
「一台は昼の車。一台は夜の車」
何の話や。
私はこの間、久しぶりに物すごい運転のタクシーに乗ったのだ。たいてい個人タクシーをよんだり、年輩者の運転手を物色して乗るので、ヒドイ運転というのは知らないのだが、町を歩いていて緊急の場合は、そう選り好みはしていられない。飛びのったタクシーの運転手はまだ三十を出たばかりという年ごろ、悪戯《わるさ》したいさかりという感じの壮丁であった。彼はこの、たまりにたまったエネルギーをどうしてくれん、という感じで、壮烈に突進し、片足で廻るみたいに急カーブを切り、腹立たしげに急停車し、私はもう最後には、ただただ、神の加護を祈っていたのだ。
無事だった証拠に、こうやって、カモカのおっちゃんとしゃべっているのであるが、ああいう運転手の車には「乱暴マーク」というのは、つけられないものでしょうかね。
「それは、女のドライバーにもいえますなあ」
とおっちゃん、
「中には運転のうまい女もいますが、概して、オナゴの運転しよる車に、あとからついていったらえらい目にあいます。急停車はする、いつまでも方向指示は出さん、かと思うと四つ角で行先を思案して地図を拡げる、道路中央をトロトロ低速で邪魔して平気。男から見ておよそ常識ばなれしたことをやります」
「じゃ、そんなのは、へたくそマークの上に、性別マークもつけて、運転者が女性であるとひと目でわかるようにすれば、用心するからいいわけね」
「それはもう、女のマークだけでよろしい。その一事がすべてを暗示します」
私は、運転にも女の性《さが》や業《ごう》がでるのかと思ったが、こんないい方はきらいだからだまっていた。
しかし、中には、そういう欠点を自分で知っていて、用心なさる女性もある。フタバのマークをつけてる間、夜と雨の日の運転はツツシムというけなげな女性がいるのだ。
「なんのための車やねん」
と大笑いになった。
「そういう所が、女のかわいらしさですなあ。何か一拍おいて、おかしい。そういうのは、雨の日注意マークというのをつけたら、ええわけですなあ」
「すると、みなそれぞれ、マークをつけて走ればいいわけね。おっちゃんは、何のマークですか」
「僕はやはり、フタバがよろしいなあ。フタバにはじまってフタバにかえる。いつまでも初心者マークをつけて、悠々と車を走らせるのですわ。高速道路へ入って、端っこに身をよせてトロトロ走ってたら気らくでよろし。フタバでいかんかったら、べつに、技術拙劣マークというのを作ってもろて、それを貼りつけて走ってやるのが気らく。これが粋というもんや」
「怒りんぼマークというのもいいですね、車に乗ると人格がかわって、とたんに怒りっぽくなるのがいるよ。そういう人は、怒りんぼマークをつける。すると、みんな用心する」
私はおもしろくなっていった。
「負けずぎらいもいいね。追い抜かれると、くそッと思ってまた追い抜くのがいるでしょう。そういう車は、前もってわかると、敬遠する」
「酒好きマークも、いりますなあ」
と酒の好きなカモカのおっちゃんはいった。
「しかし飲酒運転は国禁に触れるでしょ、どうせ」
「いや、むろん飲んで運転しまへんが、あるいはひょっとすると一杯機嫌でひっかけてるかもしれん、などと一抹の危惧《きぐ》を抱かせる。すると、まわりの車が用心して車間距離をとる」
「物騒ね。おっちゃん飲んで運転することあるんですか」
「いや、夜は車にさわりまへん、酒が飲まれへんさかい。飲んだあとは、昼間とは別の車をもってますので」
ここで返事なんかしたら大変だ。知らん顔をしている。
おっちゃんは私の気を引くように、
「国産の車ですが、だいぶ長う使うて、まだ傷みまへん」
「手入れがよろしいのね」
といわされる。
「早よ傷んでくれたら、買いかえるのに……こういう車は皮肉なもんで、丈夫にできとります。部分品は一とこ二とこ、替えていますがね、あとはとびきり丈夫です」
「長年愛用ともなれば、さぞ特別な愛着でしょうね」
とお愛想をいってあげる。
「まあね。型も古風ですし、ガソリンもよう食うてかないまへんが、いうなら気心のわかった車でっさかいな」
「マークは何をつけていますか」
「昔はフタバのマークでしたけどな、今は枯葉のマークという所ですかなあ。だんだんフタバが枯れました」
「そのほかに何か、マークをつけていますか?」
「技術拙劣マークをつけな、いけませんな。つまり、僕の昼間の車と同じで、フタバにはじまってフタバにかえる」
「粋じゃありませんか」
「いや、これは、進歩がおまへんのや」
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