西晋の初代皇帝、武帝の叔父は、名は王《おうがい》。彼は自分が大金持ちであることを誇示するため、しばしば豪華な宴をもよおした。
当然ながら、宴にはつきものの美女が、酒席に花を咲かせている。美女が吹く笛にあわせて、もう一人の美女が踊りを踊り、宴はますます盛りあがってきた。ところが……。
笛を吹いていたほうの美女が、ちょっとトチってしまったのである。ふつうなら、それもご愛嬌というところ。軽い冗談や苦笑いぐらいで済むところだ。ところが、王は許さなかった。つかつかっとその美女に近づき、一発で殴り殺してしまったのである。「よくもオレさまの顔に泥を塗ってくれたな」とでも、言うつもりか……。
王の残酷さは、これでは終わらなかった。宴の席では、客の一人一人に美女たちがお酌してまわる。そのとき、杯につがれた酒を、客が飲み干してくれれば幸いだが、万一、客が飲もうとしなかった場合……。これもまた、王はお酌した美女につかつかっと近づき、彼女をその場で斬り殺してしまったのである。
心やさしい男なら、たとえ下戸であっても、無理して杯をかさねた。それに対して意地の悪い男は、飲めるくせにわざと杯をとろうとしない……。
つまりこれらの宴会では、殺される美女は、一種の酒のサカナだったというわけである。