さらにエリザベートの用いた拷責のなかで、「鉄の処女」という、恐ろしい殺人器具もある。それは等身大の裸の人形で、皮膚は人間そっくりの肌色。いろんな肉体の器官が、人間そっくりにそなわっている。機械じかけで目や口も開き、歯も生えていて、口を開くと残忍な微笑を浮かべる。頭に美しいブロンドの髪の毛が、地面にとどくほどたっぷり植えられている。
「鉄の処女」の拷問は、こうしてはじまる。いつものように、その日の生け贄に選ばれた娘が、後ろ手に縛られて、エリザベートの前に連れてこられる。娘は裸にされ、無理やり「鉄の処女」のまえに押しやられる。
人形の胸についた宝石のボタンを押すと、歯車がきしんで、人形はゆっくりと両腕をあげる。ある程度まで上げると、人形は両腕で自分の胸を抱えこむような仕種をする。すぐ前にいた娘は、逃げるまもなくその腕に捕らえられてしまうのだ。
つぎに人形の胸が観音開きに割れると、なかは空洞になっていて、無数の尖った針が生えている。人形の体内に捕らえられた娘は、それらの針に全身を突き刺され、肉を砕かれ、血をしぼられ、恐ろしい苦悶のなかでもがきながら息たえるのだ。
事が終わってふたたび胸の宝石のボタンを押すと、人形の腕はまたもとの位置にもどり、娘からしぼりとられた血は、人形の体内からみぞを通って、下の浴槽に流れこむ。そしてここに、エリザベートは裸になってゆっくりとからだを浸すというわけだ。