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花の百名山150

时间: 2020-06-28    进入日语论坛
核心提示:鳳凰三山《ほうおうさんざん》   タカネビランジ・ホウオウシャジン 北岳に登った時、肩ノ小屋に泊まっての明け方、朝焼けの
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鳳凰三山《ほうおうさんざん》
   タカネビランジ・ホウオウシャジン
 
 北岳に登った時、肩ノ小屋に泊まっての明け方、朝焼けの空に、鳳凰三山の薬師、観音、地蔵の三つの峰が淡い紺色に浮かび、来年はあの峰々を縦走したいと思った。
翌々年の九月十五日の敬老の日の前日に、一七七〇メートルの夜叉神峠の小屋に宿泊。この小屋の前もクガイソウやシオガマギクやミヤマアキノキリンソウやヤマハハコやマツムシソウの花々が咲き乱れて美しく、夕食の前に夕映えの白根三山を見ながら、花々の中にひととき身をおいていた。翌朝は六時出発。雨もよいの空で、せめて今宵の宿の薬師岳小屋に着くまでは降らないでくれと祈る気持ちで、杖立峠、苺平と、お花畑、樹林帯の中の道を急いで|南御室《みなみおむろ》小屋に着いたのが十一時。湧水があって、清々しい谷あいである。天候が悪いせいか、私たち四人の外には、若い単独行の男のひとが二人だけで小屋の中は閑散としている。雨にならないうちにとただただ急いで過ぎて来たが、苺平にはクマイチゴがたくさんあり、山火事のあとというお花畑は夜叉神小屋前と同じような花々が咲き乱れていたが、晴れていれば、このあたりは、白根三山を正面に見仰ぐことができるはずだが、空には今も雷をよびそうな黒雲が重なりあっていて、こんなに遮へい物のないところで雷にあったらと思い、樹林帯に入ればまた、高い木に落雷したらと気が気ではなかった。雨は本降りになって来たが、雨支度をして、小屋のうしろの急坂を登る。花崗岩が露呈していて、今にも頭の上から落ちて来そうな道である。どうやら一気に登りきって、また樹林帯となる。巨岩がところどころに大きな段差をつくっていて、四つん這いになりながら、樹林帯を抜けると、雷ならぬ強風が左側の谷から吹きあげて来て、あたりは城塞のように大きな岩の群ればかりとなった。砂払岳である。足を滑らせたら大変と慎重に足を運び、鳳凰三山には北岳より花の紅の濃いタカネビランジや、丹沢のイワシャジンより、繊細な花を咲かせるホウオウシャジンが咲いていると聞いて来たけれど、とても岩の間をさがしまわるどころではなくて、鬼ケ島の鬼の城のような巨岩群を越え下って、ダケカンバの緑の中に、薬師岳小屋の屋根を見いだした時のよろこび。
小屋の泊まりは私たち四人と若い青年だけ。ゴアテックスの雨着をストーブのそばで乾かしながら、小屋主から、数日前に捕まえた花盗人の話を聞いた。
「まず服装がちがうんですよね。ピンと来たね」
男は作業着のようなものを着て竹籠を背負っていたという。あとをつけていった。岩の間にかくれて何かとっていたらしいが素知らぬ風であった。すぐに小屋に走りもどって、広河原に有線で連絡した。怪しい男が下山してゆくと、男は広河原で、竹籠の中を改められた。ホウオウシャジンの九十株があった。静岡の人間で、一株を五千円で売るのだという。山梨県は全国に先駆けて高山植物の保護条例を出している。男は罰金十万円をとられ、花はもとの場所に植えられたというが、十万円は安いと私は思った。
そして翌朝は晴れ。六時出発。薬師の二七八〇メートルから観音の二八四一メートルに向かってあちらこちらの花崗岩の間に、私たちは、タカネビランジを、ホウオウシャジンを心ゆくまで見つけ、心ゆくまで写真をとり、私はスケッチして、こんなに美しい花が、こんなに無防備に咲いていることをあやぶみ、同時に美女誘拐にも似て、盗んだものを心から憎んだ。なお私は、オーストリアのハルシュタットやスイスのグリンデルワルトの道ばたの溝の石の間に、ホウオウシャジンそっくりの花が咲いていたことを思い出していた。もちろんだれもとるものはないのであろう。ただの野の草として。ヨーロッパアルプスの草原地帯では、ウズラバハクサンチドリもグンナイフウロもみな、牧草として、大草刈り鎌で刈られていた。
その夜は桃ノ木温泉泊まり。同行の鷲崎さんが一句をつくった。
鳳凰沙蔘終の花堪ふ震へかな
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