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きれいなお城の怖い話67

时间: 2020-07-08    进入日语论坛
核心提示:皇后からの電報ラスプーチンが一九一〇年晩秋、故郷の村に帰っていた時、電報がとどきました。「おいで乞う。何をおいても直ぐに
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皇后からの電報

ラスプーチンが一九一〇年晩秋、故郷の村に帰っていた時、電報がとどきました。「おいで乞う。何をおいても直ぐに出発されよ。ニコライ」彼はとるものもとりあえず、旅行のための荷物をまとめました。皇太子の容体が悪化したのだろうという彼の推測は、ズバリ当たっていました。狩で皇帝父子がボートに乗っていたとき、そばの茂みからアオサギが飛び立ち、驚いて立ち上がった皇太子は膝をクラッチにぶつけて怪我《けが》をしてしまったのです。このときは医師の手当てですぐに出血がおさまったのですが、一週間ほどして皇后が彼を散歩に連れだしたとき、馬車が穴ぼこにはまってしまい、馬車がかたむいてアリョーシャはよろめき、扉に膝をぶつけてしまいました。悪いことはつづくもので、前の傷口がやぶれてまた出血が始まったのです。
宮殿にたどり着いたときは、もう危険な容体になっていました。医師たちの手当てもむなしく出血と高熱が続き、アリョーシャはいつもの背をまるくした姿勢で苦しげにうめき続けていました。あらゆる治療法を絶たれた皇帝は、困りはててラスプーチンに電報を打ったのです。人に知られるのを恐れて漠然とした言いまわしにしたのですが、ラスプーチンはすぐ悟って近くの郵便局から返電を打ちました。「嘆くことはない。子供は治る。医者どもはただちに、これまでの治療をやめるがいい」
電報を開いたとたん皇后の目が輝きはじめ、アリョーシャに声をだして読んでやると、不思議にも彼は昏睡《こんすい》状態からさめて、「大好きなラスプーチンからの電報、もっと聞かせて」と言ったのです。そのときから絶望的だった病状が回復にむかい、夕方には嘘のように危機を脱していました。出発しようとしていたやさきに、ラスプーチンは皇帝から喜びいさんだ電報を受けとりました。「アリョーシャは元気でよろしくのこと。またも奇蹟を起こしたことに感謝する」
皇帝夫妻のラスプーチンへの敬意はさらに高まり、「皇太子の健康には、あの方が欠かせないのです」と、皇后は親バカ丸だしで人々に言うのでした。ラスプーチンを悪く言う者は、つぎつぎと宮廷への出入りをとめられました。国会議長が彼の行状の調査報告を皇帝にとどけると、皇帝はそれを熱心に読んでから首相を呼びつけ、逆に調査を行なった者への厳罰を命じる始末でした。
 が、反ラスプーチンの声は日々高まり、教会や警察や政府、さらにはそれまで好意的だったアナスターシャ大公妃やニコライ大公までが、彼の敵にまわりました。一九一二年にバルカン諸国がトルコに宣戦布告し、介入をめぐって好戦的なニコライ大公とラスプーチンが激しく対立。大公が皇帝に出兵をせまると、ラスプーチンがそれを思いとどまらせようとするのでした。これが全ヨーロッパの大戦争に発展するかも知れないと、彼は予期していたのです。
盛りあがる好戦ムードにかき立てられて、人々の彼への敵意は深まっていき、秘密警察や聖宗務院などいたる所が、「ロシアの毒腫《どくしゆ》」と露骨にラスプーチンを非難していました。皇帝夫妻だけが依然これらの悪口を気にかけようとしませんでした。確かにラスプーチンは女にだらしないが、彼は神そのものではなく、ただの人間で、聖人であるにすぎないのだ。どんな人間だって多少の欠点はある。彼の場合それは女好き[#「女好き」に傍点]だが、それも許せない欠点というわけではない……。
そんなとき起こったのが一九一四年六月二十七日、故郷の村で起きたラスプーチン暗殺未遂事件でした。その日の午後二時十五分ごろ彼が村にさしかかると、黒のショールをかぶった女が近づいてきました。顔中が膿《うみ》のたまった一つの傷という感じで、跡かたもない鼻のかわりにおぞましい穴が開き、目には瞼《まぶた》がなく、むしばまれた唇のあいだからのぞく歯が薄気味悪く笑っていました。ゾッとして一歩あとにすさったとき、女はふところに隠していたナイフを取りだすなり、わめきながらラスプーチンの胸に突きたててきました。なおも突き刺そうとしたのを、彼は痛みをこらえながら拳《こぶし》を女の頭にうちおろして卒倒させました。血がふきあげる傷口をおさえながら、やっとのことで家にたどり着いたのです。
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