シャクナゲ
シャクナゲはツツジ科の花の中で、もっとも豪華な花を咲かせるのではないだろうか。「あの山にはシャクナゲがある」というと、いかない前から、何かいろめきたつ雰囲気を感じさせられる。そして、シャクナゲがたくさん咲いて、比較的楽に歩ける山道は、その頃ともなれば、シャクナゲ見物で大変な賑いになる。たとえば秩父の西沢渓谷。大台ケ原の大杉谷へと下るシャクナゲ平など。
奥秩父の金峰山は、お隣の国師ケ岳とともにまったくシャクナゲ通りと言いたいほどに盛大に咲く。西沢渓谷の上の甲武信岳も、登山口の十文字峠や下山道のヌク沢沿いの道などにもシャクナゲが多い。
ところで、私はシャクナゲがたくさん咲いていても、せいぜい自分の山友達の数人ぐらいと、お互いに黙って花の美しさに浸って静かに歩いて、静かに山を下りたい。そんな時にあの山ならばと思うのが、阿武隈山地の大滝根山の一一九三メートルである。前にシロヤシオの見事さについて書いた。山で咲くツツジの中では、ヒカゲツツジとシロヤシオが一番好きというのも、ヒカゲはうすいクリームで、シロヤシオは純白なのが、何ともすがすがしいから。しかし、ヒカゲツツジは少し地味すぎ、晴れやかに見上げることができるのはシロヤシオである。大木になればなるほど美しい。大滝根山には、シャクナゲの林にゆく前にシロヤシオの大木の林の中に入りこんで、ただただ溜息をついて見上げた。沢に下りてくると、アズマシャクナゲの群落で、競って背のびして少しでも日光を受けたいかのように枝先を上に向けている。花はその先端に咲いている。シロヤシオの純林を抜けて、うす紅花のアズマシャクナゲの純林にと移ったのである。それも下り道で、下から見上げるので、緑の葉越しにうす紅の花のちらちら見える風情がおもしろい。私たちは沢を登ってシャクナゲのそばにゆき、上から花を見下ろす形で、十分にその美しさに酔って下山した。
|石楠花《しやくなげ》の花 つらら沢を埋め
さゆらぐもあり渓川の鳴る
奥秩父の金峰山は、お隣の国師ケ岳とともにまったくシャクナゲ通りと言いたいほどに盛大に咲く。西沢渓谷の上の甲武信岳も、登山口の十文字峠や下山道のヌク沢沿いの道などにもシャクナゲが多い。
ところで、私はシャクナゲがたくさん咲いていても、せいぜい自分の山友達の数人ぐらいと、お互いに黙って花の美しさに浸って静かに歩いて、静かに山を下りたい。そんな時にあの山ならばと思うのが、阿武隈山地の大滝根山の一一九三メートルである。前にシロヤシオの見事さについて書いた。山で咲くツツジの中では、ヒカゲツツジとシロヤシオが一番好きというのも、ヒカゲはうすいクリームで、シロヤシオは純白なのが、何ともすがすがしいから。しかし、ヒカゲツツジは少し地味すぎ、晴れやかに見上げることができるのはシロヤシオである。大木になればなるほど美しい。大滝根山には、シャクナゲの林にゆく前にシロヤシオの大木の林の中に入りこんで、ただただ溜息をついて見上げた。沢に下りてくると、アズマシャクナゲの群落で、競って背のびして少しでも日光を受けたいかのように枝先を上に向けている。花はその先端に咲いている。シロヤシオの純林を抜けて、うす紅花のアズマシャクナゲの純林にと移ったのである。それも下り道で、下から見上げるので、緑の葉越しにうす紅の花のちらちら見える風情がおもしろい。私たちは沢を登ってシャクナゲのそばにゆき、上から花を見下ろす形で、十分にその美しさに酔って下山した。
|石楠花《しやくなげ》の花 つらら沢を埋め
さゆらぐもあり渓川の鳴る