イワウメ
シラネアオイは日光白根に多いのでシラネという名がついたらしいが、北アルプスの白馬でも鹿島槍でも東北の雄国沼のそばの猫魔ケ岳でも月山でも出あっている。日光白根山のように、たくさん咲いていないので、ひとがとらないのかもしれない。日光白根山は、あまりにも多いので、つい一本ぐらいと思う不心得ものが多いのかもしれない。アオイの名は園芸種の立葵に似ているからというけれど、こちらの方がずっと気品がある。その色といい、かたちといい、優雅そのもので、だれしもが出あってよろこぶシラネアオイは絶対に山においてもらいたい。そして、この山のシラネアオイならばひとにとられないだろうと思われるのが、北海道の南、ニセコ連峰の中で一番俗化されていない目国内岳一二〇三メートルの手前の、前目国内岳の根曲がり竹の藪の中に咲く花たちである。クマの大好きな根曲がり竹の新芽の出る頃が、シラネアオイの花盛りで、クマがまもってくれると思う。
目国内岳は礼文・利尻と同じ那須火山帯に属し、|蘭越《らんこし》から岩内に向かう途中の新見峠の少し先に登山口がある。前目国内と目国内岳の間は一面の根曲がり竹の湿地で、夏でも雪渓を残し、頂上の岩場に登ると、前方に岩内岳が成層火山の長い裾をひき、北に日本海、南に羊蹄山が遠望されて、いかにも北海道らしい広大な眺めである。この山の魅力は、シラネアオイのほかにもエゾノシモツケソウ、エゾゼンテイカ、エゾフウロ、ベンケイソウ、ミツバオウレンなどの草の花のほか、オオカメノキやムラサキヤシオやコヨウラクツツジなどの木の花の多いこと。そして、頂上直下にはイワウメが群生して、大雪山と同じような、乾性お花畑をつくっていることである。
イワウメを大雪山ではじめて見た時は、このまま写生して着物の模様にしたいと思った。岩礫地にびっしりと生え、まったく梅のような葉に、梅のような花を咲かせる。よく見ると、草でなくちゃんと枝があり、花はその枝先に咲く。小低木である。花を咲かせるまでに何年かかるのだろうかと思った。
目国内岳は礼文・利尻と同じ那須火山帯に属し、|蘭越《らんこし》から岩内に向かう途中の新見峠の少し先に登山口がある。前目国内と目国内岳の間は一面の根曲がり竹の湿地で、夏でも雪渓を残し、頂上の岩場に登ると、前方に岩内岳が成層火山の長い裾をひき、北に日本海、南に羊蹄山が遠望されて、いかにも北海道らしい広大な眺めである。この山の魅力は、シラネアオイのほかにもエゾノシモツケソウ、エゾゼンテイカ、エゾフウロ、ベンケイソウ、ミツバオウレンなどの草の花のほか、オオカメノキやムラサキヤシオやコヨウラクツツジなどの木の花の多いこと。そして、頂上直下にはイワウメが群生して、大雪山と同じような、乾性お花畑をつくっていることである。
イワウメを大雪山ではじめて見た時は、このまま写生して着物の模様にしたいと思った。岩礫地にびっしりと生え、まったく梅のような葉に、梅のような花を咲かせる。よく見ると、草でなくちゃんと枝があり、花はその枝先に咲く。小低木である。花を咲かせるまでに何年かかるのだろうかと思った。