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きれいなお城の怖い話33

时间: 2020-06-30    进入日语论坛
核心提示:巨額の濫費ジルと妻との関係は冷たいものでした。とつぜん城に押し入った暴徒に掠奪され、その晩のうちに凌辱《りようじよく》さ
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巨額の濫費

ジルと妻との関係は冷たいものでした。とつぜん城に押し入った暴徒に掠奪され、その晩のうちに凌辱《りようじよく》されたカトリーヌが、ジルをゾッとするぐらい恐ろしいいやな男と感じたのは無理もありません。ジルのほうでも、うまれつき同性愛者で、女には興味がありませんでした。
それでも世継ぎが必要なことから、ジルははじめのうちは定期的に妻のベッドにかよいました。が、三〇年に娘が生まれてからは、形ばかりの夫婦を演じるのにも飽きてきて、間もなくカトリーヌはプソージュの城に引きこもりました。この頃すでにジルは殺人を犯しはじめており、カトリーヌがふとしたことから夫の犯行をかいま見て、仰天してさっさと別居してしまったこともありえます。いずれにしても、夫婦はその後、二度と会うことはありませんでした。
三二年の祖父の死で、ただでさえ裕福だったジルは、さらに途方もない財産を受けつぐことになりました。このときから彼の生活は華やかではあるが、しだいに落着きのないものになってきました。厖大《ぼうだい》な財産をものすごい勢いで使いつくしはじめたのです。まるで湯水のように金をばらまくことで、自分のなかの空虚を満たそうとでもするように。
彼が熱中したのは、まずローマ時代の皇帝のように豪奢をきわめ、威風を見せびらかすことでした。彼は専属の聖職者団と戦士団をかかえており、戦士団のほうは先ぶれや衛兵隊長に二百人の騎兵隊や軍楽隊をふくみ、さらに大聖堂にも匹敵する聖職団は、教会参事、司教、司祭など八十人のメンバーを含んでいたといいます。彼がどこへ行くにも、豪華な仕着せを着け、専用の召使を引き連れたこれらの一団が彼に付き従い、さらに甲冑師《かつちゆうし》、ラッパ手、理髪師、彩色工、錬金術師、魔術師など、かぞえきれない大集団が彼を囲んでいたといいます。
ジルがどんなに高い物でも言い値で引きとるので、商人らは品物をもって我先にと押しかけました。せいぜい四千エキュぐらいの黄金布の大外衣に一万四千エキュも払ったり、二十五フランが相場の黄金布を八十エキュで売りつけられたり……。
さらにジルは自費でサン・ジノサン礼拝堂を設立し、聖歌隊を作ってそのなかに美しい声と容貌をもった少年たちを入れました。が、本当のところ、この少年たちの用途はもっと別のところにあったのです。少年たちは神にその身をささげるのではなく、ジルの淫《みだ》らな欲望にその身をささげることを強いられたのです。
各地から美貌と美声をえらびぬかれた少年たちが、昼間はこの礼拝堂の聖歌隊席で天使のような声を響かせ、ジルのために神の祝福を祈願するのでした。が、夜には彼らはもっぱらその幼い肉体をジルの欲望のえじきにされたのです。
昼間は濫費と豪奢の見せびらかし。そして夜には美食と泥酔と少年たち……。ジルは聖歌隊から特に美しい少年たちを選びぬいて身のまわりの世話をさせました。ときおり開かれる宴《うたげ》の席では、ほとんど全裸に近い姿をさせられたこの少年たちが、肉桂《につけい》入りの萄葡酒《ぶどうしゆ》や興奮剤入りの酒を客たちにそそいでまわるのでした。これらの酒で性欲をかきたてられた客たちは、ときにはその場で少年たちに愛の行為をいどむこともありました。自分のかわいがっている少年たちがその場に押したおされ、客人たちの淫らな手で思い切りむさぼられるのを、ジルは倒錯した喜びで見守っていたに違いありません。
三四年九月に、ジルはおびただしい数の兵士、司祭、従者、下僕、小姓を連れてオルレアンに出発しました。これだけの大集団を伴っての旅行で、出費は大変な額にのぼりました。一年たらずのうちに彼が使った額は八万から十万エキュで、現代の貨幣価値に換算すると十億フランにもなるといいます。
が、この濫費は彼の破滅のほんの始まりに過ぎませんでした。モンリュソンに滞在したときの宿泊費用の金貨八百十レアルが半分しか支払えなくて、彼は借金の担保に下男をふたり後に残すという醜態を演じています。その年十二月、彼は従弟《いとこ》に自分の名でブルターニュの城や領地のいくつかを売る権限を与えました。濫費は止められないが、かといって金を増やしていく手腕はない。そこで従弟にわずらわしい金繰りを押しつけようとしたのでしょう。
すっかり濫費が身についてしまったジルは、必然的に三つのことを急速に身につけていきました。借金、質入れ、そして不動産売却です。彼は誰かれかまわず借金をして、やがては無茶な質入れをするようになり、ちょっとした金を借りるのにも、大金をはたいて手にいれた品物を担保にしました。やがて不動産売却にも手を染め、町を売り、村を売り、荘園や荘園屋敷を、それも底値で誰かれかまわず売りました。
こうして彼は、急激に破局にむかって突き進みました。一族の者たちは彼の洪水のような浪費に不安を抱き、国王シャルル七世に、なんとか彼の財産に迫っている破産を食いとめて下さるようにと懇願しました。そこで国王は公文書を発行し、それはジルの領地のあるオルレアン、トゥール、アンジェ、シャントセ、プソージュなどの街や村で公布されました。ジルが今後、領地を売却するのを禁じられたので、誰も彼と契約をかわしてはならないというものです。が、ブルターニュ公は国王の布告を無視して、つぎつぎとジルと売買契約を結んでは、ジルの領地を奪《と》り上げていきました。国王の禁治産令でも、ジルの破局を食い止めることはできなかったのです。
この事件で、ジルの社会的信用は完全に失墜しました。もはや彼は王国一の富裕な大貴族でも、戦場で名声をはせた軍人でもなく、あわれな破産者、自分の財産管理能力を疑われた禁治産者にすぎないのです。
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