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女の長風呂08

时间: 2020-06-25    进入日语论坛
核心提示:性 の 河 原私の友人の男性(これは、カモカのおっちゃんではなく、三十八、九の中年前期の男である)は、あるとき、しみじみと
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性 の 河 原

私の友人の男性(これは、カモカのおっちゃんではなく、三十八、九の中年前期の男である)は、あるとき、しみじみといっていた。
「僕ら、アレがでけへんようになったら死ぬワ。そうかて、生きててもセイないもんなァ……」
この場合の「僕ら」という、「ら」は、複数を指すのではなく、大阪弁の語法で、「僕などは」「僕なンかは」という意味である。したがって男性全般の意見というより、彼個人の感懐なのである。であるが、まあ、ここは一応、男性共通の心理とみて、差支えなかろう。
そこも、われわれ女には不可解なように思う。女はべつにアレができなくなったとて、死んだがマシとは思えない。前《ぜん》申すとおり、女の性の発現は各方面、多岐にわたっているから、まことに自由自在で、そッちがだめならこッちがあるさ、コドモのある女はコドモにかまけ、金の好きなのは金をため、宝石狂は宝石あつめ、世話好きは仲人マニアになる、というふうに、セックスは変幻自在となっていろんなヒマのつぶしかたを考えるであろう。
そこへくると男の性はどうも不自由であるらしい。あの道がダメとなると代替品がなくて、人生諸事、メタメタになるのではないかしらん。
しかし生者《しようじや》必衰のことわり、花のいのちは短かくて、いつまでも盛りの春というわけにはまいらん、みんな男という男、いつかは年とっちゃう。ご年輩となると、欲も色気も奮い立たぬであろう。
しかし、ご年輩の人がそれゆえに世をはかなんで自殺した、ということもきかない所をみると、自然の摂理で、年相応に欲も思想も枯れすがれ、べつに人生、あればっかりが能ではない、と悟られるからではあるまいか。そうして「でけへんようになったら死ぬ」という、若い盛りの哀れな性の亡者を見やって、へ、へへへと枯れすがれた笑いを洩らし、
「まァ若いときはそんなもんやが、これでまた、年とったら、とったで楽しみもありまんねん」
などと悠然としていられる、そういうのは自然で、たいへん見よいながめである。
しかし私のきらいなのは、まだそういう年頃でも世代でもないのに、
「イヤモウ、性の奥義はきわめつくした、何やっても何見ても、|おもろない《ヽヽヽヽヽ》」
などとブッてる奴である。気取って粋がって、
「あれもやった、これも見た、まァ何したところで同じこと、所詮女はどれも同じ、性というのは単純でつまらんもんで、べつに赤目吊ってやることとちがう」
なんぞという手合い、こういう男性は所詮、奥ゆきも知れてるよ。それより私は、「でけへんようになったら死ぬ」なんどという男の方が好きである。あるいは温泉場なんかで安物にひっかかったり、オトナのオモチャの店へ入って、へんなハンカチをこっそりたたんだり折ったりして悦に入ってる男たちの方が可愛らしくて自然である。
なべて、自然なるもの、みな、よろし。いわんや男においてをや。性、素直なるを以て男はよしとする。ブッてる奴は、私、大きらいである。
そうはいっても、人間は、時により、性を至上のものとも、むなしいものとも、両極端に思うことはある。それは仕方がない。それもまた、人間の自然である。カモカのおっちゃんも、そう思う、といっている。
「いちばん、両極端になるのは、れいの、前とあとですな」
「イヤ、ほんとです」と私も深く、うなずく所があった。
「まァ、その何です、やる前はカッカしてますわな、それこそ、あんたの友達やないがいまできなんだら、死んだ方がマシとのぼせる。中学生ぐらいの気持とかわらん」
「そうよ、そう」私も再び、うちうなずく。
「しかし、すんでしまうとコロッとかわります。中学生から瞬時に四十男の分別がよみがえる」
「全く」
「ああ、おとなげないことをした、と」
「ハア」
「ああ、あさましい、|らち《ヽヽ》もない、と」
「ホー」
「むなしいことだ、と」
「ご尤も」
「何のために息切らしてこんなん、せんならんねん、と」
「なるほど」
「つくづく、人間は空虚、この世は無、生きることは徒労だと思いますな」
「でしょうね」
「女はそんなん、思いまへんか」
「思います、思います」
「思うても相手にむきつけにいうわけにいかん」
「イヤー、ご同様」
「やっぱり、たのしそうな、いとしそうな顔して見せんならん、浮世の義理のつらいトコ」
「全く、一緒」
「ほんまかいな。女かてそう思うんでっか?」
「あッたりまえでしょ、バカ。男が汗かいてやってんのに、すぐヒヤカすようなこといえますか。イヤ、ご苦労なこっちゃ、思《おも》てても、笑うわけにいかへん、やっぱりやさしいコトバの一つもお愛想にいわんと、人間は気のもんですから、白けっちゃう」
「そうかァ。女も、そうかァ」
と、カモカのおっちゃんはいささか、深刻なおももち。
「すると、男も女も、両方、お愛想に、エエ顔し合《お》うとるわけですな」
「そういうわけ」
「お互いに浮世の義理は……」
と、カブキならここで、チョン、と柝《き》が入るところ、
「辛いわねえ」
と二人で声を合せていい、ホーとため息をつきあったが、双方、そういう口の下からお互い、それぞれの配偶者あいてに、その場になったらいそしむことであろう。積んではくずす、性の河原の業《ごう》である。
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