ローマ皇帝ヘリオガバルスは、希代のサディストだった。彼の趣味は、象牙作りの龕灯返しの天井から、無数のバラの花をふらせて、気に入らない相手を、バラの花の香気のなかに埋めて、窒息死させてしまうことだった。
あるいは大きな車輪に美少年の手足を結びつけ、それを水中で回転させて、少年が水中を出たり隠れたりするさまを見物した。さらには円戯場の高座から罪人たちの処刑を見物したり、罪人の体から性器を切り落として、自分の飼っているライオンやトラに投げ与えることもあった。
ヘリオガバルスは、生け贄の少年を選ぶときは、できるだけ両親のそろった、高貴な家柄の美貌の少年を選んだ。それは、少年の死が、少しでも多くの人間に悲しみをもたらすようにと考えたからだ。