返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

イブのおくれ毛61

时间: 2020-06-20    进入日语论坛
核心提示:旅の不愉快このごろは旅行をするのが大変な難事業だと友人知人たちはぼやいている。女子大生なんか、アルバイトをして金もあり、
(单词翻译:双击或拖选)
旅の不愉快

このごろは旅行をするのが大変な難事業だと友人知人たちはぼやいている。
女子大生なんか、アルバイトをして金もあり、ヒマはもとよりあるから、どこへでもいけそうなものだが、切符を買うのが大変だという。
バーのママは、たまさかの休みの日が、ストとかちあってついに出られず、旅館もキャンセルしたと怒っていた。
私の友人のハイミスは、いそがしい仕事を持つ女で、やっとヒマをみつけては新幹線に飛び乗って恋人にあいにいく。数時間デートして帰ってくるということが、昔はできたのだが、いまは新幹線がアテにならぬゆえ、せっかくいっても延着で時間を食われて、そのまま空しくとんぼ返りをせねばならなくなった、と憤慨していた。
してみると、推理小説によくある、時刻表を利用した犯罪もいまはむつかしそうである。
時刻表を見て克明細密な計画をたてていても、予定通り列車が発着しなければ、殺人しそこなう。あるいはアリバイがくずれるわけである。国鉄は日本の推理小説界に大打撃を与えたのである。
新幹線の車内アナウンスも、このごろは延着のお詫びをいい慣れて悠揚せまらず、笑みさえ含んで(これは私のヒガ耳かもしれない)、何十分おくれます、などとたのしそうにいう(これもヒガ耳か)。
あれは「お詫び」というより「申し渡す」あるいは「お知らせ」というていのものであろう。
私などであれば、「新神戸へ着くのは十五分おくれの○時○分です」と申し渡されると、(早く着いてよかったナー、日本の国鉄は早いナー)と感嘆してうれしい。そうして世界に自慢したく思う。
更にいえば、世界に見せびらかすために、早く東北九州にジャカスカ新幹線をつくり、セカセカ走らせ、故障したって引ッくり返ったって知ったこっちゃなく、ともかくいっぱいつくりまくって国じゅう新幹線だらけにした方がいいと思う。なおまたいえば、私はよく神戸の下町・新開地で飲むが、荒田町・新開地間、一・二五キロ、新幹線を走らせてもらいたいものだ。あっという間に飲みにいけるじゃないの。
もう一人、べつのハイミスは、旅の不快はジャリどもの横暴にきわまるという。
列車の中を公園とまちがえて、キャッキャッと走り廻り、それをニコヤカに見ている母親にもいたく腹立つという。
「まあ、ハイミスのひがみと思われてもいいわよ。子供なんて元来、他人にはかわいくも何ともないもんなのよ、それを親から見てかわいいから、他人もかわいいだろうと独り合点で思いこんでいる。この偏見と無智蒙昧、じつにいやになるわ」
と怒っていた。
走り廻るジャリどもの憎らしさもさりながら、そっくりかえって泣きつづける赤ん坊のやかましさ、三時間半、新幹線のあいだじゅう、泣きわめかれて気が狂いそうになったといっていた。
しかし私がこのあいだ経験したのでは、飛行機の中で一時間じゅう泣きわめいている赤ん坊がいた。
そのときは団体が乗っていて超満員であった。ぎっしり詰まった席で泣きわめかれるとどうしようもないのだ。新幹線なら食堂車へでもいっている間、離れられるが、飛行機は地上を離れてから足が地につくまでおつき合いしていなければいけない。逃げ場所がない。
そうして私のときは、くだんの赤ん坊、飛行機が地に着いて止まるや否や、ピタリと泣き止んで、ニタニタと笑い、こちらはおちょくられている気分。
団体のご婦人たちは口々にやさしげに赤ん坊の機嫌をとり、
「ゆれたからこわかったのねえ、かわいちょうに。よちよち」
などという。そこも女の偽善者ぶり、みな心中、舌打ちしていたくせに。泣く子と地頭には勝てぬといいますが、ハタ迷惑ではありますよ。
「いや、それはしかたおまへん。赤ん坊の泣くのぐらいは堪忍してやらなければ。子供は国のたから、親の生き甲斐。——難産で赤児がうぶ声あげへんときがある。まだ泣かんか、もうあかんかと、固唾をのんで泣き声を待ってるような、親や身内もいるのですぞ。それを思うと、元気でわめいてる赤ん坊の泣き声は、ありがたいもの、と思わなあかん。それに戦争中、母乳も出ない親の赤ん坊は飢えてヒイヒイと力なく泣いとりました。それに比べ、力いっぱい泣く声のありがたさ——二度と飢えた子供の顔は見とうない」
とカモカのおっちゃんはいい、たちまち並み居る女たちに口々にやっつけられる。
「野坂の昭ちゃんみたいなこと、いわないでよ!」
「子供と犬猫ペットは、人により好ききらいがあるもんよ!」
火のつくように叱られる。
「私は空港のボディチェックが不快やわ」
とうばざくらの美人記者がいった。
「私、レズの気はないから、女の子にさわられるの、ぞっとする。あれどうして、女には男が、男には女が、調べないのかしら」
「そうね」
とみんな、口々にうなずき交した。
「もしそうやったら、熱心にしらべるからハイジャックなんかおきないよ。同じ事なら女にさわられるのよりは、男にさわられる方が好きやな。男もそうやろと思うけどな」
「しかし……しかし」
とおっちゃんはいそいで口を挟み、
「女という女、みな、さわり甲斐があるとは限りまへん。かわいらしいて、ええ体して思わずさわりとうなる、なんて女、十人に一人あるかなし。大抵は中年、垂れ乳で腹は二重にくびれ、貫禄あれどウエストなしというご連中、さわるのもさわられるのも堪忍してほしいのが多い。——やはり男には男、女には女が身体検査するのが無難でっしゃろ」
こんどは誰も反論なし。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%