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女の長風呂22

时间: 2020-06-25    进入日语论坛
核心提示:オヤ&ムスコ珍しく、カモカのおっちゃんが教育論をぶった。例の「あさま山荘」連合赤軍派のことである。「罪《つみ》九族に及ぶ
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オヤ&ムスコ

珍しく、カモカのおっちゃんが教育論をぶった。例の「あさま山荘」連合赤軍派のことである。
「罪《つみ》九族に及ぶ、いうのは、古代中国や日本のことかと思《おも》てたら、現代の日本のことなんですな」
そういえば赤軍派の犯人の親たちに、ありとあらゆる非難と恫喝《どうかつ》が加えられた。公金拐帯犯人やふつうの人殺しのときは、親まで公衆《マスコミ》の面前へひきだされて面罵《めんば》されることはあまりないものであるのに、このたびばかりは、一緒に親も世間の懲罰をうけた。
これがけしからん、とカモカのおっちゃんはいう。
「そうやないか。一流作家・評論家まで、あれはオヤがわるい、オヤの責任や、いうとるけど、そいつらのムスコはどや、ちゅうねん」
「それはやはり、一流のムスコたちやから一流の大学を出て一流の勤め人になってんのと、ちがいますか」
「そやろ、そんな奴が、オヤの責任や、いうて責める資格はありません」
「いや、そういう一流のオヤやから、不出来なオヤを責める資格があるのとちがいますか」
「あほ。オヤの責任、教育がわるい、ときめつける資格のあるのは、自分も失敗したオヤだけです。オノレはうまくしてやったと悦に入っといて、他人を責める、そんな傲慢な根性で、作家や、評論家や、いうてデカいツラをするな」
カモカのおっちゃんはそういいつつ、太平楽に酒を飲む。
彼は酒を飲んでいるときだけ、元気である。
「オヤがわるい、いうやつ、自分の方が首をくくる立場になったら、いうて考えたことあるか。作家や評論家が、あないアホで、心が冷たい人種や思いまへなんだ」
シラフであれば、カモカのおっちゃんは、作家や評論家の前で、これだけいう勇気はなかろう。すべて、洒がいわせる放言であれば、一流作家・評論家諸氏よ、大目にみてやって頂きたい。
なお、私は四・五流作家である故に、今回の事件について、マスコミから、さしたるコメントは求められずにすんだ。こういうやるせなくなるような大事件の論評は、私には廻ってこない。私にくるのは、山陽新幹線の試乗とか、夫婦ゲンカのコツとか、あんまり、あたまを使わんでもいいような楽しいのばかりであるから助かる。
だからカモカのおっちゃんの弾劾《だんがい》は、私に対してではあるまい。
「いったい、十六、七から上のムスコが、オヤのいうこと、ききまッか? きかんでしょう?」
「きかないでしょうね」と私。
「なんでもオヤの反対をしよう、しよう、とする。オヤが制止するといきりたち、オヤがけしかけると一歩ひきさがる、という、アマノジャクもええとこ」
「なるほど」
「そらもう、十六、七になったら、オヤとムスコは別の人格、個性やと思わなあかん」
「かもしれないね」
「ムスコがいうこときかんからいうて、いちいち首くくってたら、オヤはいのち何ぼあっても足りまへん」
「ハハア」
「そら小さい時は教育次第かもしれへん。おかしな投書があった、幼稚園の先生が、コドモはこんなに可愛いのに、どうして赤軍派にはいるなんてこわいことになるんでしょう、というとった」
私は笑う。
「小さいときはどんなムスコも、親のいうことようきいて可愛らしいもんです。そんなときは、どんなオヤかて、将来、赤軍派になると思いまッかいな。また、そんな教育する筈ないです。みんなマトモな社会人になれると思う」
「ご尤も」
「それがどこでどうまちごうたか、ヒゲが生え出すとムスコはオヤの手に負えんようになるのです、ヒゲが親子のわかれ道です」
「オー」
「お上・警察のいうことをようきいて、おとなしく従っとれば一生ご安泰やのに、なんの因果か、主義・思想とやらのいうことのほうをきく」
「ムスコにはムスコの主張もいい分もありますからね、仕方ないでしょ」
「さよう、こら、説得してもやめるもんやおまへん。たとえていうなら、お上・警察は古びた女房《よめはん》みたいなもの、主義・思想は若い女みたいなもの」
なんの話や、それは。
「ピチピチ、ムチムチ、した若い女のほうが、ガリガリの根性悪の、こわい古女房よりなんぼええかわからん、ムスコは正直です」
私、無言。ヘンな相槌うつと、どこへ話がとぶかわからない。
「しかしオヤは世間も知り、浮世の義理を考え、いくらイヤでも気にくわぬでも、古女房から、いやちがった、お上・警察からのがれ、逆らえるとは思えん、いやでもムリでも、ムスコを説得し、必死に因果をふくめようとする」
なんだか、ヘンな話のはこび。
「ムスコはどうしてもいいなりにならん、やっぱり若い女を、いやちがった、主義・主張をとろうとする、その気にならへんものは、いくらオドしてもスカしても立たない。これがオヤの責任であろうか、教育の失敗であろうか、宇宙の摂理、自然の輪廻《りんね》ではないか、立たんものは立たんのだ」
「バカ、何いうてんの、話をねじまげなさんな」
「だからオヤはオヤ、ムスコはムスコ、別々の個性です。とめてとまらぬ騎虎の勢い、というものが人間にはあるのだ。オヤがいかにがんばったとて、力及ばぬ時と場合がムスコにはあるのです。それに対する理解と同情のないやつに、文学だ、学問だと弄《もてあそ》ばれては困るんや」
「シッ、大きな声……一流作家・評論家にきこえたらどうすんのよ」
大正フタケタ、昭和ヒトケタあたりの男は困るね。論理的欠陥を、声のボリュームで補おうとするところがあるよ。カモカのおっちゃん、話がこんがらがったときほど、デカイ声で圧倒しようとする。
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