キリシタンを相手に行なわれた刑罰のなかに、「蓑踊り」というものがある。
竹矢来でかこまれた広い刑場に、男女子供の区別なく、転宗しないキリシタンを引きずりだして、全裸にむいて、肩から蓑をきせ、頭に蓑笠をかぶせる。そして、蓑藁がべとべとになるほど、頭上から油をたっぷりそそぎかける。
キリシタンらは、これから何をされるのかと、恐怖のなかで必死にイエス、マリアとつぶやいている。やがて、一人一人の蓑に、火がつけられる。蓑は恐ろしい勢いでめらめらと燃えあがり、あっというまに、炎のかたまりが幾つもできあがった。
燃えさかる炎に包まれ、火だるまのようになったキリシタンらは、苦しみ狂いまわり、たちまち阿鼻叫喚の生き地獄を現出する。彼らが狂ったように動きまわるさまが、まるで手や脚をふり乱舞しているように見えるので、意地悪い執行人たちが、「蓑踊り」と名付けて嘲笑したのである。
狂いまわるキリシタンらが、ついに力つきてその場に倒れると、すかさず獄吏たちが、囲いの外から柄の長い熊手や棒などでつつき起こし、さらに息絶えるまで責めつづけるのだ。
狂乱の舞踏をつづけさせられたのち、信者のある者は発狂し、またある者は、全身黒こげになって、苦しみ悶えながら息たえていくという。