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きれいなお城の怖い話75

时间: 2020-07-08    进入日语论坛
核心提示:恐怖の叫び声 翌朝、城の召使たちは伯から突然ひまを出されました。が、過分の給料を与えられたので、誰も不満をいう者はいませ
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恐怖の叫び声

 翌朝、城の召使たちは伯から突然ひまを出されました。が、過分の給料を与えられたので、誰も不満をいう者はいません。昨夜のショッキングな事件を知っている者はいなかったので、事情ができて急に家族中でフィレンツェの妻の実家に引っ越すのだという伯の口実を、いぶかりながらも疑う者はいませんでした。
地下室のなかでイザベッタは、一睡もしないでウンウン唸《うな》りつづけていました。口のなかはすっかり腫《は》れあがり、頭の奥にじんじん響いてくる痛みで気が狂いそうでした。昼になるとひとりの兵士が入ってきて、パンをちぎって腫れあがった彼女の口に無理やりおしこみました。悲鳴をあげながらも、結局飲みこむほかはありませんでした。この「拷問」が、日に二回繰り返されたのです。
やがて室内には彼女の垂れながす汚物がたまり、彼女の両脚も白い寝間着も、それにまみれていきました。部屋にたちこめる汚臭に息がつまりそうでした。フィリッポ伯はそんな妻の様子を時々見物しにきましたが、彼女が泣きわめいて許しを乞うのには耳も貸さず、やはり口に薄い笑いを浮かべたまま眺めては、また去っていくだけでした。
四日目のあさ、数人の兵士が牢に入ってきて、イザベッタを鉄輪からはずし、以前彼女自身の部屋だった城の一室に無理やり引きずっていきました。部屋の一方の壁は、一メートル四方、五、六十センチの奥行きに大きくくり抜かれていたのです。
それを見たとき初めて、イザベッタは自分がこれから、どんな目にあわされようとしているかが分かりました。彼女は腫れあがった口を必死で動かしながら、「お願い、命だけは助けて!」と哀願しましたが、返ってくるのは冷たい沈黙だけでした。彼女は後ろからはがいじめにされ、無理やりくり抜いた壁のくぼみに押しこまれたのです。
彼女が泣き叫ぶのをものともせず、兵士たちは手早くレンガをつぎつぎ積みはじめました。イザベッタの狂ったような叫びが城中に響きわたるなかで、またたく間にレンガの壁ができあがりました。つぎに兵士たちは白い漆喰《しつくい》を、レンガのうえにハケで塗り込めはじめました。今は初夏、またたく間に塗った漆喰もかわき、他の壁面と区別がつかなくなってしまうことでしょう。もうイザベッタが中で何を叫ぼうと、どんなに暴れようと、誰もその声を聞いたり姿を見る者はいないでしょう。恐ろしい孤独と暗黒のなかで、やがて飢えて死んでいくのが、彼女を待っている運命なのです。
こうしてすべてが終わってしまうと、男たちは道具をしまって、さっさとその部屋を出ていってしまいました。そして城はまた、何事もなかったようにシーンと静まり返ったのです。
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