奇妙なことにこの事件は、二十一年前に起こったもう一つの悪魔つき事件によく似ていました。というよりミニョンが、そのゴーフリディ事件をもとに、新しく筋書きをデッチあげたのでしょう。グランディエ告訴は一六三二年はじめで、ゴーフリディが処刑されたのは一六一一年。まだまだその事件は、人々の記憶に新しいものだったのです。
ゴーフリディはマルセイユのデ・ザクール教会の司祭で、女たちの人気者でした。事件は、彼が関係のあった一夫人から、十二歳の娘マドレーヌの宗教教育をまかされたことに始まります。彼はその少女に道ならぬ恋心を燃やし、彼女を容易にモノにできるよう、自分が告解僧をしているウルスラ修道会にあずけました。ところがそこに以前からいた、やはり彼と関係のあるルイーズという女が、マドレーヌに嫉妬《しつと》を燃えあがらせたのです。そこに、アヴィニヨン教会領の異端審問者だったドメニコ会士ミカエリスが、もってこいの獲物とばかりに、このスキャンダルに飛びついたのでした。
ミカエリスにそそのかされたルイーズは、公衆の前で少女マドレーヌを責めたてて、ゴーフリディが悪魔にとりつかれていると白状させようとしました。毎日のようにルイーズから殴る蹴《け》るの暴行を受けて、恐れおののいたマドレーヌは、すっかりその言うなりになってしまいました。
彼女は、ゴーフリディに連れられてサバトに行ったこと、その後は自分もずっとその悪霊にとりつかれていること、ゴーフリディは悪魔と契約した魔術師で、フランス、英国、トルコなど広大な地域の魔術師たちの首領で、彼が息を吹きかけるだけで、女たちは彼の思いどおりになってしまうことなどを、錯乱状態で喋《しやべ》りたてたのです。
証言しているのがいかにも清純な十二歳の少女だったため、聴衆は激しいショックを受けました。そのうえ訊問を受けていたマドレーヌが、ゴーフリディが現れるのを見るやすさまじい発作を起こしたので、被告への疑いは動かしがたいものになりました。ゴーフリディは逮捕されて、犬をけしかけられたり棍棒《こんぼう》で打たれたりの拷問を受けたあげく、火刑台の露と消えたのです。
ゴーフリディはマルセイユのデ・ザクール教会の司祭で、女たちの人気者でした。事件は、彼が関係のあった一夫人から、十二歳の娘マドレーヌの宗教教育をまかされたことに始まります。彼はその少女に道ならぬ恋心を燃やし、彼女を容易にモノにできるよう、自分が告解僧をしているウルスラ修道会にあずけました。ところがそこに以前からいた、やはり彼と関係のあるルイーズという女が、マドレーヌに嫉妬《しつと》を燃えあがらせたのです。そこに、アヴィニヨン教会領の異端審問者だったドメニコ会士ミカエリスが、もってこいの獲物とばかりに、このスキャンダルに飛びついたのでした。
ミカエリスにそそのかされたルイーズは、公衆の前で少女マドレーヌを責めたてて、ゴーフリディが悪魔にとりつかれていると白状させようとしました。毎日のようにルイーズから殴る蹴《け》るの暴行を受けて、恐れおののいたマドレーヌは、すっかりその言うなりになってしまいました。
彼女は、ゴーフリディに連れられてサバトに行ったこと、その後は自分もずっとその悪霊にとりつかれていること、ゴーフリディは悪魔と契約した魔術師で、フランス、英国、トルコなど広大な地域の魔術師たちの首領で、彼が息を吹きかけるだけで、女たちは彼の思いどおりになってしまうことなどを、錯乱状態で喋《しやべ》りたてたのです。
証言しているのがいかにも清純な十二歳の少女だったため、聴衆は激しいショックを受けました。そのうえ訊問を受けていたマドレーヌが、ゴーフリディが現れるのを見るやすさまじい発作を起こしたので、被告への疑いは動かしがたいものになりました。ゴーフリディは逮捕されて、犬をけしかけられたり棍棒《こんぼう》で打たれたりの拷問を受けたあげく、火刑台の露と消えたのです。