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女の長風呂17

时间: 2020-06-25    进入日语论坛
核心提示:子供より男「未婚の母」もけっこうであるが、私個人にかぎって申せば、子供よりは男のほうをえらぶ。私生児をもつよりは、内妻《
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子供より男

「未婚の母」もけっこうであるが、私個人にかぎって申せば、子供よりは男のほうをえらぶ。私生児をもつよりは、内妻《ヽヽ》ならぬ内夫《ヽヽ》をもつほうがよい。
尤も、彼女たちが子供をもちたがる気持はわからないことはない。男はキョロキョロとして気持が定まらず、手もとへ縛りつけておくのは容易でないが、子供はいったん生んだら母親のものである。男に対する支配欲、権力欲を、子供を通じて発揮できるし、一生、男と縁がつながれるのだから、この意地わるいよろこびはこたえられない。男が逃げたって、子供があるという事実は消えないのだから、こうなると生んだほうが勝ち。
男も枕を高くして寝られなくなった。身に覚えのある男は夜半めざめて、とつおいつ考えこみ、そうなるといい方へ考えがいかずわるいほうわるいほうと考えるのは人のならいである。最悪の場合、つまり家庭を破壊し職場をクビになり、信用ゼロで後ろ指さされ世間の嗤《わら》い者になるという暗澹たる前途を想像して、ひとりキャッと悲鳴を発し心胆を寒くすることもあるであろう。男ってお気の毒。
しかしながら私は子供は好きなのだけれど、子供と男と、どっちをとるかといわれれば男のほうが好き。だから私、子供は生まない。
子供を生んで可愛がるよりは、自分が子供のように可愛がられるほうが好き。
子供を抱いて子守歌をうたって寝かせるよりは、寒い晩にあったかい男の寝床にもぐりこんで、男のふところに冷えた顔をつっこんで、男に衿元《えりもと》まで蒲団をかけてもらって、男にぬくぬくと抱きしめられてねむるほうが好き。
子供に、あれ買って、これして、とまつわりつかれて甘えられるより、男に、これ買って、あれをして、と甘えるのが好き。そうして男がいうことをきいてくれないと、ふくれて靴で男の足を蹴って、ものをいわれても返事をせず、仕方がないので男がそれを買う、すると急にニコニコして男の腕に手を通して甘ったれて歩くのが好き。
むし暑くって眠れない晩は、男に団扇《うちわ》であおがせて、男がツイねむいもんだから手がゆるゆると止まってしまう、するとパチンと手を叩いてやって、ビックリした男がまたあわてて、団扇であおいでくれるというようなのが、好き。
外で一日あそんで来てかえると、るす番をしていた男に、ほかの男にもてた話をくわしくきかせ、コート、帽子、服、手袋、くつした、と一つ一つばらばらにぬぎ散らし、男が一つずつひろってハンガーにかけてくれる、というのが好き。
朝、男にほっぺたを軽く叩かれたり、髪にさわられたりして、「もう起きなさい」とやさしく起こされるのが好き。「目ざまし鳴ってるじゃないの、学校におくれるよッ」と子供を叱咤するより、ずうっと、ずうっと、好き。
男がヒゲを剃っている、それを熱心に見ながら、どうして男って毎朝、毎朝、ヒゲが生えるのかなあ、とつくづく、ふしぎがるのが好き。
男のコートを着てみたら裾がひきずって手がかくれてしまって、男の靴をはいたら足が三つはいりそうなくらい大きくって、それをひきずってあるいてキャッキャッと笑うのが好き。
じゃまくさいので、もうお風呂へはいらないといったら、お尻をぱちんと叩かれてむりに服をぬがされて風呂へ漬けられて、熱い熱いとあばれたら、
「十《とお》かぞえるまで」
と怖い顔で叱られる。数をとばしてよんで飛び出そうとしたら首根っこをおさえられて両腕に抱きしめられて漬けられてしまう、男の胸毛が清らかな熱いお湯の中で海藻みたいにゆらいでいるのが面白くって、じっと見ているうちに、やっと、
「九《ここ》のつ、十《とお》おう」
と男がいって抱きあげてくれるのが好き。
海水浴で、男はぐんぐん沖へ泳いでいく。私は泳げないので海岸でバチャバチャして遊ぶ。男に浮環をそろそろと押してもらって、私は浮環の中におさまり、空を見、沖をながめ、自分で泳いでるような気がする、大きい波がきておぼれそうになって男の首にかじりつき、横抱きにされて浜へ連れかえってもらう、男はまたひとりで沖へ泳いでいってしまう、うらやましいような、悲しいような、男がたまらず慕わしいような切ない気持で、波のしぶきともつかず涙ともつかず、顔を濡らして沖を見ているのが好き。
お茶を飲むとき茶柱が立ってるのを見つけて、わざわざもっていって男に見せ、びっくり、感心させるのが好き。
あたらしい服がとどいて、さっそくそれを着てみる。背中のファスナーを男にひっぱりあげてもらって、くるりとふり返ったとき、男がにこにこして、よく似合う、といってくれるのが好き。その請求書を男の机の上にもっていっといて、そのあと、どうなったか知らない、二度と洋服屋が請求してこない所をみると、たぶん男が払ってくれたんだろうが、そんなことあんまり深く考えたことのないのが好き。
レストランヘ出かける、男のとった皿のほうがおいしそうだと、それを指して私の皿へ入れてもらい、私のは男にやらず、みんな、食べてしまうのが好き。
エビの皮をむいてもらい、エスカルゴを殻から出してもらう、むいたのをたべるのは私で、むく役目はいつも男、そんなのが好き。
そうして毎夜毎夜、男のふところに顔をつっこんでねむり、寝物語をせがみ、男がねむがってレコードがゆるんだように言葉がとぎれると、耳をひっぱったり鼻をつまんだりしていじめて目をさまさせるのが好き。
だから私は、子供を生んで可愛がるより、男に子供みたいに可愛がってもらうのが好きだというのだ。
問題は、そんなに可愛がってくれる男を、どこで見つけるかということだな、うん。
それがわかりゃ、苦労はせんよ。
如上のべ来った範例は、私の父親、オーマイパパでありました。なにウチの亭主がそんなことするもんかいな、あほらしい。——でも、割合、ちかいです、ごめんね、イヒヒヒ。
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