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花の百名山22

时间: 2020-06-26    进入日语论坛
核心提示:石割山  オオバギボウシ(ユリ科) 晩秋から初冬にかけての山歩きは、落葉の匂いの中に身を沈めてゆく。木々の新緑の匂いにも
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石割山  オオバギボウシ(ユリ科)  
 
 晩秋から初冬にかけての山歩きは、落葉の匂いの中に身を沈めてゆく。木々の新緑の匂いにも甘さがあるけれど、落葉にもある甘さは、樹木そのものの中に、甘さがあるということだろうか。ふと、口に入れて味わって見たい気になる。
三月から四月にかけての山みちをなお埋めている落葉には、もうその甘さが失われている。
生藤山を歩いたのは十一月二十五日。桜の落葉の上にナラやクヌギの葉が降り積もっていた。むせぶような甘さが地から湧き上るようであったのは、花や実にふくまれる蜜と同質のものが匂いにこめられていたのだろうか。
十二月十九日、|石割《いしわり》山を歩いた。富士山の北と東の裾野をとりまいた湖水をさえぎる御坂山塊が南に下って、桂川と道志川の谷で分断されたような形になっている。その一端に御正体山、石割山、三国山が、悠然としてなだらかな稜線を連ね、若々しく鋭い富士山の山容との対比がおもしろい。
中央高速を走り抜けた車は、吉田から東進して山中湖畔の平野町まで、湖の南岸をめぐる。かつての鎌倉街道で、谷村を通って甲府に至り、一方に御殿場から小田原へと通じている。
武田勝頼の許に嫁いで来た北条氏の姫は、|輿《こし》にゆられて、はるばると旅をして来たとき、この山中湖畔にしばし休んで、さざ波をたててゆれる湖面に、ふるさとの海をなつかしんだことであろう。
武田勝頼は、谷村の城主小山田信茂が叛いて、甲州街道の笹子峠に柵をきずいて退路を断ったことから、|初鹿野《はじかの》の奥の天目山に入って、妻を殺して死ぬ。湖畔の道を、姫は、二度と通ることはなかったのである。
石割山は平野の町並みを外れ、道志川の谷沿いにゆく道と新井でわかれて、すっかり落葉しつくした雑木林の中を辿ってゆく。ところどころにブナの大樹が、白々とした樹肌をかがやかしている。
御坂山塊も、石割山も、古い海底火山の名残りであるという。
湖畔の標高は千メートル、可成りの急傾斜なので、割りに早く頂上が間近となったが、行手をさえぎるような巨岩があらわれ、そのもっとも大きなものが割れていて、そのそばに神社があった。
罪障深いものは、その割れ目を通れぬとされている。九州の若杉山にも同じような場所があって、そんなバカなことはないと思っているのに、やはり、その狭い岩と岩の間をくぐり抜けるときは、不安のようなものが心をよぎった。こちらの方が九州のよりずっと広く、短いので、今度はわらいながら通り抜けた。
古くもろくなった花崗岩が、割れ目に沿って、霜の力などで引き割かれたものであるという。
一四一〇メートルの頂上の展望は、思わず声をあげて叫んだほど素晴しかった。送電線がいささか邪魔だけれど、西に聖岳、赤石岳、荒川岳から、塩見、農鳥、間ノ岳、北岳、仙丈、甲斐駒と、三千メートル級の山々が、きらめく銀嶺となって初冬の青ぞらにそそりたち、並びたっている。
北には八ヶ岳連峰、金峰から国師、飛龍、雲取とつづく秩父山塊、東には丹沢から道志の山々、南に箱根連山。すぐ眼の前に、新雪の富士。御坂山塊が河口湖の向うに、富士出現の以前から地球の歴史の証人のように、どっしりと根を張っている。富士は日本一の高山だけれど、御坂山塊の重厚な姿にくらべると、いかにも若々しい。青年と老人が並び立っているようにみえる。
風のない日で、一面のススキ原の中は、小春日和のあたたかさであったが、私は、茅くさの葉の匂いの中に、ほのかに甘酸っぱく匂うもののあるのを知った。自然歩道の大平山へと辿る道を左に見て、二十曲峠へと右に下る山腹が、オオバギボウシの花がらの大群落なのであった。その花の残り香であったろうか。
フジアザミもいっぱいある。オヤマボクチもハコネバラもあるけれど、ギボウシが一番多い。みごとなまでに背が高い。
いつか丹後の宮津半島の根もとの大江山に登った時、北面の山腹でオオバギボウシの群落の花盛りに出あったことがある。
かつては湖水であって、いまは、そのあとを幾つかの湧水池にとどめる|忍野《おしの》にむかって、長い長い田圃の中の道を歩きながら、今度は花の頃に是非もう一度、石割山のオオバギボウシを見に来ようと思った。
忍野は自衛隊の北富士駐屯地のあるところで、アメリカ軍が北富士演習場として使用した富士山麓の草地をめぐって、主婦たちが、身を挺しての反対運動をつづけたことが記憶に新らしい。
母国の名峰の麓を戦争行為の演習場にはさせない。そんな心意気につながるのであろうか。
忍野の手前の道路沿いの寺の前に、五十近い、同じ型の同じ大きさの墓石が並んでいた。墓地に入って一つ一つを見た。墓碑銘の上に純忠、誠忠などの文字がある。この町出身の第二次大戦の戦死者の墓なのであった。ことごとく富士に向かって立っている。
若ものたちの死のきわのまぶたに、富士はどんな形で描かれたろうか。そんなゆとりさえない無残な死におそわれたものが多かったはずである。
若ものたちはもう富士を見られない。オオバギボウシも見られない。そう思った時、生き残って、山などのうのうと歩いているのが申訳なくて、ごめんなさいと口につぶやくと涙が溢れ上って来た。
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