ダッハウ強制収容所では、空軍少佐のジグモント・ラシェル博士によって、こんな人体実験が行なわれたこともある。
その日、二五人の男子捕虜が、特別仕様の車のなかに押し込められた。じつはこの車は、車内の気圧を、自由に増大・減少できるようにしてあったのである。高所にパラシュートで急速に飛び出したときの、結果を計ろうというのが、目的だった。
まさに、拷問にも等しい実験である。生け贄となったユダヤ人たちは、そのほとんどが肺や脳の内出血のために死亡した。死んだ者たちの内臓器官は、ただちに調査のためにミュンヘンに送られた。
そして幸いにして生き残った者たちも、結局はその後、処刑されてしまうのが運命だったのである。