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女の長風呂41

时间: 2020-06-25    进入日语论坛
核心提示:女 の 出 撃女のハンドバッグには何々が入っているのかと、男はいつも思うらしい。さしたるものは入っていないが、このあいだフ
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女 の 出 撃

女のハンドバッグには何々が入っているのかと、男はいつも思うらしい。
さしたるものは入っていないが、このあいだフーンと思うことがあった。
デパートの舶来品売場で、私はきれいな小函をみつけて買った。金属製の楕円形で、大きさは拇指《おやゆび》の腹ぐらい、フタは七宝焼きで美しい。何するものともなく買ったが、あとでケースの品名を眺めたら、
「ピル・ボックス」
とあって、なんだ、そういえば避妊薬のみならず、クスリを携帯するのに適した函である。
アメリカの女は、こういう美しい函にピルを入れて、それをハンドバッグの底にしのばせるのであるか。
「日本やったら何でっしゃろ」とカモカのおっちゃん、「やっぱり、コンドームでっか」
「いやそれは……」と私は赤面した、「玄人衆とちがいますか? 素人のOL、家庭婦人、女子学生はまさかそんなことはありますまい」
「しかし、いざ出撃、というときには、やっぱりもっていくのとちがいますか」
「特攻隊やあるまいし。その用意は殿方でするものとちがいますか、いうならヨロイカブトは男のものでございますからね」
「男はそこまで気ィ使《つこ》てられまへんわ」
といい合いになった。
「しかし、家を出るときに、ですね、今日あたりは、万一、ひょっとして、もしかしたら、という予感みたいなもの、期待、武者ぶるい、虫のしらせ、見通しみたいなものは、あるんでしょ、男が女とあうときは」
「それはまァ、ありますな。ハッキリ、そのつもりで出ることも無論、ありますが」
「するてえと、そういうとき、男は何をもっていきますか? 男の出撃には」
「まず財布でしょうな」
「あッたりまえでしょ」
「それからカミソリ」
「また、用意周到ね。ホテルに備えつけはないのかしら」
「ヨソのもんは衛生にわるい。下着、靴下をとりかえてきますな」
「そんなところですか」
「最大の準備は、女房《よめはん》をだまくらかすことです」
「それはもう」
「車もってれば運転免許、キイに地図、しかしまァ、女房へのいいわけと財布、男の出撃準備はこの二つに尽きますな。女はどうです」
「女は」
といいかけて私はハタとつまった。私は出撃したことがない。
「失礼な。そういう女だと思うんですか、しかしまァ想像してみるに、まず化粧道具、これは顔を洗うとファンデーションから流れますから、ふだんより本式にもっていかねばなりません」
「なんで顔洗うねん、洗うことないがな」とカモカのおっちゃんはしつこくいう。
「知らんけど、それからチリ紙。向こうへ着いてからフロントヘ電話かけてチリ紙もってきて下さいというのは心臓に毛が生えないといえない」
「よう知ってはる」とおっちゃんは鼻白んだ感じ。
「チリ紙屋するのかと思うくらいもってゆく人もあるかもしれません。それからハンカチ、これは指環や腕時計をくるんでバッグヘしまうため」
「なんで指環や時計をはずすねん」
「知らんけど。それから手帖。たいがい、女の手帖には×や○がカレンダーの上についてる。これは日ニチを勘定するためです」
「なるほど、オギノ式」
「それから針道具。ひょっとして服の裾とか袖つけが破れた場合、応急処置をするためです」
「何で破れるねん」
「脱ぐまで待てないようなセッカチの男もいるでしょうし」
「いやはや」
「しかし、最大の準備は、男が女房をだます如く、女はオギノ式で指折って数えるか、あるいは他の方法でしょうね。クスリのご厄介になる人もあるかもしれない」
「だんだん、いやになりますな」とカモカのおっちゃんはいった、「そういう作為的に準備して出撃するというのは現代人のいやらしさの最たるものですな、意気投合してパッとハプニングが起る、という、そういう大らかな男と女の関係はないもんやろか」
そんなハプニングを起されたら、女はたまったものではないのだ、ほんとうはそんな方が人生で意義あることなのであるが、現実はいかんともなしがたい。オギノ式の日ニチはともかく、化粧品も足らない、下着も更えてない、ゆうべ髪を洗いそこねた、ホテルの風呂のシャンプーはいつも使っているのとちがう、などと、当惑することばかり。何ごとにも準備や支度はあらまほしきもの。やはり前もってスケジュールを示しておいてほしい。
女というのは、いいかげんスケジュールをきめられていても、当日はいろいろと差し障りの多いデリケートな生きものである。いざ出撃とパンティからガードルからスリップからドレス、つけ終ったころに、突然、月に一度の日をまちがえたお客さまが来たりして、また脱ぎ直したりしなければいけない、その煩わしさと手つづきの小むずかしさは、男には到底わからないことである。それに、何にも差し障りがなくても、用意してるうちに、急に出撃がおっくうになる、何のために、あんな男と会戦せねばならんのだ、などと思い出すともういけない、さればといって、では出撃中止するかというと、これも何やら心のこりである。女の心理と生理は複雑なのだ。
出撃直前というのは、特攻隊員もかくやと思うほど、千々に心がみだれるものなのだ、出るもゆううつ、出なくてもゆううつ、
「いったい、ほんならどないせえ、いうねん!」
とカモカのおっちゃんはいうが、女のせりふはたいがい、こうである。
「バカ、わからないの! 結婚してくれればいいのよ!」
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