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花の百名山69

时间: 2020-06-26    进入日语论坛
核心提示:白馬岳  コマクサ(ケシ科) はじめて、まだ雪のある立山の一ノ越の斜面を登っているとき、足のおそい私は、立ちどまっては上
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白馬岳  コマクサ(ケシ科)   
 
 はじめて、まだ雪のある立山の一ノ越の斜面を登っているとき、足のおそい私は、立ちどまっては上を仰ぎ、下を見下していたのだが、はるか下の方の室堂平から、一面の雪の原を横切って、数点の黒い影となったひとたちが、見る見る追い付き、あっという間にかたわらを過ぎてゆくのに出あった。
その足の早さ、その軽さと言ったらない。
私を案内していたガイドの志鷹光次郎さんが、どこのひとたちかと聞いた。
「四谷」とか「細野」とかいう地名が返って来て、電力会社にたのまれ、雨量計をしらべるために、山から山とわたってあるいているとのことである。
志鷹さんは一ノ越の稜線に辿りついた私に、はるか北東にある峰々の彼方を示して言った。
「あれが爺ヶ岳、鹿島槍、唐松、|鑓《やり》ヶ岳、|白馬《しろうま》。四谷や細野は、白馬の麓の村です」
四谷や細野は登山基地となっていて、健脚のガイドたちが多いという。
六月の晴れた朝であったが、眼の前に黒部の谷がきざまれていて、濃く緑がくろずむまでに底深く口をあけ、その対岸にそそりたつ峰々の北面は、まだべったりと雪を残していた。鋭い角度の切れ込みを見せた稜線の連なりは、白馬のあたりでたなびく雲に消え、いかにもはるけき彼方に眺められたのである。
跳ぶように早いあの脚力があってこそ、この一望の峻嶮な峰々を生活の場にできるのだと感心した。
志鷹さんは古来からの歴史を誇る立山の|芦峅寺《あしくらじ》のガイドである。これも幼少の頃から、北アルプスの山々を庭のようにして育っていて、山の花の名にくわしく、この山旅でもいろいろと教えてくれたが、白馬にはコマクサがあるのだと、雲の中の山影をなつかしそうに見やっていた。
白馬には、|安曇野《あずみの》にある穂高町に用があっての帰りに登った。志鷹さんがなくなられて数年たっていた。
穂高町教育委員会の高山氏が、三木慶介さんと一緒に、いつもの山仲間と合流した私の案内役になってくれた。高山さんはまた、私の大好きなプリンスメロンをいっぱい持って来てくれてうれしかった。
その前の日に大糸線平岩から入って、幾つかの沢を横切り、吊橋をわたって蓮華温泉に一泊。
蓮華温泉は唯一軒の木造の素朴な二階家で、いかにも山の湯という感じがする。庭にシナノナデシコが植えられていた。赤のいろに紫がかっているのが素敵だ。
翌朝はまだ星のあるうちに出発。旅館のうしろのナナカマドやダケカンバの茂りあう道をひた登りに登ってゆくと、だんだん明るくなって、オオバミゾホオズキやイワオトギリの黄の花が浮んでくる。ヤマホタルブクロやヤナギランの薄紅、カニコウモリやトリアシショウマの白もある。
栂の大樹の林の中の細い道を汗をかきかき登ってゆく右側に、朝日岳と雪倉岳が重なりあって巨人のようにしずまりかえっている。東面して、まだ谷々には雪がいっぱいある。ゆるやかに弧を描く谷底のなだらかな線は、ここも氷河地形なのであろうと思う。
しばらくして岩石の露出した斜面にとりつき、天狗の庭だと教えられた。ミヤマムラサキ、タテヤマリンドウ、ミヤマリンドウ、トウヤクリンドウ、タカネシオガマ、エゾシオガマ、キソチドリと賑やかな眺めで、いよいよ花の白馬と言われるお花畑の一端に辿りついたような気がした。
花にかこまれての一休みをしてから、白馬大池のほとりに出る。小屋と池に面した斜面のハクサンコザクラ、イワイチョウの大群落が、白に薄紅に咲き競って美しい。ムシトリスミレもムカゴトラノオも、シロウマゼキショウも群れをなしている。
小屋に荷物をおいて、白馬山頂へと辿る砂礫地は這松で被われ、その下草にリンネソウの小さい花がびっしりと咲き、ウラシマツツジは早や早やと紅葉し、ツルコケモモもガンコウランも小さな実をつけている。
小蓮華へとむかう稜線までくると、這松はもうなくなって、岩や石の間を、ヒメコゴメグサ、ヒメクワガタ、イブキジャコウソウ、キバナノシャクナゲ、ミヤマアズマギク、タカネヒゴタイ、クロトウヒレン、ハクサンシャジン、イワギキョウ、チシマギキョウ、ハクサンボウフウ、ミヤマウイキョウ、ミヤマセンキュウ、シシウド、シラネニンジン、ハクサンフウロ、タカネナデシコ、イワツメクサ、ミヤマミミナグサ、コバノツメクサ、マルバシモツケと咲きさかっていた。その華麗さ、その種類の多さは、今まで登ったどこの山よりすぐれていて、北アルプス第一の花の名所にふさわしいと思った。
コマクサもあった。ゆきすごし、また、もどって見つけた。大きな石でかこまれていたのは、だれかが、心ない花盗人からまもろうとしたのであろう。薄い紅いろにエメラルドグリーンの葉のいろが、天然の山の草と思えぬほどに技巧的である。
志鷹さんの生前に、一緒にこの花にであったら、よろこびも倍加しただろうと、ただ一度の山旅で別れたひとがなつかしかった。
下りの白馬大池から、栂池に下る石のごろごろした道のほとりにも、アズマシャクナゲ、ベニバナイチゴ、ヤグルマソウ、ミヤマキンバイ、クロクモソウ、アラシグサ、ミヤマカラマツ、モミジカラマツ、ミツバオウレン、ミヤマキンポウゲ、ハクサントリカブト、キヌガサソウ、リュウキンカ、ミズバショウ、ヒロハノユキザサ、タケシマラン、ノハナショウブ、ワタスゲと咲きつづいていて、道の悪さも歩きにくさも忘れた。夕張岳の登りに多かったズダヤクシもいっぱいあった。
私の山の会には、植物にくわしい莱綾乃さんがいて、一緒に下る道々で、さっさとすぎてゆく若い人にであうと声をかけ、「見ていらっしゃい。こんなにきれいな花を。見ていらっしゃい。下界では見られませんよ」とすすめていた。
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