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きれいなお城の怖い話18

时间: 2020-06-30    进入日语论坛
核心提示:幽閉生活の始まりその後サド夫妻は、ラ・コストの城にひっそりと身をひそめていました。が、警察は彼らがここに隠れているのを見
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幽閉生活の始まり

その後サド夫妻は、ラ・コストの城にひっそりと身をひそめていました。が、警察は彼らがここに隠れているのを見ぬき、またもラ・コストの城の家宅捜索を行ったのです。翌年一月六日夜、パリ警察の検察官とマルセイユ憲兵隊の騎兵隊が、突然城を襲いました。偶然サド自身は留守でしたが、彼らは城中を探しまわり、サドの書斎を荒らして火をつけたり、原稿や手紙を押収し、捨て台詞《ぜりふ》をのこして引き上げていきました。
その年は夫妻にとって辛《つら》い冬でした。ルネはマルセイユの裁判所で夫が受けた判決を破棄させようと奔走しますが、請願は実を結ばず、パリで毎日裁判所にかよいつめたあげく、むなしくラ・コストに帰っていきました。権力という大きい壁のまえでの、個人の無力を思い知らされたのです。冬のあいだ、夫妻は誰にも会わず城にこもって暮らしました。夜には明りという明りを消し、重い鎧戸やカーテンをぴったり閉めました。南仏特有のミストラルの吹きあれる冬のあいだ、暗く静まりかえった城は、不気味な廃墟《はいきよ》のようでした。
けれど城の奥の一室には明々と暖炉が燃え、そこには想像を絶する光景が繰りひろげられていたのです。ズボンの上は半裸で、居丈高に鞭を振りかざし、仁王のようにそそり立つサド侯爵、部屋の片すみで震えおののきながら身をよせる、ルネ夫人と五人のうら若い娘たち……。
一月ほど前、夫妻はリヨンで五人の娘を雇って城に連れかえりました。女中につかうという名目でしたが、もちろんそれは表むきのこと、本当はサドの快楽に供されるためなのです。
クリスマス・イヴは、そのまま淫靡《いんび》な黒ミサの夜に一変しました。娘たちは裸にむかれ、鞭うたれ、犯され、サドの尽きることない欲望の生贄《いけにえ》にされます。妻ルネもすすんで裸になり、その乱行に加わりました。彼女にとって夫の命令は絶対でした。
城の奥深い部屋で、暖炉の炎にほのかに浮かびあがる青白い裸体が、くんずほぐれつ絡まりあいます。あがる悲鳴、皮膚に食いこむ鞭のにぶい音、しだいにぜえぜえ高まる息、肌からポタポタたれて床をひたしていく深紅の血……。
死ぬほどの羞恥《しゆうち》にふるえつつ、ルネは娘たちの目前で夫に向かってからだを開き、ときには夫に命じられて、下男に身をまかせさえするのです。あの信心深いルネ夫人、つつましやかなルネ夫人が、そこではまるで別人のように、異常な快楽にあやしく悶《もだ》え、のたうつのです。
 一月十四日、突然サドの母が亡くなったしらせを受けて、夫妻はパリに出かけました。が、用心していたにもかかわらず、到着から五日後にサドは旅館で逮捕され、パリ郊外のヴァンセンヌの牢に収容されるのです。この逮捕のかげには、またもモントルイユ夫人の手が動いていました。そもそもサドをパリに呼びよせたのも、彼女のさしがねだったのです。
周囲を深さ約十二メートルの堀が囲み、切り立った石垣のうえには内がわから軒蛇腹がつきでて、獄内へのあらゆる侵入をこばんでいます。四つの塔のなかに並ぶ獄房は、それぞれ二重の鉄扉で閉ざされ、壁の厚さは約四・八メートル、天井の高さは約九メートル。暗い部屋には壁の上のほうにわずかな明りとりがあるだけで、囚人の部屋には夜も昼も錠がおろされ、閂《かんぬき》がかけられています。
この恐ろしいヴァンセンヌの牢獄で、サドは六号室という独房に収容されました。こうして十一年の幽閉生活が始まりました。彼が一人の作家に成長するには、八九年の大革命までの、この十一年の苦悩が、ぜひ必要なものだったのです。彼自身、いつの日か自分が山ほどの貴重な作品を手に、作家としてこの牢獄から出ることになろうとは夢にも思っていませんでした。それから一世紀後に彼の復権が叫ばれ、彼が文学史上、大作家として輝かしい金字塔を打ちたてる日が来ようとは……。
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