これなどは、いわゆる殺意なき殺人と言ったらいいのだろうか?『科学警察研究所報告法医学編』の昭和六二年八月号に掲載された、奇妙な事件である。ある日、徳島県に住む二三歳の女性が急死した。身長一五六センチ、体重六二キロと、やや肥満体で、そのとき生理中だったという。
調べによると、女性は前夜の午前二時に水割りを二杯のみ、一時間後、ごはんとハンバーグを食べて床についた。翌日の午後〇時三〇分ごろ目をさますと、隣に寝ていた同棲中の男性が急にいどんできた。
そのとき男のたっての希望で、生まれて初めてフェラチオを行ない、その精液を飲みほした。ところがその後まもなく顔を真っ赤にして苦しみはじめ、一時間後にあっけなく死んでしまったというのだ。
徳島県警科学捜査研究室で死体を解剖した結果、つぎのような結論になった。もともと肥満体で血圧が高かったのが、生理中でさらに高くなっていたこと。そこに、生まれて初めてフェラチオを行ない、精液を飲み干すという経験で、ショックを受けたことなどが重なって、死因となったというのだ。
それにしても、相手の男にしてみれば、彼女に�天にものぼるような�快感を味わって欲しいとは思っても、まさか本当に天国に行ってもらいたいとは思っていなかっただろうが……。