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きれいなお城の怖い話70

时间: 2020-07-08    进入日语论坛
核心提示:不吉な予言 その日もラスプーチンはユスーポフを上機嫌で迎え、マッサージをはじめました。「ねえ、今度、僕の邸にきて下さいよ
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不吉な予言

 その日もラスプーチンはユスーポフを上機嫌で迎え、マッサージをはじめました。
「ねえ、今度、僕の邸にきて下さいよ。妻も待っていますよ」ラスプーチンはロシア一の美女といわれるイリーナに会えることに、たちまち乗り気になりました。会って、それからあとは? 彼は自分が女たちにおよぼす絶対的な魅力を、疑ったことはありませんでした。
その夜十二時ころ迎えにくると約束してそこを辞したユスーポフは、同志たちと最後の打ちあわせをしました。同志たちが階上に待機している間に、ユスーポフは部屋でラスプーチンに、用意した青酸入りの菓子と葡萄酒《ぶどうしゆ》をすすめることが決められました。
その夜のラスプーチンは上機嫌でした。イリーナに会って彼女をものにできるという予感が、彼を勢いづけていたのでしょう。ところがその晩訪ねてきた友人のアンナ・ヴィルーボフは、不審そうに言いました。「あら、イリーナはいまクリミアに行っていて留守ですよ」、そして心配そうに、「いらっしゃらないほうがいいんじゃない? なんだか心配だわ」が、そのときに限って、不思議にもラスプーチンは自分を待っている運命を疑ってもみないようでした。
ところが実はその朝に、彼は皇帝夫妻に一通の手紙を出していたのです。なかには有名なつぎの予言が記されていました。「私は正月までに死ぬだろう。私を殺すのが私と同じ百姓なら、皇帝よ、汝《なんじ》は帝位にとどまり汝の子らは長くロシアを治めるだろう。が、私を殺すのが貴族なら、彼らの手は永遠に私の血に染まり、彼らは祖国を追われるだろう。彼らは兄弟どうし殺しあい、ロシアにはもう貴族も皇帝もその末裔《まつえい》もいなくなるだろう」そして……、「私の死の鐘が打ち鳴らされてから一年もたたないうちに、皇帝も皇后も皇子らも、皆死ぬだろう。ロシアの民衆が彼らを殺すだろう……」
奇《く》しくもこの予言は、一年後のロシア革命で、実現されることになるのです。
 その夜おそくラスプーチンは、ユスーポフの宏壮《こうそう》な邸を訪ねました。玄関ホールを横ぎり一階のフロアから螺旋《らせん》階段をおりると、奥まったこぢんまりした部屋に通されました。ここは半地下室だったのを、ユスーポフが今夜のため改良したのです。うちっ放しの壁は華麗なカーテンや額でおおわれ、床にはみごとな絨毯《じゆうたん》が敷かれ、豪華な家具や置物が部屋を飾っていました。
イリーナはまだ来ないのかと聞くラスプーチンに、ユスーポフはいま客が来ているので……と、ゴマカしました。彼女がくるまでここで一服しましょうとの彼の誘いに、ラスプーチンは疑う様子もなく従いました。テーブルにはサモワールが湯気をあげ、ワインの瓶が何本もならび、豪華なクリルタル・グラスが暖炉の炎に照り映えていました。
ユスーポフの手でラスプーチンのまえに、グラスと菓子がなにげなく置かれました。菓子のなかにもグラスにも、どんな人間もひとたまりもないほどの青酸が入っています。部屋はしーんと静まり返って、遠くで時計が十二時をうっていました。
息をのんで待ち受けるユスーポフの前で、ラスプーチンはついに菓子を二、三個手にとり、ゆっくり口に運んでいきました。一度に大勢の人間を殺せるほどの猛毒を彼は口にしたのです。さあ、今に効いてくる。どんな男だって、これほどの毒に抵抗できるはずはないのだ……。
ユスーポフはドキドキしながら目を閉じました。ところが……、少しして彼が目をあけると、な、なんと、ラスプーチンがケロリとして「どうしたんだい?」と尋ねたのです。
なおも平気でどんどん菓子を噛《か》みくだいていくラスプーチンに、ユスーポフはわけが分からなくなりました。いったいどうなったのだろう。医師が間違えたか、それとも裏切ったのか?
階上で苛々《いらいら》しているはずの仲間たちに相談に行きたいと思っても、そうもいきません。
ラスプーチンがワインがほしいと言ったので、ユスーポフは青酸入りグラスに注いでわたし、それをラスプーチンは一気に飲み干しました。今度こそ大丈夫。今度こそラスプーチンも毒にあたって、その場にくずおれるはずだ。どんな超人的な体力だって、いくらなんでももう敵《かな》うまい……。
が、やはり今度も何も起こりはしませんでした。ラスプーチンはワインのおかわりを要求しただけでなく、またも毒入りの菓子をゆうゆうと口にいれたのです!
ユスーポフは心臓が爆発しそうでした。つぎつぎと毒入りのワインを飲み下し、菓子を口に運んでいくラスプーチン。まるで時間が止まってしまったようでした。またもおかわりを要求するラスプーチンに毒杯を差しだしながら、ユスーポフの手は思わず震えました。
ふいにラスプーチンが、目ざとく部屋の隅にあるギターを見つけました。「君の名演奏を聞きたいな?」ユスーポフはギャフンという思いでしたが、仕方なくギターをとりあげて爪弾《つまび》きはじめました。ラスプーチンは椅子《いす》に座って、じっと目をとじて聞き入っていました。
彼が歌い終えても、ラスプーチンはビクとも動きませんでした。死んだのか。それとも毒が効いて苦しんでいるのか? 思案していると、ラスプーチンは急に顔をあげて、「良かったよ。もっと歌っておくれ」と言うのです。ふと時計を見たユスーポフはゾーッとしました。もう二時間も、ラスプーチンは毒を体内に運びつづけていたのです。この二時間が、ユスーポフには永遠のように思えました。
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