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女の長風呂14

时间: 2020-06-25    进入日语论坛
核心提示:淫  風わが友、カモカのおっちゃんによれば、女のよしあしをきめるポイントはただ一つ、「抱く気がおきるか、おこらんか」とい
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淫  風

わが友、カモカのおっちゃんによれば、女のよしあしをきめるポイントはただ一つ、
「抱く気がおきるか、おこらんか」ということだそうである。
「その抱く気、というのは、若いとか、セクシーなグラマーとか、美人とか、そういうときにおきるのですか」ときいたら、
「イヤ、それにはかぎりまへん。ま、それも大いに勘考されるが、それだけやない。より以上に、その女のもつエスプリ、いいまンのンか、人間味、愛嬌度などが重大な要素としてプラスアルファされますなあ」
「ええ年してロマンチックやな」
「ええ年やから、ロマンチックになるねん」
「たいがいの男て、女やったら誰でもええのんとちがいますか」
「そら、そんなもんやない。ハタチ代ならともかく、人間、四十代になると、若うてきれいやったらええ、というわけにいかん」
「男って気むずかしいもんね」
「いや、男は精神的なんですわ。まァ、例えば女学者の中根千枝女史なんかゼヒ抱きたい」
「なるほど」
「あの人はいうことも書くことも面白いし、笑い顔なんか天下一品、ものすごう可愛らしい」
中根サン、痴漢に気をつけてェ! 神戸へ来たら貞操の危機よ、狼がねらってます。
では女が、男のよしあしを定めるポイントは何だろうか。
よしあしというより、少なくとも私にとって好もしい男、男らしい男、あらまほしい男、男くさい男、の基準は何だろうか。
「私、思うに、その男のプライベートな時間の顔や姿を想像できる、そしてこっけいでもなく、違和感もない、そういう男が好きですね」
「プライベートというのは、トイレでしゃがんだり、足を拡げてつっ立ったりしてるときですか?」
「バカ、もう一つのプライベート、つまり閨房《けいぼう》の中にきまってるでしょ」
男はいろんな場所で、シャカリキに仕事している。
この世の中、やはりまだ、フマジメ人間よりはマジメ人間の方が圧倒的に多いらしく、男たちはおおむね、生業にいそしんでいる。
壇上で獅子吼《ししく》する政治家、長距離トラックの運転手、声を嗄《か》らしてる競馬予想屋、テレビで汗かいて歌ってる歌手、地下鉄掘ってる出かせぎのオッサン、葬式の最中にしつこく取材して水をぶっかけられてる週刊誌記者、みな、けんめいに仕事にうちこんでいる。
その、仕事にうちこんでいる顔と、こうもあろうかと想像する夜の顔が、ぴったり重なって不自然でない、そういう男が好き。
「しかしそら、想像したらみんな、そうとちがいまッか?」
それがちがうんだ。
どうしたって、プライベートなときの顔や姿が想像できないタイプの男がいる。あんまり自分を出さず、注意ぶかく慎重に、言動をつつしみ、非のうち所もない世渡りをして、腹の底の知れないような男。
また、想像しただけで、こっけいになり、おかしくなるタイプの男がいる。威張り返って、説教するのが好きで、張りボテの威厳に身を包んでいる男。
また、かりにも夜の顔や、プライベートな姿態など想像してはいけないような、むしろ想像した自分を恥じなくてはいけないような、いや、この人にかぎってそんなことあり得ないと信じたいような、神聖おかすべからざる、厳粛荘重な気分にさせるタイプの男がいる。
そういう男たちは、私にとってはみな、にがてである。
私にいわせれば、シャカリキに仕事もし、ひたすら、ベッドでもいそしみ、その間をつなぐ|ヘソの緒《ヽヽヽヽ》にちゃんと血が通っていることが感じられるような人間味がなくちゃ、つまらない。
どっちの顔も、この男が人生でもっている顔であり、どっちも真実だと思わせるような、正直なものがなくちゃ、いけない。
そうでなければ、「生きてる男」の感じがしない。淫らなかんじがなくちゃ、いけない。
あたまのてっぺんからつま先まで、熱い血がドクドクしてる感じがなくちゃいけない。
そういう男たちは、みんな率直で正直で、ぶってない。
ウソつきでもなく、傲慢《ごうまん》でもなく、ハッタリもない。
あるとしても、かえって人間らしく見せるためのもののような、一ばん良質のハッタリである。
そうして、マサカ、自分がそういう風に見られているなどとは夢にも思わない、そういう男が好きである。
「ああ、いやらしい女や、オマエさんは」
とカモカのおっちゃんはいった。
「男見たら、夜の顔を想像してはりますのんか」
「男だけやありませんよ」
家だってそうである。このごろ、雑誌、週刊誌に家のデザインや部屋のもよう替え、つくりつけ、などの写真や記事が出てないのはない。
私が、いい家、いい部屋、と思う基準は、そこで寝る気になるかどうか、ということである。誰も皇居大広間で寝たいとは思わぬであろうし、空手道場の荒ダタミの上でその気になろうとは思えぬ。
寝るというのはむろん、あの意味であるが、私は人間の住む家、人間の住む部屋というのは、いい意味で、淫風《いんぷう》がかんじられなければあかん、と思っている。それゆえ、あまりに飾り立てた、とりすました家や部屋を見ると、ここの住人は、れいのときは外でモーテルでも利用するんじゃないかとかんぐってしまう。ひいては、町全体、淫風むんむんしてるなんて、じつに人間らしい、いいことなのだ。ビルや地下鉄で固めてオール町中オフィス街にしてしまった大阪都心部なんてもう死物化した。
そこへくると団地なんて、これはすごいよ。ずらりと並んだ無数の窓の灯、無数の窓の愛、十里淫風なまぐさい感じ。長安一片の月、万戸肉弾|相搏《あいう》つの声。
イヤ、結構ですなあ。
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