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黒魔術白魔術21

时间: 2020-07-21    进入日语论坛
核心提示:呪われた黒魔術現代アメリカのオカルト研究家デイヴィッド・セント・クレアは、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロに、もう八年も住
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呪われた黒魔術

現代アメリカのオカルト研究家デイヴィッド・セント・クレアは、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロに、もう八年も住んでいた。彼は快適なアパートに住み、エドナという愛らしいメイドをやとっていた。
エドナは、不幸な子供時代をおくった娘だった。生まれてすぐ父に捨てられ、母や弟たちとスラム街のぼろ家に住んだ。幼いときから学校にも行かず、一家を支えるためになりふりかまわず働かされた。
しかしセント・クレアのもとで働くようになってからは、彼に娘のようにかわいがられ、夢のような幸福な日々を過ごしていた。
ところがある日、セント・クレアが突然、
「じつは、急にアメリカに帰ることになったんだ」
と、すまなそうにエドナに切りだした。
「では、わたしはいったいどうなるんでしょう?」
エドナは真っ青になり、涙ぐんでそう聞いた。
「申し訳ないが、君を連れていくわけにはいかないんだ。だが、心配するな。必ずべつの仕事を見つけてあげるよ」
ところがそのときから、セント・クレアの身につぎつぎと不幸が起こりだした。まず、口述筆記のタイピストが急病で倒れ、仕事が途中でストップしてしまった。
つぎに、次作の刊行を約束していたニューヨークの出版社が、今になってことわってきた。さらに入る予定だった相続が取り止めになるわ、長年の恋人とは不和になるわ、借金を申し込んだ友人にはことわられるわ、あげくはセント・クレアは伝染病にかかって床についてしまった。
「誰かがあなたに呪いをかけている。このままではあなたは破滅してしまうだけよ」
ある日、見舞いにきた霊能者の女友達は、セント・クレアを見るなりこう言った。
さらに数日後、今度は別の友人が、こう注意してくれた。
「このあいだ魔術のクラブに行ったら、『あなたの友人が、エドナという女性に呪いをかけられて、危険な目にあっている』と言われたんだが……」
「呪いだって? まさか……」
セント・クレアは、信じられないという顔をした。
「エドナは敬虔《けいけん》なカトリック教徒だし、魔術なんかに関心はないよ。それに第一、どうやって僕に呪いをかけるんだい?」
セント・クレアが聞くと、友人は言下に、
「そんなの簡単だよ。君が身につけていたものを、黒魔術の会に持っていくだけでいいんだ。最近何か、君のまわりでなくなったものはないかい?」
「なくなったもの?」
セント・クレアは、ちょっと考えていたが、
「そういえば、靴下が片方なくなったな。エドナは干し物をしていたら、風で吹き飛んだんだと言っていたが……」
セント・クレアはその晩、複雑な思いでエドナにこうカマをかけてみた。
「今日、見舞いにきた友達が妙なことを言うんだよ。この僕に、呪いがかけられているって……」
「呪いですって? あら、まあ、それは」
「このあいだ、僕の靴下が片方なくなっただろ?」
「靴下ですか? ああ、そうでしたかしら?」
「友達は、誰かが僕に呪いをかけるために,それを盗んだんだっていうんだ」
「あれは、干しているときに風で飛んでしまったんです。前にもそう申し上げましたでしょ?」
「僕もそう言ったんだがね。話は違うけど、リオでは黒魔術の会が夜毎開かれているんだってね。君は行ったことある?」
「いいえ、ありません」
エドナはきっぱり否定したが、その言い方がかえってセント・クレアには、わざとらしく感じられた。
「一度行ってみたいな。ちょっと黒魔術に興味があるんだ」
「そんなもの下らないに決まっています。おやめになったほうがいいですわ」
エドナはそう言い張ったが、彼女が言い張れば言い張るほど、セント・クレアはますます彼女を疑わしく思うようになった。彼はとうとう嫌がるエドナを説得して、黒魔術の会に一緒に行くことを承知させてしまった。
数日後、エドナはセント・クレアを、リオ郊外の小さな白い家に案内した。壁一面に、不気味な悪魔の絵が描かれていた。真夜中になると、太鼓の響きや黒人たちの唄とともに、いよいよ黒魔術の儀式がはじまった。
そのとき突然、ウンバンダの女|祈祷《きとう》師が、勢いよく部屋に入ってきた。黒人の太った大女で、サタンの色である赤い衣装を着ている。彼女が踊りはじめると、女たちは何かにとりつかれたように、全身をぴくぴく痙攣《けいれん》させはじめた。
ひとしきり踊ったあとで、女祈祷師は葉巻に火をつけ、酒をがぶ飲みした。一息ついたとき、ようやくセント・クレアの存在に気づいたようだった。
女祈祷師は、彼につかつかと近づいてくると、酒を口にふくんで、彼の頭にふっとふきかけた。
「初めてのようだね。何が目的だい?」
「僕に呪いをかけた者が誰か、それが知りたくて来ました」
「呪いをかけられた? どうしてそう思ったんだい?」
「ええ、じつは友人が言うことには……」
セント・クレアが友人から聞いた話をくりかえすと、女祈祷師はそばの女霊媒師に向かってこう聞いた。
「この男に呪いをかけているのは、誰なのでしょうか?」
「今晩ここにその男を連れてきた女だ! 女は、その男と結婚したがっている」
女祈祷師はエドナを真っ向から見すえ、厳しい声でここを出ていくように命じると、これからセント・クレアにかけられた呪いの御祓《おはら》いをはじめると言った。ひとしきり太鼓と舞踏がくりひろげられたあと、女祈祷師はセント・クレアに重々しく告げた。
「おまえはいま呪いを解かれた。これから呪いは、それをかけた者に、二倍の魔力で返っていくだろう」
仰天したセント・クレアはそんなことは止めてくれと懇願したが、すでに始まったことだから、どうすることも出来ないと言われた。
そのときから、セント・クレアの身に、またも奇妙なことが起こりはじめたのだ。まず三日後に雑誌社から電報がとどいた。数カ月前に一度はことわってきた原稿を、改めて雑誌に掲載することになったという。
一週間後、今度は諦《あきら》めていた遠縁の遺産が入ってきた。さらにタイピストの病気が快癒し、そのうえ一旦はことわられた書き下ろし原稿が単行本として出版されることになった。さらに数日後、今度は去った恋人から、もう一度やりなおしたいという手紙がとどいた。
そしてそのいっぽうで、今度はエドナの身に急に不幸がふりかかりはじめた。胃に激痛が走ったので、医者にいくと胃潰瘍《いかいよう》だといわれ、入院して手術を受けることになった。セント・クレアが手術費を負担してやったが、手術後の回復はおもわしくなかった。
思いあまったエドナが、例の女祈祷師に聞きにいくと、「あなたがセント・クレアにかけた呪いが返ってきたためで、彼をきっぱり思い切らないかぎり、呪いからは逃げられないだろう」と言われてしまった。
かくて、彼女に出来るだけのことをしてやりたいというセント・クレアの親切な申し出をことわって、エドナはさびしく彼のもとを去っていったのである……。
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