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花の百名山177

时间: 2020-06-28    进入日语论坛
核心提示:北《きた》ノ|俣岳《まただけ》   ミヤマキンポウゲ 山もせっかく登って来て、ただ帰るばかりではつまらない。よく景色を見
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北《きた》ノ|俣岳《まただけ》
   ミヤマキンポウゲ
 
 山もせっかく登って来て、ただ帰るばかりではつまらない。よく景色を見てからというひとがあったり、同じ道をあるくよりは、別の道を通りたいというひとがある。しかし同じ道もそれなりのおもしろさはある。道の記憶が花と共にあるから、登りに見た花によって、登山口まであとどのくらいかと逆算することができる。
太郎兵衛平は、北アルプスの最奥の高原で、立山からきても逆のコースから来ても心のおちつくところだけれど、有峰から登って、せっかくこんな苦しい思いをして登って来たのに、このまま帰るのが勿体ないというひとへのおすすめコースは薬師の往復、あるいは北ノ俣岳に登って、薬師のすばらしい南西のカールを一眼で見わたすことである。
太郎兵衛平からは標高差七〇〇メートルの薬師本峰は見えずに、愛知大学生十三人のいたましい遭難碑のある薬師平が見えるだけ。いったん薬師峠まで下って、三〇〇メートル登ってその碑に若者たちの不遇な死を悼んでくるのもよいが、この道は石のガラガラであまり花はない。花は北ノ俣岳から赤木岳あたりまでゆくと、ハイマツ帯の中にミヤマコゴメグサやミヤマキンポウゲなど。黒部川の谷にむかう斜面は夏でも雪を残し、雪の消えた草地にチングルマやハクサンシャクナゲやヨツバシオガマなどが咲いている。北ノ俣岳の頂きは石ががらがらしているけど、眺めは前に黒部五郎の軍艦のようにいかめしい岩峰がみえ、その向こうに直角にさえぎるようにして、槍の北鎌尾根から本峰が穂高へと連なる鋭い起伏のある岩稜を走らせて、息をのむような大きな展望をたのしめる。黒部五郎の右肩の向こうに笠ケ岳がうすく浮かんでいる。北ノ俣岳までの往復はゆっくり歩いて四時間と見ておけばよく、同じ道をもどって、左に遠く木曾御岳や加賀の白山を望む景色も素敵だ。
いつかの夏は眼の悪い人と北ノ俣岳を往復して有峰に下ったが、松葉杖をついた兄を助けて、大きな荷を背負った弟が登って来て感動した。
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