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花の百名山48

时间: 2020-06-26    进入日语论坛
核心提示:雌阿寒岳  メアカンフスマ(ナデシコ科) 雌阿寒、雄阿寒と阿寒湖を間にはさんでむかいあう二つの火山の姿にはじめてであった
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雌阿寒岳  メアカンフスマ(ナデシコ科)  
 
 雌阿寒、雄阿寒と阿寒湖を間にはさんでむかいあう二つの火山の姿にはじめてであったのは、戦後十年位たってであろうか。うばわれた北方領土をノサップ岬から遠望して、「日本の岬」という題のラジオドラマを書くための旅の帰途であった。千島から引揚げた漁民たちが、既得の漁場もないままに、流れ昆布を拾って生活している嘆きを聞き、敗戦の悲しみを新らたにしていたので、釧路から阿寒湖にむかう車の中から、千島列島と同じく、千島火山帯に属する雌阿寒や、雄阿寒の山容を間近にして、「国破れて山河あり」の思いが深かった。
殊に雄阿寒は、典型的な成層火山で、富士と似た山容が、却ってものあわれさを誘った。
その頃はまだ阿寒湖周辺が、今日のように、安手で極彩的な開発の害を受けること少く、その夜、湖畔の宿で食事して、折からの満月に、ボートを漕いで湖上を一周すると、月影を背にして、霧をふくんだ夜気の中に、雄阿寒が物言わぬ巨人のように暗鬱な表情でしずまりかえっていた。
雄阿寒の頂上からは、知床の山々が見えるという。その向うの国後の山も見えるのではないか。いつか登りたいと思いながら、いつもそのかたわらを過ぎるだけとなり、雌阿寒の方に登る機会を先にとらえた。
鳥海山のチョウカイフスマを見た翌年、同じ仲間だというメアカンフスマを見たくなったのである。
チョウカイフスマは雨の日の、まだ半ば雪に被われた鳥海湖のほとりの砂礫地の中に見出し、雨にぬれながらひざまずいてスケッチした。
ほとんどの野草山草の好きな私であるけれど、なぜかナデシコ科の花がとりわけ好きだ。
カワラナデシコ、タカネナデシコ、フシグロセンノウ、センジュガンピ、タカネミミナグサ、タカネツメクサ、イワツメクサ、タカネマンテマ、シコタンハコベ。どれもこれも言いようもない好ましさだ。チョウカイフスマは新らしく知ったナデシコ科の花である。雌阿寒岳に咲くというメアカンフスマも見てみたい。高山植物の本には、チョウカイフスマの下にカッコして、メアカンフスマとあり、生育した山の名がちがうだけの同種のものであるらしい。
前夜はいつもの仲間と麓の雌阿寒温泉に泊った。
エゾマツやトドマツやアカマツやオンコやブナやハルニレ、コナラ、ミズナラなどがしげりあう原始林にかこまれていて、あの阿寒湖のまわりの賑わいが間近いとは思えぬしずけさである。
翌日の天気予報は午後になって風雨とあったので、早朝の五時半に出発。密林の中の湿地帯を急いで登る。小雨がぱらついて来たが、鳥海山のときと同じに、とにかくメアカンフスマの咲くところまでと、針葉樹林帯の中の高度をあげていった。山腹をまきながら登るので、小さな谷を幾つか横切り、五合目をすぎる頃から這松地帯となって、下草にミネズオウやガンコウランを見つけた。
メアカンフスマはまだかまだかと、ようやく傾斜度を増した急坂に、息をあえがせながらゆくと、雨だけでなく、風も加わって、真夏なのに手先がかじかむ程寒い。
大きな這松なので、そのかげに風をよけながら、あと一息で外輪山の稜線にとりつくというところまで来て、上から下りてくる五、六人の若い娘さんたちにであった。朝四時のまだ、ほの暗いうちに出て頂上を目指したけれど、霧と風で何も見えず、吹きとばされそうなので下りることにしたという。
雌阿寒のあくる日、私は北見に用があるので、その娘さんたちにあった地点から逆もどりすることにした。もうメアカンフスマもあきらめよう。這松のかげからかげへと走りこむようにして下りてくると、それが七合目のあたりであったろうか。道ばたの岩のかげに、あのエメラルドグリーンの葉の塊が見え、あの五弁の純白の花の幾つかが咲いていた。
——あった。
そのうれしさ。鳥海山では御浜神社の上の砂礫地の間に点々と群がっていたのだけれど、ここではその一かたまりの花だけ。でも、たしかにあった。見た。満足した。そして同じだとは言われながら地味のちがいか、気候のちがいか、メアカンフスマの方が葉の大きさに対して、花の部分が小さいように思え、チョウカイフスマにくらべて少し地味な感じがした。
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