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花の百名山93

时间: 2020-06-26    进入日语论坛
核心提示:東赤石山  コイチヨウラン(ラン科) 石鎚山に二度も一緒に登って下さった神野一郎さんが、今度は東赤石に登るようにすすめて
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東赤石山  コイチヨウラン(ラン科)   
 
 石鎚山に二度も一緒に登って下さった神野一郎さんが、今度は東赤石に登るようにすすめて下さった。
主峰は標高一七〇七メートル。三波川系結晶片岩層の中に貫入したカンラン岩が非常に硬いため、浸蝕されずに嶺として残ったのだという。植物が豊富である。稜線に岩場が多く、風化したカンラン岩が褐色になっているので、赤石の名がついたとも言われた。
その夏、丸亀に用が出来たので、神野さんに連絡。その前夜は新居浜に泊ることにしたが、東京を出るときからクシャミ、悪寒で風邪とわかった。私は日頃、クシャミ位の風邪は山に登った方がなおると信じており、幾度もその体験がある。それに神野さんのような植物の大家につれていっていただく機会というのは、そうザラには得られない。と言って薬を飲めば熱は下るが、体力も低下する。
すべては神さま任せと、薬は飲まずに朝七時、いつもの山仲間と新居浜を出発した。
宿から約三十キロを走って河又関沿いの道から直角に山に入って急斜面の檜林の下で車と別れる。もう九十回も登っておられるという神野さんは、林間の下草にミヤコカンアオイ、キッコウハグマ、シソバタツナミソウ、クサアジサイ、コガクウツギ、ヤブニッケイ、リョウメンシダ、ベニシダ、エビラシダ、サワアジサイ、チャルメルソウ、ツルアリドオシ、シュロソウなどを見つけて一々感嘆している私たちに、もっとおたのしみは先と言ったような、ゆったりした表情で上へ上へと案内される。
直登がおわると、|黒檜《くろべ》と五葉松の密林になって、道もだらだら登りとなり、両側には|苔生《こけむ》した岩石がつづいて、まるで、京都あたりのお寺の庭を歩いているような気分になった。松はどれも古木で枝振りがよく、この松の眺めだけでも来てよかったと思い、登りつづけてゆくと、大きな角閃岩の露出している平坦部に出た。岩と岩の割れ目から夏知らずの冷風が吹き上り、氷のように冷たい水がたたえられている。岩の表面には雲形に白く地衣類が密生していて、東赤石特有の眺めであるとか。赤石山系は、西南日本を二分している中央構造線と名づけられる三波川結晶片岩の断層運動によってつくり出されたものだそうで、瀬戸内海に面する平野部から屹立し、ゆるやかな道と直登の急坂を重ねるという地形もその成因からくる特徴らしい。
平坦部の一つに山の神をまつる小さな祠があった。そのあたりは針葉樹が伐採されて、アケボノツツジ、ミツバツツジ、ダイセンミツバツツジなどがいっぱいあった。シャクナゲもリョウブも多いが、花は皆終っている。
道はふたたび五葉松の密林になり、日射しのとぼしい林間の苔にまじってコイチヨウランの花が見られるようになった。高さわずかに五、六センチ。小さな|鞘形《さやがた》の葉が一つ根もとについている。うすい黄褐色の花も小さい。一月ほど前、大杉谷の崖の上でやはり小さい小さいホテイランのピンクの花を見つけたことを思い出した。栽培種の洋蘭の豪華な花たちにくらべて、これらの深山のランたちの何といういじらしさであろう。それでいて花弁に唇弁に備わる品位は華麗な洋蘭たちにまさるともおとらない。
同じ夏、九州八代の竜王山に登ってエビネをさがしたが、エビネは一本も見つからず、タブとマテガシの林の中でコクランの花を見つけた。コイチヨウランより更に小さくてしかもきちんとランの花になっていた。
林間の苔の間にはゴゼンタチバナ、バイカオウレンも咲き、低く小さいベニバナのシモツケも咲いている。シコクシモツケソウらしい。
午近く東赤石と西赤石の鞍部に出た。一望の眺めがひろがって西に石鎚山、南に吉野川の谷をへだてて横倉山につづく山なみ。東赤石山頂は一面の五葉松の深緑に盛り上り、北をかえりみれば瀬戸内海がうす青く光っている。
そして足許から南にむかう蛇紋岩やカンラン岩の急斜面の草地には、濃い紫のイワギボウシ。濃い|紅 《くれない》のタカネバラ、薄い紫のオトメシャジン。ミヤマリンドウ、タカネマツムシソウが、点々と咲き、キバナノコマノツメ、タカネオトギリ、ミヤマアキノキリンソウの黄やウメバチソウに似てヒゲのあるシラヒゲソウ、ウバタケニンジン、コウスユキソウなどの白い花もいろどりをそえている。
神野さんは、石鎚山よりも東赤石の方が植物の宝庫だと言われたが、呼吸の苦しさに這うようにして登って来た甲斐があったと思った。
東赤石の南には、かつて一万人の人口をかかえた別子銅山のあとがある。荒廃した地表に植物がもどって、四国には珍らしい北方系のツガザクラが見られるという。次回を期してその夜、高松で測ったら熱は八度七分になっていた。
ふだんあまり熱など出すことがない私は、七度もあれば頭痛がし、七度五分もあれば痛い痛いとわめき、八度もあればもう枕から頭が上らない。八度七分もあれば、氷のうをつけてうんうんうなって寝ているのに、とにかく下りでは大分スピードをかせいで予定の時間に下りられたのである。東赤石山に登って風邪は本格的になったらしいが、苦痛の感覚がなかったのはやっぱり山のおかげと思った。
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