だいぶ前の話だが、ハイチ島から北アメリカに向けて、ブードゥー教の儀式に使われる人形が輸出されたことがあった。ところが奇妙なことに、この人形を買った人は、必ず毒にやられて気分が悪くなってしまうのだ。
ジョージア州アトランタでは、この人形を買った五〇人の少年少女たちが、おかしな不快感をおぼえた。まさか不幸をもたらす人形というわけでもあるまいしというわけで、アメリカの保健省が調べると、この人形がカシュー(インド産まめ科の有毒植物)の木で作られていることが分かった。
人形の頭には、カシューの油が染み込ませてあって、そこから毒が蒸気になって発散しているのだった。おかげで子供たちが人形を手にして、一時間もするともう、胸がむかむかして、皮膚の色が変わってくるのだ。
そのうえ、人形のくりぬかれた目の内側には、アブリンという毒が、人一人殺せるぐらいの量をひそませてあったというから、恐ろしい。もちろん、この人形はアメリカ保健省の命令で、ただちに発売禁止にされたという……。