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女の長風呂59

时间: 2020-06-25    进入日语论坛
核心提示:不 当 表 示赤不二夫サンの『週刊文春』連載のマンガが大いに気に入ったカモカのおっちゃん、私の家へやってきて、私が酒を出そ
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不 当 表 示

赤不二夫サンの『週刊文春』連載のマンガが大いに気に入ったカモカのおっちゃん、私の家へやってきて、私が酒を出そうとしていると、
「いや、メシだ!」
とのたまう。メシを出そうとすると、
「いや、酒だ!」
酒を出そうとすると、
「いや、メシだ! いや、酒ダァ!」
うろうろする私に悦に入って、
「このとんまめ。虫! ブス虫!」
「私、虫じゃありません」
「虫が人なみなこというな! アハハ、ブス虫をからかうとおもしれえなあ」
「バカッ! 図にのるなッ」
と私は一喝、おっちゃんのあたまを撲《は》ってやった。マンガを読んで早速、その通りしゃべりたくなるなんて、じつに男というものはあさはかであるよ。
「いやしかし、あのマンガは男にはビンビンくる」
とおっちゃんはいう。つまり、どんなマンガかというと、人《にん》三|化《ばけ》七という、七分がた化物みたいなブスの女房、顔見るのも腹立つくらいの奴、車にはねられて死んじまえ! といいたくなるような奴、こんな女房にいいたい放題、亭主関白のワガママの限りをつくしていじめる男が、酒を飲むと、酔眼モーローとして女房が絶世の美人に見えて感激、ひたすら低姿勢という、そんな筋のマンガであった。
おっちゃんにいわせれば、あんまりほんとすぎて、男には痛いくらいなんだそうである。
しかしこれは、男が勝手に錯覚おこしているわけだから、不当表示ということにはならない。女がわるいわけじゃない。男は、女に対して錯覚をもちつづけ、本体とはべつのところで怒ったり喜んだり、していることが多い。
自分の体調や都合で、女を勝手に自分の好きなようにこね上げる。もしそれ、あたまのいい女がいて、男の錯覚を利用して、その通りにやれば、男はもう、大感激である。
しかし大かたの女、あたまはよくても、めんどくさい。男の錯覚にのっかって「あなた好みの女」なんぞになるのはじゃまくさい、という気がある。しようと思えばできるけど、なんでそこまで男の機嫌をとらんならんねん、という気がある。恋人同士のいさかい、夫婦ゲンカ、みんな女が「なんでそこまで……」と、めんどくさがるから、起るのだ。
それに、男の錯覚が、本体からかなりかけ離れていることからも起る。
しかし近ごろは、女の方の責任も出てきた。あきらかに不当表示の女が多くなった。
カマトトというのも、一種の不当表示であろうが、これは無智・無垢・無邪気をよそおうのである。当今はこんなタイプは少なく、トトカマというか、その逆の、処女でいながら、あばずれをよそおうのが多い。これはややこしい。男が混乱するのも無理はない。
昔は「耳|年増《どしま》」なんて粋な表現があって、智識だけはふんだんにある女のことを、そういったが、いまはとてものことにそんなやさしげな風情ではないのである。
この頃の女は実戦の経験はそんなにないのに、いろんな本を見、写真、フィルムに接し、話を聞き、紙の上でその道の大家になり、耳学問で性のテクニックに長じ、何を人がしゃべっても、
「知ってる」「聞いた」
というつらにくさ、指使いまでしてみせて仕方ばなしも堂に入り、肥満型むき、倦怠期むき、妊娠中むき、不能気味むきの体位に通じ、避妊方法からお産の心得までそらんじている。ペーパードライバーというものがあるとすれば、「ペーパーあばずれ」である。
このペーパーあばずれ、「知ってる」「聞いた」を連発して、いっかどオトナぶってるが、士官学校出たての少尉が、実戦経験豊富な、千軍万馬の伍長あたりに鼻であしらわれるのと同じで、ほんもののオトナにかかると、馬脚をあらわして可愛らしい。
「お湯につかりながら海を見とうないか、風呂の中まで夕日に染まるねん、海っぱたの温泉ちゅうのは、ちと、風情があるもんやで。車やったら一っ走りです」
なんてうまくオトナの男に誘われて、やっぱり、ウカウカとついていったりする、夕日の見える浴室で大いにはしゃいでたら、そこへオトナの男がはいってきて、「ああ、ええ湯やなあ」ととびこみ、ペーパーあばずれはガタガタ震えて、何しろハダカの男を見たのははじめて、なんていうしまらない奴。ダダをこねて、
「オウチへ帰りたい」
と泣いたそう。
「そのオトナの男っていうのは、カモカのおっちゃんとちがいますか?」
と聞いたら、おっちゃん手を振り、こうのたもうた。
「僕とちゃいま。憚《はばか》りながら、これでもペーパーあばずれとほんもののあばずれぐらい見分けつきます。ダテに四十男の看板かけてるわけやない。僕は、あばずれは好きやけど、ぺーパーあばずれはきらい」
男にもペーパープレイボーイがおり、いざ実戦に及ぶと、女がそばへ近付いただけで震えが来て、志に反しあえなく発射してダウン、甚だしまらないのがいる(そうである)。
すべてレッテルの不当表示はオトナの紳士淑女のとるべきことではない。相手が勝手に錯覚しているのならよいが、実体と看板をかけちがえて、世人の目をくらまし、あざむくのはおとなげない。総じて、コテコテ策を弄《ろう》し、ヒネたことする奴はダメ。人間というものは、大物ほど素直で率直で、かざりけないもんだ、何べんいうたらわかるねん、あほ。
ところでおっちゃんにいわせると、不当表示の最たるものは学生運動家だという。
革マルといい中核という。殺し殺され、やればやられる、報復、仕返し、ヤクザの喧嘩《でいり》とかわらぬ。これを角丸組、忠加久組とでもすれば、いかにも血の雨ふらす出入りの場にふさわしい、とおっちゃんはいう。
もしそれ、あくまで革マル、中核などと、学生の政治運動らしき看板をかけるとすれば、
「ケンカするひまに、革マル、中核、どっちがどない、理論的にちごてんのか、それをもっと世間に分りやすう知らしたらどやねん。縄張り争いしてるだけやったら、角丸組、忠加久組にした方がレッテルの良心ちゅうもんじゃ」
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