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花の百名山54

时间: 2020-06-26    进入日语论坛
核心提示:白山  ミネズオウ(ツツジ科) 加賀の|白山《はくさん》は、高山植物の名を覚えはじめた時から気になっていた。ハクサンシャ
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白山  ミネズオウ(ツツジ科)  
 
 加賀の|白山《はくさん》は、高山植物の名を覚えはじめた時から気になっていた。ハクサンシャクナゲ、ハクサンイチゲ、ハクサンチドリ、ハクサンフウロ、ハクサンコザクラ、ハクサンボウフウ、ハクサンオミナエシ。それらの花は浅間高原の池ノ平で出あい、立山の弥陀ヶ原で見つけ、大雪山の黒岳で、戸隠の中社でさがし出したのに、皆、ハクサンの名を負っている。それほど古くから白山はひとびとによって登られ、そこで見出した花の美しさをひとびとは忘れかね、よその山にいって、同じものを見つけて、ハクサンの思い出をその花の名に托したのであろう。
大分前に、福井の平泉寺をたずねた時、そこに併設されている白山神社を見た。昔のひとは、このお宮に詣ることを白山登山の第一歩としたのだと聞き、その長い路を思った。白山にこめる情熱を思った。そして、時間と体力が許せば、その日、そのとき、白山神社の|苔生《こけむ》した石段を登って、自分も社殿の奥の林の中に、今も細々とつづく道を辿ってゆきたかった。
白山の白々と雲の果てに浮ぶ姿をはじめて遠望したのは、もう二十年近い昔の六月である。
美女平から歩き出して室堂から立山に登ったとき、はるかなる西の方にまだ雪のかげを残す秀麗な山容があった。
立山から槍ヶ岳まで歩き通した岩尾根の道々で、白山は朝も昼も夕近い時も、いよいよ近く鮮やかに眺められ、まさに純白の峰の姿であった。
毎年の冬、多くの若ものたちが、白雪の岩山に青春のいのちを奪われる。白といういろは不思議な思いをひとの心にかきたてる。その白さに浸って、身も心も白のいろにまぎれこみたい願い。白は無のいろである。空白の空。何ものも介在させない真空の空。ひたむきに白にあこがれるのは、ひたすらに若く、心にも身にも、もっとも純真なるものを求め願う青春の特権であるのかもしれない。先ず、おのれを純白の境涯に埋めて、そこから生きる第一歩の決意を固めたいと思う。雪山で死んだひとびとの死が、数ある遭難の中でも、とりわけいたましく思えてならないのは、雪に魅せられた心の一筋さがいとおしいから。
白山の早々と雪をいただいた姿は、九月の末の乗鞍の頂きでも見た。
そして雪よりもとにかく花をといつもの仲間と金沢から登ったのは数年前の七月である。
昼間の列車で着いたその日のうちに白山温泉へ。一泊して午前四時出発。白山の高山植物を一つでも多く記録しようと砂防新道をいった。
先ずミヤマシシウド。背丈も二メートルほどで純白の花盛りである。栄養豊かとも言いたいヤマハハコの白もむくむくといっぱいの花をつけている。ノリウツギの白。珍らしいセンジュガンピの白。いつもピンクのシモツケを方々の山で見るけれど、ここでは北海道のようなオニシモツケソウの白。シギンカラマツやモミジカラマツの白。ヒロハノユキザサも白い花である。
白山だから特に白が目立ったのではなくて、これらの花々が大量にあるということに眼を見張らされた。黄いろのキオン、コガネギク、タマガワホトトギス、オトギリソウもたくさんある。そして遂に二千メートルあたりを越え、シラカバ、ダケカンバ、ヤマハンノキ、アオモリトドマツ、コメツガ、シラビソの樹林帯にわかれた草原地帯に来て、ハクサンの名を負うサクラソウ科の可憐なハクサンコザクラに見参した。妙高高原でも見たことがあるけれど、やはり白山で見ると、ここがこの花のふるさとのような気がしてくる。
午後一時室堂に着く。小屋の周辺はハクサンコザクラの大群落であった。ミヤマキンバイもミツバオウレン、バイカオウレンもハクサンフウロもある。イワカガミも、ダイモンジソウもミヤマリンドウもニッコウキスゲもノハナショウブもあって、さすがは花の白山の名に恥じぬ豊富さだ。翌日の午前二時、御前峰に御来光を見に登る。
晴れた星空であったのに、星の一つ一つが消え、東の空が明るくなり、薄紅いろの雲がたなびいて、今こそ太陽をと息をつめて見守る大ぜいの前で、雲は薄紅があせて白銀のいろとなり、見る見る薄絹のようにとけて、剣ヶ峰と御前峰の間の谷々に舞い下りて来た。
私は山を御神体とも思わず、山のてっぺんで万歳を叫ぶ趣味は毛頭持たない人間だけれど、この天女の衣のような薄絹の舞いに、ひとびとが万歳の声をあげたとき、いつか自分も拍手していた。
大汝峰との山あいの、まだ十分に雪渓のあるお池めぐりでは、砂礫地にイワヒゲ、アオノツガザクラ、ミヤマウイキョウ、ハクサンボウフウ、コケモモを見た。私にとってははじめてのミネズオウも知った。ヒメシャクナゲよりも更に小さいこの潅木が、この小さい花を咲かせるまでに、発芽して何年かかるのか。この細い幹は数十年も生きることができるのだという。
帰途は大白川村まで。
数日前に熊が出たという長い長い下りの道で見た花の名はアカモノ、ミヤマセンキュウ、ハリブキ、グンナイフウロ、キツリフネソウ、イワオウギ、チングルマ、ベニバナイチゴ、ヤマブキショウマ、オオバギボウシ、バイケイソウ、コバイケイソウ、マルバダケブキ、ウサギギク、クロトウヒレン、クロユリ、クロクモソウ、オタカラコウ、メタカラコウ、ヤグルマソウ、サンカヨウ、ギョウジャニンニクなど。そして、私の好きなハクサンチドリよりは、テガタチドリの方がたくさん目についた。
白山。遠いはるかな白い峰は、匂いたつばかりの花の山であった。そして真夏になお雪もゆたかであることは、いかにこの山の冬が長いかを思わせ、冬が長くきびしければこそ、この山いっぱいの花々が、それぞれのいのちを強靭に、したたかに咲き誇っていると教えられた。
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