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きれいなお城の怖い話10

时间: 2020-06-30    进入日语论坛
核心提示:牢獄に三年半 ツルゾーからエリザベートに言い渡された判決は、次のようなものでした。「お前をここチェイテの城で終身刑に処す
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牢獄に三年半

 ツルゾーからエリザベートに言い渡された判決は、次のようなものでした。「お前をここチェイテの城で終身刑に処する。お前には窓と扉をふさぎ、水と食物を送り込むため壁に小さな穴のあいた一部屋のみが与えられる。お前は今後、誰とも交流することを許されない。見張りをのぞいて、誰もこの城には住まないだろう。今後、私は人がお前の名を口にすることを厳禁する。お前はこの地上の空気を吸うに価せず、神の光をおがむに価しない。お前は止《や》むことのない夜のなかで、犯した罪を永遠に悔いるがいい。神の許しを乞いながら最後を迎えるがいい。今後お前の存在はこの世から、完全に抹殺される」
召使フィツコやドルコたちがビッシェの処刑場で手足の指を一本ずつ引き抜かれ生きたまま火に焼かれるという極刑に処されたにもかかわらず、バートリ家というハンガリーでもっとも絢爛《けんらん》たる栄光を誇っているこの聖域を、結局、国王さえ侵すことはできなかったのです。彼女の城と財産も没収を免れ、本当なら死刑になるところを、かろうじてエリザベートは終身刑に減刑されたのです。
愛用の鏡と深紅のビロード敷きの手箱のなかの、辛うじて兵士らの手を逃れたいくつかの宝石にかこまれ、毛皮のなかにうずくまりながら、エリザベートは大工たちが石や漆喰《しつくい》で、彼女の部屋の窓を一つ一つ埋めていく音をききました。高い所にわずかに空をあおげる明りとりと、水と食物を入れるのぞき窓をくりぬいて、扉も厚い壁で塗りかためられました。こうして彼女の周囲には強固な石の牢獄が築かれ、ここに本当なら死刑になるべき人間が生きていることを示すため、城の四方に絞首台がたてられました。
エリザベートの視界から、しだいに光が消えました。鏡のうえに影が広がっていき、もはや彼女は薄暗がりのなかで、そこに浮かびあがる自分の顔の陰画しかみませんでした。両の目だけが飢えた獣のようにぎらぎら輝いているのが分かります。
城は人気がなく、一日一度のぞき窓が重いきしみ音を響かせて開き、牢番の手で水と食物が入れられました。牢番は彼女に話しかけることを禁じられていましたが、エリザベートのほうでも話したいことなどありませんでした。
最後までエリザベートは自分の犯した罪を悔いることもなく、改心して神に許しを乞うこともなかったといいます。彼女には理解できなかったのです。なぜあれほどの身分にあった自分が牢につながれたのか。自分の欲望のおもむくまま生きることが、どうして世間では罪になるのか……。
時おり彼女は素足で、獣のように物憂く、排泄物と残飯にまみれた石の床を歩いたものでした。この下に地下室があり、かつてそこでは夜な夜な血の宴が繰り広げられ、彼女の欲望をみたすためにだけ娘たちは泣き叫び、しなやかな肉体を鞭のしたでよじらせ、ある限りの血をながして彼女に奉仕したのです。そこには神も君主もなく、ただエリザベートだけが世界の支配者であり、絶対主でした。そこで彼女はこの世界を、確かにその手に握っていたのです。
けれど、すべてを失ったエリザベートをその後待っていたのは、牢獄のなかでの栄養失調による緩慢な死でした。三年半をこの牢獄のなかで辛うじて生きつづけ、そのあいだに自分の食物を差し入れてくれる娘のカタリナに全財産を譲るという遺言状を書き残して、一六一四年八月二十一日、ついにエリザベートは世を去ったのです。肉体はやせ細って子供のからだのように軽くなり、顔には深い皺がきざまれ、かつての美貌はみるかげもなくなっていました。享年五十四歳でした。
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