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花の百名山61

时间: 2020-06-26    进入日语论坛
核心提示:仙丈岳  シナノナデシコ(ナデシコ科) 仙丈岳には花が多いという。甲斐駒と併せて、北沢峠から右と左に聳える二つの山に、ど
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仙丈岳  シナノナデシコ(ナデシコ科)   
 
 仙丈岳には花が多いという。
甲斐駒と併せて、北沢峠から右と左に聳える二つの山に、どんなに久しくあこがれていたろうか。
計画の一度目は、悪天候で流れ、二度目は急性の座骨神経痛でつぶれ、三度目にようやく野呂川林道を広河原までバス。南アルプススーパー林道を歩いて、北沢長衛小屋に入ったのはつい最近の八月の半ばである。
南アルプスを特徴づけるのは、鬱蒼たる原始林とのことであったが、スーパーなどと謳う大道路開発のせいか、谷が広々としてまことに明るい感じである。
しかし私は、この明るい谷の河原で、道ばたの崖の上で、私にとっての幻の花を見つけた。シナノナデシコ。ハマナデシコに似て、花のいろがやや紫を帯び、カワラナデシコよりは肉厚の葉が、茎の上に固まって咲く花を支えていて、まことに調和ある姿が美しい。
いつか白馬の麓の蓮華温泉の庭に移植されているのを見て以来、長野県の山を歩く度、どこかで出あわないかと、眼をこらしていたのだ。
シナノナデシコの生えているところは、この強大な道路工事の終ったあとである。川原には土砂がつまれ、崖の上は削りとられたにちがいない、その新らしい土に、シナノナデシコが咲いている。
同じ中部地方の他の山々より、正しくは赤石山脈とよばれるこの南アルプスの山地に、この花が多いということなのであろうか。
娘の頃、赤石山脈の東には、糸魚川から静岡に及ぶ断層線を西のはじにおく、フォッサ・マグナと呼ばれる大きな地裂帯があり、また、中央構造線も交錯して、複雑な地形と地質を生んでいることを地理で学んだ。花に満たされているのもそのせいなのであろうか。広河原から北沢橋を経て小屋までの川沿いの道には、フシグロセンノウ、カワラナデシコ、シデシャジン、クルマユリ、オカトラノオ、クガイソウ、キツリフネソウ、センジュガンピ、シモツケソウ、サワヒヨドリ、シナノオトギリ、ヤマハハコ、アカバナ、ズダヤクシュ、ハリブキ、セリバシオガマ、ヤマオダマキ、コイチヤクソウ、カニコウモリ、コウゾリナ、サンカヨウなどがあって、忽ちノートいっぱいに花の名が並んだ。
土曜日であったので、長衛小屋の新らしい方は満員とかで、川原にたてられた古い小屋に入った。その手前に、この山の大先達である竹沢長衛さんのレリーフが巨岩に彫りこまれ、その岩の間にタカネビランジの紅の花が咲いていた。これも図鑑でしか知らない花だけれど、どこからか移し植えたもののように見えた。
あくる朝は三時半に出発。懐中電灯の光をたよりに、急勾配の山腹を辿る。シャツ一枚を素肌に着ているのだが、ほとんど冷気を感じないのは山懐のせいなのか、北よりは南があたたかいということか。
だんだん明るくなって、トウヒ、コメツガ、ツガ、シラベなどの木々が見えて来た。その下草にはセリバシオガマが密生している。更に樹間に北沢峠までのびようとしているスーパー林道が見えかくれする。長野県側と、山梨県側を連ねて、五十八・七キロをひらこうとするこの開発道路は、四十二年から建設されて、まだ成就せず、長衛小屋の前には、廃道にせよ、という大きな幕がかかげられている。
二合目、三合目と登り進んでゆき、幾組かの高校生の大きな荷物を背負っての姿を、健気だと見たり、心臓に負担がかからぬかと心配したりしながらも、足許の花がいよいよ増えてゆくのにおどろいていた。シオガマギク、エゾシオガマ、マルバダケブキ、トリカブト、ソバナ、シギンカラマツ、モミジカラマツ、サラシナショウマ、ヤグルマソウ、クルマユリなどが次から次と咲いていて、紫に白に黄に赤にといろも鮮やかである。五合目の大滝頭から右折して無人の藪沢小屋への道をとり、馬の背ヒュッテにむかうと、花はいよいよ数を増して咲きさかり、左手の山腹の流れに沿っては、クロクモソウやミヤマダイモンジソウ、ミヤマガラシなどの、水辺植物が目立った。
このあたりにはダケカンバが多く、その明るい緑の梢の間に、近々と甲斐駒がのぞいている。中央線の車窓からは北面の甲斐駒があたりを払う偉容となって屹立しているのだが、南面の姿は大きな馬の背のようにやさしい。そばにいったらどんな花が咲いていることか。明日に予定された登山が待たれた。
まだ雪を残す渓流のほとりに、チシマギキョウとコゴメグサが一ところだけ、かたまって咲いていた。標高二千六百メートルの地点である。もっと上の岩場のあたりから、雪と一緒に運びこまれたのではないかと思った。
ヒュッテから馬の背の稜線にむかう斜面の花々はまた、更に数が増し、木々もダケカンバから這松にと変っていった。
ウサギギク、グンナイフウロ、イワカガミ、チングルマ、ハクサンイチゲ、シナノキンバイ、アオノツガザクラ、イワツメクサ、タカネバラ、ミヤマキンポウゲ、ネバリノギラン、そしてクロユリ。また、センジョウチドリなど。ミヤマクワガタもハクサンフウロもあったが、ことにグンナイフウロはかつての谷村、今の都留地方を郡内とよび、そこでの発見から命名された花にふさわしく、ほかのどこで見たのより紫のいろが濃かった。馬の背を右にゆけば、丹渓のお花畑。岩場にイワツメクサ、イワベンケイ、オヤマノエンドウがあるという。鹿島槍や白馬であった花たちである。頂上にと進む這松の中には、キバナノシャクナゲ、キバナノコマノツメ、ツマトリソウがあらわれて来た。
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