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イブのおくれ毛75

时间: 2020-06-20    进入日语论坛
核心提示:ヘンな町・神戸神戸はヘンな町だと思う。どこがヘンかというと、ちょっといい表わしにくいが、何となく、することがおかしい。こ
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ヘンな町・神戸

神戸はヘンな町だと思う。
どこがヘンかというと、ちょっといい表わしにくいが、何となく、することがおかしい。
この間も、神戸で一冊、本が出た。
神戸新聞のフロントに、二十年来時事マンガをかきつづけてきた、マンガ家たかはし・もうさんの本である。今まで新聞にのった作品からえらんだものに、神戸百人のスケッチや、ほかのマンガをとりあつめ、一冊にしたもので、もうさんの知己友人があつまって、ああでもない、こうでもない、とヤッサモッサして、とうとう「たかはし・もう笑品集」という本をつくり上げてしまった。本人はぐうたらで、飲んで唄うのが大好きな人だから、まわりがよってたかってつくらなければ、永久にできないだろう。
神戸の百人をスケッチするということも、実際には大変で、もうさん自身の苦労も苦労だが、スケッチされる方の協力がなければ、できないのだ。もうさんが、
「ワシ、こんど本つくるらしいねん(何でもヒトゴトのようにいう御仁である)。ほんで、そん中へ入れるよってスケッチさせてえな」
というと、
「よっしゃ、もうさんのことやったらしゃァない」
と応じてくれなければ、でき上らない。
兵庫県知事、神戸市長、新聞社社長、バーのママ、作家、画家、音楽家、神社の宮司さん、バレリーナ、神戸商工会議所会頭、ファッションデザイナー、証券会社社長、カメラマン……いやもう、じつにいろんな人が、
「いま忙しねんけどな。まァええわ」
とスケッチされているのだ。せまい神戸のよさは、これだろう。「笑品集」などという本ができ上るところに、鬱然たる地方文化を感じさせるのである。それを、大丸デパートの一隅に展示して、そのコーナーで、一週間、「たかはし・もう顔見世興行」などと称し、毎日、誰かかれか、入れ代り立ちかわりそこへ詰めて、何かあそんでいるのだ。奇術をしたり、バレーを見せたり、唄ったり、している。
仮設の小さな舞台の上では、もうさんは客やゲストに、新聞の記事からタネをもらって、マンガにして見せる。それが、翌朝の神戸新聞のフロントにのっているわけである。時事マンガというもの、とてつもなく、しんどいものだなあとわかったりする。
二列ぐらいベンチを置いているが、うしろは立っていて、二、三十人から四、五十人くらい、買い物のお客さんがあつまってくれる。
私も一日受けもたされて、マイクを持って、もうさんと対談。マンガよりうまいという、彼の歌にもつきあい、お客さんに大サービスをする。
お客さんは大よろこびで手拍子を打ってくれる。デパートのまん中で、踊ったり唄ったり、という、こういう阿呆なことをするのが神戸というところなのかもしれない。
同じフロアの向い側は、舶来高級品の売場、そのとなりは呉服売場、そういう上品なところの一隅で、もうさんとその一味は、マンガを壁面にならべ、ガタガタの舞台をこしらえて、酒も飲まないのにいい声で、ハヤリウタ、
「男 捨身の、春団治——」
などとマイクで唄っているのだから、おかしい。しかし神戸という町では、べつにそれがチグハグにならず、みなすべてしっくりしていて、私もマイクをもって「隅田川」のセリフをいってから、階下へおりて、ついでに流行のバッグを買ったりなぞ、するのである。
バレリーナの美しいお嬢さんが、
「もうさんに捧げる『金米《こんぺい》糖の踊り』」
なども披露する。
「みなさん、ちょっと場をつくって下さい」
とお客さんたちを起たせて、みんなで場所をあけ、テープで音楽を流して、お嬢さんは谷桃子ばりの、クラシック・バレーを見せてくれたりする。呉服売場の売り子さんが、みんなこっちを見ていたりして、一斉に拍手。
最後に、「春の小川」をみんなで合唱して、一週間のマンガ展は終り。こんなあそびを許してくれるデパートもデパートである。
粋《いき》でモダンで、阿呆らしくて、ヘンな町である、神戸というのは。
みんなあそび好き、歌好き、おまつりさわぎ好き。
神戸まつりのパレードには、市役所の市民局長みずから踊る。
神戸市長は、パーティに出ると、絶対、唄わせなければ承知しない。ものすごくいい声で本格的テノール。
商工会議所会頭は七十五歳、川崎重工の相談役でもあり、神戸の実力者ナンバーワン、いわゆる「神戸の法王」と称されている人だが、「若さのヒケツは飲むことだ」と信じている人。この人の歌、「朝ごとの新聞よめば腹立ちて処置なきままに酒を飲むかな」
何しろ、生田神社の月見の宴のあとの直会《なおらい》では、外人が、灘の樽酒を桝《ます》でぐいぐいあおっているような土地がら。酒を飲んでからでなくては、仕事も手につかない。いろんな人も多い。パーティでは、チマ・チョゴリの美女に、金襴の法衣の坊サン(いそがしいので檀家からそのままかけつけてはる)、英語に中国語に神戸弁がつきまぜられて飛びかう。
そういう、ゴタゴタした、ヘンな町だからこそ、「ろくさん」などというおかしいグループなどができるのだ。戦後すぐの六三教育で育った、六三育ちのグループ八人が、神戸弁で、六三世代を代表してその生活と意見をしゃべり、ミニコミ『ろくさん』を発行している。こんど「指導者《えらいひと》なんかいらんわい」という本を出した。
ろくなエライヒトはおらへん、この上は我々一人一人が、自分の手で生活を守っていくほかない、ということを井戸端会議風にしゃべっていて、これもたいへんおもしろい。こんなのが、自然発生的に、しかもなんの無理もなく、フワッと生まれて、支持され、共感されているところが、神戸らしくていい。
神戸というのはヘンな町である。けったいな、愛すべき町である。なお、「たかはし・もう笑品集」は、「神戸市生田区東町一一三ノ一、大神ビル8F、神戸っ子」に、「指導者《えらいひと》なんかいらんわい」は「神戸市須磨区潮見台町一ノ三ノ五、ぱいぽ出版」に申し込めば手に入ります。よんで下さい。どちらも有料。
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