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きれいなお城の怖い話08

时间: 2020-06-30    进入日语论坛
核心提示:青年の直訴 実は、エリザベートに疑いを抱いていたのは神父だけではありませんでした。かねてから彼女に反感を持つ、彼女の長男
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青年の直訴

 実は、エリザベートに疑いを抱いていたのは神父だけではありませんでした。かねてから彼女に反感を持つ、彼女の長男の後見人で政府の有力者の、メジェリ・ル・ルージュもそのひとりだったのです。ある日、ひとりの貧しい農夫の青年が、彼に目どおりを願いでました。青年はせっぱ詰まった様子で「自分の彼女が、チェイテのバートリ夫人の城で働いていて、毎朝河まで水をくみにいくのが日課だった。自分はいつも途中で彼女と落ち合ってお喋《しやべ》りするのが習慣で、彼女が城での生活をいろいろ話してくれた。が、あるとき彼女がぷっつり通らなくなって別の娘と入れかわったので、彼女のことを聞くと、行方不明になってどこにいったか分からないと言った」と言うのです。メジェリは思わず身を乗りだしました。
「それだけではないのです。また数日するとその娘もいなくなって、別の娘が入れかわり、前の娘がどうなったか彼女も知らないというのです。おかしいと思って色々聞いてまわったところ、もう何年も前から気味悪い老婆や召使につれられて、娘たちがつぎつぎと城にあがっていくが、いったん城に入った娘が出てきたのを見たものは誰もいないというのです。あげくは娘が変死して夜、秘密裡《ひみつり》に庭や畑に葬られるというが、その死目に会わせてもらった親は、いままでひとりもいないというのです」
青年はついに決心して城に行き、自分の恋人に会わせてくれと言ったところ、何を言っているんだと反対に狂人あつかいされて、追い返されたというのでした。それでもあきらめきれず、とうとう彼は命をはってメジェリに直接訴えにきたのでした。思いがけない情報にほくそ笑んだメジェリは、さっそく、国王に捜査を願い出ることを決意しました。
 一六一〇年十二月二十九日、運命の日、雪と氷が城への坂道をとざしていました。いっさいは白一色のなかに埋めつくされ、ひっそり身を沈めてこれから起ころうとすることを待っているようでした。チェイテに近づくにつれ、大宮中伯ツルゾーは、村がみるから森閑と人気《ひとけ》がないのに驚きました。農民たちはなにかが起ころうとしているのを察し、家のなかにひっそり身をひそめているようでした。
その夜ツルゾーは逃亡者を出さないよう、城のあらゆる出口に見張りを配し、自分は神父を連れて正門から侵入しました。村と同じく城ももぬけのからでしたが、台所の櫃《ひつ》のなかは予備食物でいっぱいで、暖炉には薪《たきぎ》が燃えており、ついさっきまで人が住んでいたかのようでした。ツルゾーはエリザベートがどこかに逃亡したのだろうと考えました。
一行は地理にくわしい神父を先だて、各々松明を手に地下に降りていきました。異様な死臭が鼻をつく部屋は、恐ろしい状態をていしていました。柩が山と積まれ、床にはペンチや鉄棒など拷問用具が撒《ま》き散らされ、入浴に使われたらしい大盥も部屋の真中に打ち捨てられて、そのどれにも真っ黒の血がでこぼこにこびりついていました。そして彫物のある大きい木箱のなかに、サビて使い物にならなくなった「鉄の処女」が、不気味に目をとじて眠っていたのでした。
そこから廊下を通り、その先のこれよりいくらか狭い部屋にはいると、その床にはまだ新しい血が大きい染みになっていました。やはり血がこびりついたノミや焼きごてや鋏《はさみ》が散乱するなかに、なにか薄汚れた毛布につつまれた大きいかたまりが転がっていました。
毛布をはいで現れたのは、ゾッとするように恐ろしい血まみれの死体でした。かろうじて娘のものと分かる死体は、まだ生暖かかったのです。その少し先に、やはり裸で手足を切り刻まれ、ふるいのように全身、穴だらけの二人の娘が見つかりました。ひとりは死んでおり、もう一人はまだわずかに意識があって、男たちから身を隠そうとしていました。
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