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イブのおくれ毛47

时间: 2020-06-10    进入日语论坛
核心提示:ス ワ ッ プあーそびーましょ、とカモカのおっちゃんが来たとき、私は夢中になって、スワッピングのことを書いたヨミモノによみ
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ス ワ ッ プ

あーそびーましょ、とカモカのおっちゃんが来たとき、私は夢中になって、スワッピングのことを書いたヨミモノによみふけっていたので、気がつかなかった。「何をよんでいますか」と聞かれて、私は、テレビドラマ『天下堂々』の市兵衛サンのように頬っぺたに手を当てて恥ずかしがった(よくテレビをみる人だねえ、仕事の方はどうなってんの)。
「スワッピングのお話なんだ。おっちゃん、スワッピング、興味ありますか?」
「それは、ありますなあ」
とおっちゃんは水割りをつくりつつ、いった。
「では、あたくしの連れ合いと、おっちゃんのおくさんとを携え来《きた》って、四人でやってもいいという気はありますか?」
「ということはつまり、僕とおせいさん、という組合せになりますか?」
「あたりき。そうでなかったら、スワップにならへんやないの」
「ウーム。オタクの亭主とウチの女房《よめはん》の組合せはともかく、こちとらの方の組合せは分がわるい気がするな。かなり、手前は損をした気がいたします」
「どっちのいうこと」
と、私は気をわるくしたが、本当は私もそうなんだ。だから、四人、気を揃え、ヨーイドン、となるのは至難のわざであるという結論に達した。一人でも、気がススマなかったらプレイできないのだから、なかなかむずかしい。二人のときでさえ、ピタッと気が合うことはむずかしいのに、四人気が合うのを待ってると、爺さん婆さんになりはしないか。
「友人の話では、やはり、酒を飲むそうであります。酒でも飲まんと、トッカカリがない、いうとった」
おっちゃんは乏しい見聞を報告する。
「そうして、気をそそりたてるようなレコードやテープをかけたりする、いろいろ照明にも気を遣《つか》う、おまけに舞台装置も要る」
「ホテルか何か借りるわけ?」
私も具体的事実を知りたく思う。
「いや、そういうのは、友人にいわせると邪道だという。町で女を拾うような、ありふれた感じになるので、自宅に限るという」
「気むずかしいんですね」
「台所の鍋にカレーの残りがあったり、黒板に酒屋への注文がメモしてあったり」
「座敷に子供のガラガラが転がってたり、ベランダに洗濯物があったり……」
「そうそう、そういう所でやるのではなくてはあかんそうですわ」
「それはいいんですが、かねて疑問に思うのは、その、トッカカリのことですけど……」
私はいつも、あたまが禿げるほど考えてるんだが、よくわからない。
「どっからはじめたらいいもんかしら」
「そやから、つまり、はじめに酒飲んで、陽気な心持ちになって」
「いや、そもそものはじまりのことよ。そのおっちゃんの友達はどうやってもう一組を勧誘したんでしょ。まさか一軒一軒まわって、どうですか、とご用聞きに歩くわけにはいかないでしょ。ヨソを見るとどこも、ウチは間に合ってますという顔してるし」
「それはどうですかなあ」
とおっちゃんも心許《こころもと》ない声を出した。だいたい、スワッピングについてのよみものは、そこの所をとばして、俄然、酒を飲んで照明を暗くして、という所からはじまっているから、よくわからない。
「それは、もう、ええのんとちがいますか。アタマ数そろうて酒飲んでれば、おのずとそういうムードになるのん、ちゃいますか」
とおっちゃんはめんどくさそうにいい、
「僕はほっそり、すらりとした美女のおくさんで、みめ美《うるわ》しくなさけある、というようなんがよろしなあ。僕は、おせいさんを除いて、なべてヒトのおくさんが美しく見えるというクセがある。いっぺん、経験してみたいですなあ」
と目を輝かせるが、私としては、そんな途中からはじめるわけにいかない。
「そもそものはじまり」から知りたくてならない。
「くどいようですが、四人どんぴしゃで気の合うようにするにはどうすんの? まず、今晩は、あーそびーましょ、と一組が一組のとこへ、いくわけでしょ」
「その前に、内意を打診して、承諾をとりつけてますやろなあ。突然行ったって、残暑きびしき折柄、おかわりございませんか、と暑中見舞いみたいなことになってしまう」
「じゃ、どうやって、内意を打診すんの?」
「友人の場合、男同士酒飲んでるうち、つい冗談がホンマになり、おのおの、女房を折伏《しやくぶく》説得したということでした」
「ふーん。じゃ、まあその説得をされたとして、四人一堂に会し、どうやってはじまんの? おっちゃんと私、かりにその中の一組だとして、ためしにやってみようよ」
「結構ですな」
「やはり世間話からはじまるかな。スカートたけが長くなりましたね、とか、アメリカ大統領てのは日本の総理大臣にくらべて大変ですね、とか……」
「そんなこというてたら進展せえへん。酒飲んで、膝つき合せてるうち、何とかなるものです!」
とおっちゃんはイライラして叫ぶが、私は冷静、かつ懐疑的にしてさめてるのだ。男はうぬぼれ強く楽天的だからうまくいくと思うだろうが、女は、酒さえ飲めばトチ狂うというわけにはいかない。
「そこを、男の方が、膝に手をおいたり、腰を抱いたりして、おくさんは色けがありますね、とか何とかいう」
おっちゃんは必死に事を進めようとし、私は作り声で、
「いえ、さっぱりですわ、女も中年になると家事と子供にかまけてしまって、ときにオタクの子供さん、塾へやっていらっしゃる?」
ちっとも、スワップよみもののように、「私は夫でない男と、隣室へもつれて入った」ところまで進まない。おっちゃん、泣き声を出し、
「ええい、じゃまくさい。やっぱり、ウチの女房《よめはん》の方が手間かからんでええ!」
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