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女の長風呂39

时间: 2020-06-25    进入日语论坛
核心提示:往  生以前、女が男からいわれる一番うれしい文句は、「寝ませんか」というくどきだといった。しかしながら無論、それは抽象的
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往  生

以前、女が男からいわれる一番うれしい文句は、
「寝ませんか」
というくどきだといった。
しかしながら無論、それは抽象的な意味でいったのであって、現実にくどくときは、誰もこんな表現はしないと思う。そう直截にいわれたら、ミもフタもない。ことに女は、エエ恰好しィでなくても、白か黒かと問われた場合、ほんとのことをすぐいえない。いやだといってしまう。女を追いつめてはいけないのである。女に返事を求めるときは、かならず逃げ道をつくっておかなければいけない。だから、その意味するところは同じでも、ちょっと手をかけて、カムフラージュしなければいけない。人間というもんは気のもんで、いい方のニュアンスでずいぶんちがう。
私の友人(以下みな男)某に、女をくどくときはどういうのかきいてみたら、彼は専ら相手が相手(バー、キャバレー、小料理屋等水商売のご婦人)ゆえ、
「どや、ボクの彼女にならへんか」
というのだそうだ。
また別の友人某は能もなく、
「どや、ホテルヘいこうか」
というのだそうで、これも芸のない誘いである。私がそういうと彼らは反駁《はんばく》して、「そやけど、それを何べんも何べんも、性こりもなしに顔見るたんびやってると、向こうも呆れてどうかした拍手にクラッと落ちよる」ということだった。芸のないところは粘りでいくという、まことに愍笑《びんしよう》すべき範例ではあるが、仕方ない。もともと日本男児は無趣味に育てられてるからいかんのだ。民族的欠陥なのだ。美辞麗句を並べたり、詩を引用したり、おだてたりもち上げたりして女心をくすぐるあの才能も器用さも、マメな遊び精神もないのだから、このへんのところかもしれない。「させろ」「やらせろ」というのも高圧的であろう。古川柳に、「旦那でもさせおろうとはあまりなり」というのがあり、ここの旦那はご主人さまのことである。使用者、身分の高い男、殿さまのたぐいである。よく時代小説にある、お大名などが腰元・女中を無理無体に手ごめにすることを「迫姦」というのだそうだが、「させおろう」というのはその感じが出ておかしい。
また別の友人某は、「そんなハッキリいうたらあかんがな」と、友人連をたしなめていた。彼は母国の湿潤なる風土性をかえりみ、民族の|あいまい《ヽヽヽヽ》模糊《もこ》とした精神文化をおもんぱかって、決して|あたま《ヽヽヽ》から|しっぽ《ヽヽヽ》までしゃべらないそうである。何ということなく、おぼめかせ、
「どや。え? かめへんやろ? ええやろ」
というそうだ。すると女は、
「イヤ!、もう|かなん《ヽヽヽ》なあ、いつもいつもアレばっかりやもん……」
と閉口する。而うして、友人も、五へん十ぺんでは|らち《ヽヽ》があかぬという。間がなすきがな、いうそうだ。くり返しくり返し攻撃するそうだ。そしていいかげん時間をこってりかけて、
「もう、ええかげんに往生《ヽヽ》せんかいな」
という。
この「往生」がいい。大阪弁で「往生する」というのは、ゆきづまって手をあげる、観念する、覚悟をきめる、などの意があり、くどき落される、倒産する、などに使う。弱った、困った、とかるい意味でも使うが、この場合は、とうとう、落城、という意味である。
そういえば、東京弁で、
「観念しろよ」
といわれたら、何だかヤクザのスケになれと脅迫されたようで絶体絶命の感があり、
「覚悟しろ」
といわれたら、輪姦《まわ》されるみたいで恐ろしい。貞操堅固でなくても、イヤダヨッといいたくなる。その点「往生しいな、な」などといわれると、逃げ道があるから気らくであろう。
「往生しなさい」では、こんなことがあった。私の顔を見るたびに、
「いっぺん、僕のいうことをきいて下さい」という奴があった。彼は女子大の先生である。先生はSUKEBEだという世間の通念に毒された私は、彼もそうだと思いこんでいた。私はいつも断わりつづけていた。それでも顔見合わせるたんびにそいつはこりずにくどく。
「もう、ええかげんに往生しなさいよ」
という。
「ちょっとの間、体を貸してもらえばいいのです。ぜひとも、と前から思ってたんです」
うれしいような困るような、よくぞ女に生まれける、といった気分である。私は酒場のカウンターに指で「の」を書いていた。うれしいやら恥かしいやらで顔が上げられない。
「忙しいんでしょうけど、ほんのちょっとの間ですからお手間はとらせません」
「でも」
「ギャラもちゃんと払います」
「失礼な。あたしプロとちがいますよ」
「それはわかっていますが、貴重なお時間を割く失礼と、あなたに対する敬意のあらわれです」
ちなみにいうと、その男はジェラール・フィリップに似た、繊細な感じの男前である。女子大生だけでなく、熱をあげてる女も多いのだ。
私は大いに心動かされる。小声になって、
「ウチの亭主にはナイショにしてくれますね」
「関係ないことでしょう。それとも、いつもいつもついてこられる慣習ですか?」
「とんでもない。それほど悪趣味じゃありませんわ」
「ではまたもや御意《ぎよい》の変らぬうちに、と——。えーと、いつがよろしいか」
彼は手帖を拡げた。
「あなたのご都合のよいときにしましょう」
私のほうのご都合は、そうときまればアレの時期以外はいつでもいいわけだ。
「ではこちらできめます。ダイは何にしましょう?」
私はけげんな顔になり、
「ダイって、寝台ですか?」
「演題です。�女性の生き甲斐�とか、�これからの女性はどうあるべきか�とか……」
そいつは、自分の女子大で私に講演させようとくどいていたのだ。
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