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花の百名山59

时间: 2020-06-26    进入日语论坛
核心提示:弓折岳  ムシトリスミレ(タヌキモ科) いつ、どこの山へいっても、また来たいと思い、一つの山に登って帰ってくると、すぐ次
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弓折岳  ムシトリスミレ(タヌキモ科)
 
 いつ、どこの山へいっても、また来たいと思い、一つの山に登って帰ってくると、すぐ次の山を考えている。
どんなに親しいものとの別れにも、あまり涙はこぼれないが、もう二十年も前、大腿骨骨折をして、松葉杖をつきながら、飛騨の高山から高原川沿いに|蒲田《がまた》温泉にゆき、せめて前の年に登った西鎌尾根の稜線を見たいと、蒲田川の谷筋の道を新穂高温泉にむかってとぼとぼと歩いていったとき、前方に鋭い起伏をくりかえして槍ヶ岳に|這《は》い上ってゆく岩尾根が見えはじめると、矢庭に涙が溢れ上って来た。先ずなつかしさの涙。そしてもう二度とこの足は、あの尾根道を|辿《たど》れないと思ったとき、悲しくて悲しくて、全身の毛穴から涙がふき上るような気がした。
足がなおるとすぐに又、同じ道へと志したが、時間の都合で立山からではなく|有峰《ありみね》から入り、|双六《すごろく》を経て、飛騨の高山に出た。
|弓折《ゆみおり》岳は、双六から槍に向かう道から直角に別れ、ワサビ平から新穂高温泉に向う途中の二千六百メートル弱の峰である。
右に進めば|抜戸《ぬけど》、笠ヶ岳を過ぎて槍見温泉に到達する。
ワサビ平から登ってくれば、双六小屋の小池氏がつくった小池新道を通り、蒲田川の水源を求める形に、ひたすらに巨岩の重なり合う河原を登りつめて鏡平に着き、たたえられた池の面に、槍や穂高の影の逆さに映るのを眺めることができる。更に急坂を一気に登れば、弓折岳のすそになだらかな草地がひろがっている。
山の名にはそれぞれの意味があろうが、私は私なりにこの弓折岳の名を、文字通りに弓が折れたと解釈して、それにふさわしい場所だと思っている。
有峰から来ても、槍を通って来ても、ワサビ平から登って来ても、この頂きにくるまでにはかなりな労働が必要とされる。まさに、弾丸も尽き、弓も折れた形で、どさりと草のしとねの上に、大の字なりに引っくりかえりたい地点である。それでいて見返れば過ぎて来た道のすべてが、それぞれに特徴のある山容を重ね合せて一望の下に見わたせる。
左俣谷の迫り合う大きな斜面の前方には、槍から穂高の峰々が峨々たる峻嶺を連ね、鳥も通わぬと昔の山の民をおそれさせた滝谷の、息をのむばかりの険崖もすぐ眼の前に、容易には人をよせつけぬ鋭さを誇っている。
何よりもこのあたりは、辿りつく人も少いせいか、花が多い。
私のいったその年は、コバイケイソウが花を咲かせる年であったらしく、双六池を上って、弓折にと登る道は、コバイケイソウの白い花々の大群落であった。ミヤマキンポウゲやミヤマダイコンソウの黄の花がまた、びっしりと群れをなしてコバイケイソウの花の白と重なり、ウメバチソウなどもむらがるようにして咲きさかっていて、その中にホソバトリカブトの紫やハクサンフウロの赤が点々といろどりをそえている。
連れは息子という気楽さもあったが、私はしばらくはその花の大群の中に身をおいて、山を眺め、花に見入り、このまま夜となって、ここで野宿できたらどんなに仕合わせかと思った。足がなおって、ふたたび山に来られた仕合わせもありがたかった。滅多にこぼれたことのないうれし涙さえにじんだ。草の丘に、仰むきに寝ながら、ふと自分の顔の横にこそばゆくふれるものを感じた。ムシトリスミレの粘っこい葉の群れに頬を埋めていたのだ。ムシトリスミレはスミレではない食虫植物である。小虫を取ってとかして吸収するのが特性の花は、たとえ人間であろうとも、異物に対しては容赦しない。及ばぬながらも全力をあげて挑もうとするのではないか。
山には山の生きものの掟があるのだ。一年で一番気候のよい時期に、花のいっぱい咲いているときに花を見に来て、山と自分がまるで一体、一つのものでもあるような溺れかたをしている。このいい気な人間奴。ムシトリスミレの花のことごとくが一歩も人間を踏みこませぬ自然の|埓《らち》を、その小さい花びらにこめてたちむかって来たら。おそろしくなって立ち上った。
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