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花の百名山77

时间: 2020-06-26    进入日语论坛
核心提示:鹿島槍ヶ岳  タカネツメクサ(ナデシコ科) その朝は四時半、食事前の頂上往復を目指して、まだ暗いうちに冷池小屋を出発。前
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鹿島槍ヶ岳  タカネツメクサ(ナデシコ科)   
 
 その朝は四時半、食事前の頂上往復を目指して、まだ暗いうちに冷池小屋を出発。前夜は心づくしの従業員用の風呂に入り、ぐっすり眠って体調良好であった。
昨日の午後、爺ヶ岳を下って冷池への登りにかかる頃は、雪まじりの風が吹きなぐる寒さであったが、明け方の空には星が幾つか見えていて、頂上までは晴れてくれそうなお天気である。予報は低気圧の近接を告げていた。
五時から六時にかけて、星は消え、濃く深い青一いろの空はカナリヤいろの薄黄に、トキいろの薄紅に染めかえられていって、眼の下の雲海の中から紺青の島のように山々が浮び上って来た。
一番遠く淡い紫の富士。その右手に南アルプス。その手前に中央アルプス。富士の左手に八ヶ岳から秩父。八ヶ岳の向うに太陽が昇るのであろう。
雲海が朱に黄金いろにかがやいて|燧《ひうち》、至仏、白砂、苗場など、上州の山々が、浅間、根子、吾妻など信州の山々が黒々と浮んでいる。眼を更に西に移せば戸隠や妙高から火打、焼山、雨飾、雪倉、白馬と山々はつづいて、登った山にはお早ようと朝の挨拶を、これからの山々にはどうぞよろしくと頭を下げたい思いである。
東の空の雲が太陽の昇るにつれて一いろの青に変り、山々のかげも雲海の中に沈んでゆくとき、西側の立山連峰が朱に赤に映えはじめた。毛勝三山を|脇侍《きようじ》のようにしたがえ、北の王者劒岳が、その左につづく立山連峰が、昨夜の新雪をべールのようにうっすらと|被《かぶ》って古い残雪との間に朱の濃淡のかげを見せているのが美しい。
立山から西は浄土、鬼、越中沢と薬師岳まで馴染んだ稜線がつづき、翼があれば一飛びに飛んでゆきたいばかり。数歩毎に東に西に首をめぐらし、足許には爺ヶ岳と同じように、這松の茂み、岩のかげに身をひそめて、なお薄紅の花を残すハクサンフウロやリンネソウや黄のミヤマアキノキリンソウ、ミヤマキンバイ、紫のホソバトリカブトに感激した。タカネバラの赤く大きい実もたくさんあり、オヤマノエンドウもイワオウギも豆科の種子をいっぱいつけている。タカネヤハズハハコ、イワベンケイ、エゾシオガマ、キバナノコマノツメ、ミヤマオトコヨモギ、シシウドなど、すべて黄ばんで枯れた花がらだけとなり、夏の盛りをしのばせる。
南峰到着七時半。日本海がうっすらと青|鈍《にび》いろに光っていた。
それにしても何という花の多い山であろう。頂上が近づくにつれてほとんどの花は枯れしぼんだ姿になっているのに、岩の間や、礫を押しわけて、盛り上るようにしてタカネツメクサが群落をつくっている。
つややかな緑の葉。鮮やかな純白の花。コバノツメクサもある。それらの花たちはほとんど同じような五弁の白く小さい花片を空にむけ、そのつぼみ、その葉、その茎に少しずつちがう形を持ちながら、この寒冷な高山の岩礫地が最上の生活の場とよろこびあっているように見える。小さい小さい花たちが一生懸命に咲き残っている姿が健気である。
午後四時すぎ大町発の急行で今日のうちに東京へ帰ろうと急いで下りる小屋までの道には、ゆきには早朝の暗さでわからなかったが、フジハタザオもトウヤクリンドウもヒメコゴメグサもタカネミミナグサもミヤマクワガタもわずかに花を残していて、珍らしかったのは南面の日の当る山腹に、エゾオヤマリンドウの形で、純白のリンドウが咲いていたことである。こんなに砂地や岩礫の多い山であれば、かつては白馬のようにコマクサもあったのではないかと思った。いつか蔵王の中腹で、コマクサが復原されていっぱい咲いているのを見たけれど、五十年前、百年前の山の自然のすばらしさを思いやる度に、開発の名で、急激に破壊されてゆく山が惜しくなる。
朝食をすませて十時、冷池を出る。きれいな朝焼けであったのに、いつか雲に|被《おお》われた空となって、昨夕のように雪まじりの雨が降り出したら、|大冷沢《おおつべたざわ》に向かう赤岩尾根の急な下りが辛くなる。早く早くと礫を蹴とばしてひたすらに下りつづける道の両側には、紫のオヤマリンドウやカライトソウが咲き残っていて、この山の花のいのちの長さにおどろかされた。谷を埋めてミネカエデやウリハダカエデやナナカマドやダケカンバの黄葉や紅葉がトウヒやシラベの緑に映え、なお林間に真夏の花が眺められる。
高千穂平を経て、鹿島川に注ぐ北俣本谷の水を集める大冷沢の西俣出合の|堰《せき》のところで小休止した。
切りたったように両側の尾根が鋭い傾斜で落ちこんでいる谷は、重く雲につつまれた空のせいか、見るからに|暗鬱《あんうつ》な眺めで、このやせ尾根にとりつき、転落して生命を落した若ものや、狭い谷筋を押し流してゆく雪崩にまきこまれたものもあるのではないかと、河原の石に腰を下して、ふと暗い気持にそそられた。
家に帰って、古い『山と渓谷』を取り出し、その谷は去年の冬の半ば、つづいて十三人の死者を出していることを知った。私の小休止した場所でも五人の遺体が上ったのである。鹿島槍の花たちは死者を悼んであのように長く咲いているのであったろうか。
帰りは早く早くとバスをせきたてて、ようやく四時の急行に間にあった。
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