一九四五年四月、ブッヒェンワルト収容所にやってきたアメリカ軍は、グロテスクなしろものを発見した。犠牲者の頭蓋である。それも、二人のポーランド人に、ドイツの少女とセックスさせ、そのさなかにポーランド人の首を切り落としたものだという……。
頭蓋は切りとられると縮んだので、なかに充填物を入れて保存された。頭の大きさはこぶしぐらいの大きさに縮まってしまっていたが、髪の毛は、まだ残っていた。
第二次大戦前後のころ、日本に住む華僑が、奇妙なしろものを持っているという噂が立った。男女がセックスをしたままの形の、ミイラがあるというのだ。
いまから七〇〇年ほどまえ、トルコで大豪族の妻と召使が不義密通をはたらいた。それを知って激怒した豪族が、二人を自分のまえでセックスさせ、男の首をはね、妻の喉を突き刺した。その状態のままで、ミイラにしたというのである。
話を聞いた「ワシントン・ポスト」の東京特派員が、戦後、なんとかミイラの持ち主にインタビューをとこころみたが、持ち主はついにOKしなかったそうだ。
長く九州の温泉町の鑑識医をつとめてきた相川氏は、このミイラの写真を実際に目撃した、数少ない一人である。相川氏は戦前、朝鮮にあった京城医科大学を卒業した。写真を見たのは在学中、法医学の担当教授が、さまざまな死体の写真を教材として回覧した。そのなかの一枚だったというのだ。
「何かの雑誌にのったもののようで、確かにペニスが挿入されていました。ひからびてくしゃくしゃになってはいるが、はっきり写っていました。しかし首を切り落とすときは人体に相当な衝撃を与えたはずだし、そのはずみではずれてしまうのではないでしょうか。結局、別々の死体を、こういう形に組み合わせたのだろうというのが、そのときの結論でした。それにしても、死体を使ってそんなことが出来るなんて、人間の趣味には際限がないんだなということを感じさせられた点で、いまも忘れられません」
ちなみに七〇〇年前かどうかは記憶にないが、たしかにトルコ人の男女という説明が記されていたという。