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女の長風呂55

时间: 2020-06-25    进入日语论坛
核心提示:酒  色林間、紅葉を焚《た》いて、酒をあたためるべき季節である。紅葉の枝を折ってお燗をつけましょう。お酒があたたまるあい
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酒  色

林間、紅葉を焚《た》いて、酒をあたためるべき季節である。紅葉の枝を折ってお燗をつけましょう。お酒があたたまるあいだ、木蔭の椅子に坐って「五木寛之作品集」を読んだり、折々は書を伏せて、帽子をかぶってヤスを携え、ツチノコをさがしにいきましょう。であるが、私の家には焚くべき紅葉の枝もなく、木蔭の椅子もないのだ。仕方ないから台所でガスをつけて酒をあたため、ツチノコの代りにカモカのおっちゃんがきたから、酒をごちそうしましょう。
お酒のあったまるあいだ、
「酒色、といいますが、やはりペアになってるべきもんですなあ」
とおっちゃんはいう。
「ああいうことは、酒なしには、あほらしてできん。素面《しらふ》でやるやつの気がしれまへん、どんな顔してあんな恰好できるねん」
「おっちゃんは飲んでヤルほうですか」
「むろんです。しかし、これがしばしば、飲みすぎてできんようになるんで、困りまんねん」
飲まなきゃやれぬ、飲めばできぬ、どないせえ、ちゅうねん、いったい。
いっぺん、飲まないで、その道ひとすじにいそしんでみたらどないですか。
「はずかしいこと、いわんといて。酒も飲まんと、どっち向いたらええねん、あたまは冴えてる、目はパッチリ、麻雀の借金も家のローンもみな明晰におぼえとんのに、女の体に手ェかけて、チョネチョネ、やってられまっかいな」
すると、酒飲んで、そういうことを一切忘れ、酔っぱらって酔眼朦朧でヤル、というのはつまり、酒の力を借りて、ムリにその気になるように、気のすすまぬものをかり立て、そそり立てる、催淫剤といいますか、媚薬といいますか……。
「そらあたりまえです。アレは正気の人間にやれるこっちゃ、ない」
とはひどいが、また再び、「婦人生活社」の原田社長に登場していただくと、氏は、恋愛のチャンスに恵まれぬ若い娘に、恋愛発生のコツを左の如く、教唆《きようさ》しておられる。
一つは、太陽光線のないところである。電灯のほうが、「うつつごころ」を消すのによろしいという。
二つは不規則な時間だという。つまり、日常次元の時間ではないとき。深夜、早朝、それから会社の勤務時間外のとき。
三に、家族がいないところ、という。
これはまことに適切な助言であって、原田社長は遊び人ではないからこそ、岡目八目で、男女の機微に通じることがおできになるのだろう。
ところで、これは、恋愛と構えるまでもなく色ごとにも通じるのはいうまでもない。ただ、色ごとということになると、も一つ、起爆剤が要るのであって、それが、カモカのおっちゃんにいわせれば、酒だというのである。
しかしそれでは、酒を飲まぬ人は、どうなるのだ。毎日、素面の人はどうすりゃ、いいのだ。
「さいな。それが僕にもわかりまへん。たとえば僕らやったら、この女とナニしようとすると、まず、洒を飲む、ええ|こンころもち《ヽヽヽヽヽヽ》になって口もほぐれ気もかるく、冗談を叩いたり、チョッカイ出したり、ゲンコツ見せたり……」
ゲンコツを見せてどうするのだ、空手の型でも見せるのかしら。
「いや、その……いいにくいな、今晩、どうですか、とゲンコツを見せる」
いよいよわからない、今晩とゲンコツとどんな関係があるのだ。
「いや、そこまでいうてわからんのか。学校で何習うとんね……つまり、ゲンコツの拇指《おやゆび》はたいてい外側に出てますわな」
私、わが手でゲンコツを作って、つくづく見る。
「ウン、外側へ出てる」
「その拇指を中へ入れて握る」
私、そうする。
「こんどはそれを人さし指と中指のあいだから出して見なはれ」
あほらしい。
「ま、そういうゲンコツを見せたり、すると女が、バカン……と僕を叩いたりしまンな」
そりゃそうだろう。
「そうして押したり引いたりするうちに、何となく、ムードができ、これをしも酒色という、たいがい歴史の本読むと、古代の帝王で暗君、馬鹿殿様というのは、『酒色に溺れ』と書いたァる。そら、やっぱり、色ごとと酒はひっついてるもんです。もし素面なら、僕はもう、十四、五の中学生みたいに堅《かと》うなってしもて、ゲンコツなんか、あべこべに見せられたら泣き出してしまう」
しかし酒飲まぬ御仁は、端然と危坐《きざ》し、
「どうかね? エ? 今夜」
と詰問口調になる、のではないかとカモカのおっちゃんはいう。
かりに、話がついて、結構なる美女と、結構なる場所へいくとする、咳払いなんぞして床に横たわり、じーっと、眼光するどくあたりを見廻し、美女の一挙手一投足を値ぶみするごとく見る、あるいはせいぜいチューインガムをかみつつ、一、二、三、と徒手体操になっちまう。酒気がなけりゃ、
「色気もヘチマもおまへん」
とカモカのおっちゃんはいう。
お酒があったまってきた。徳利からついで飲む。おっちゃんにもついでやる。
「ああ、おいしい」
酒が熱いせいか、胃袋までずうっと入ってゆくのがよくわかる。
「『胃袋のありどこを知る熱い酒』ってね」
「胃袋どころか、男はずうっとその下までいって、竿の先っちょまでいくのがわかる」
「まァ」
優雅なる私は赤面してるのに、おっちゃん尚《なお》も図に乗り、
「女の熱い酒は胃袋の下をずうっとずうっと下って、これは先で二つに分れる」
「キライ!」
「ソレ、そうやってチョネチョネして、今晩どうですか? といえるやろ、やっぱり、酒色はペアになってるもんですな」
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